メディアグランプリ

わたしから、あなたへ向けて恋文を。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:まつしたひろみ(ライティング・ゼミ日曜コース)

「今週中にマニュアルとQ&Aをまとめて、遅くても来週の頭には展開しますのでよろしくお願いします」

やっぱり私がやることになってしまった。

定例会議でのこと。議題のひとつに翌月から変更される業務内容のことが出た。今回は大幅に変更されるので、各部署で解釈や運用に食い違いがないようにするにはどうするか? ということを話していた時だった。共通認識ができるように資料を作ってもらえるといいんだけど、という上司。誰も自分から手を挙げるわけがないよね。ただでさえ慢性的に欠員状態で、通常業務で手一杯なのにさ。

「じゃあ、私やりますよ」
つい口から出てしまった。言った瞬間、しまったと思ったけど、もう手遅れだった。
誰かがやってくれないかなーとは思っていたけれど、誰もやらないんだろうなーと思ってはいたけれど、面倒なことをついつい引き受けてしまった。
「忖度する」などという難しい言葉がニュースで流れていたな、と思い出す。聞いたこともない言葉だったけど、どうも「察する」という意味らしい。英語では適する言葉がない、日本語特有の単語らしい。こういうときに使うんだろうな。「誰かやれよー」という空気を察する。
プライベートではKYな感じもあるけれど、仕事では敏感に感じ取ってしまう自分を恨む。

「いつやるの?」
自問自答する。今でしょ、なんて答えは出てこない。
通常業務だけで手一杯だ。今週末には休日出勤もする予定だし。
どう考えても時間を捻りだせない。

でも……。
やるって言っちゃったし。

まずは、自分自身が今回の変更点の全体像をしっかり把握して。
あれもこれも、ややこしいなぁ。そうだよね、こんなにややこしいことを理解するのも難しいよな。
確かに、今ある資料だけじゃわからないかも。何か追加資料が欲しいよね。変更点だけ言われても困るよね。困った人たちのいろんな場面が想像できる。
とりあえず思いついたものをメモしていく。

次にどう書いたら読んでもらえるか。
理解する前に、見て、読んでもらえなければ意味がない。
レイアウトを見やすくして、文字数をギリギリまで減らして、それでも変更される内容がわかるようにまとめて。
全部一緒にしてしまうとわからなくなるかな。変更点はポイントを押さえて、簡潔に書いて。Q&Aは場面を思い浮かべて、どう答えるか、違う解釈が出ないように言葉を選んで、
「これくらいはわかるだろう」なんていう考えは捨てて、新人さんでもわかるような説明にして。

最後は、使ってもらえるか。
ただ、読んだだけでなくて、日常の業務のお供として使ってもらえるように。使ってもらえる場面を、使ってもらえる人を想像して。

あの人だったらどう使ってくれるだろう。あの人は読んでもくれないかな。
いろいろな人の顔が浮かんでくる。

「ふふふ」
資料を作っていたら、なんだか楽しくなってきた。

なんだか、ラブレターを書いているみたいな気分。

好きな人を想って、文字を重ねる。
「好きです」の一言だけでは足りないし、やたら好き好きアピールも「うざい」と思われてしまう。好きな人のどこが好きなのかを思い浮かべていく。
その好きなところも
「優しいところが好きなの」
これだけではまだ足りない。相手も好きでいてくれているのであればいいけれど、「あ、そうなの」で終わってしまうこともある。
「あなたが、すれ違った人が落とし物をしているのを見つけて。その落とし物を渡すために走って追いかけていた、その後ろ姿にキュンときちゃいました」
「あなたが電車の中で、ベビーカーに乗っている赤ちゃんを見つけて、すごく優しく微笑んでいる笑顔が素敵でした」
そんな具体的なエピソードを付け加えると、そんなところも見ていてくれていたんだ、と思うことができる。

そして読んでもらえるためには。
便箋に10枚も20枚ものラブレターじゃ、もらっただけで引いてしまう。2、3枚でまとめるには、言葉を選んで、要点を外さずに、余分なところは切り捨てて。

実際に書いている時は、相手がこれを読んでいる場面が思い浮かんで。
どんな顔をして読んでくれるだろう。返事はもらえるかな。
あんなことやこんなこと、しちゃうかな……。

「グフフフ……」

深夜の、人が少なくなったフロアで、怪しい笑みを浮かべてパソコンに向かう。
「やばい。こんなところ見つかったら完全に不審者だ……」

それでも、使ってくれる人を思い浮かべると自然に笑みが出てしまう。同僚や他の部署の人たち、ムカつくこともあるけど、みんな好き。
ニヤニヤを続けながらなんとか完成して、発信。
残業になっちゃったなー。でも混乱がなければそれでいいや。

発信後、各部署からいろいろ質問がきた。
ラブレターを渡した後にそわそわしちゃうような気分だったので、質問がきただけでも嬉しい。ちゃんと見てくれたんだなーって。
発信後にきた質問に答える形で手直しをして、正式に配布されたマニュアル。

使ってくれる人たちがいるからこそ、作ることができる。
大好きな同僚たちへのラブレター。

「これってさー、どうすりゃいいの? 書いてあるのだと、こうじゃない?」
おぉ! 使ってくれてるー!
「それは、こういうことですよ」
「なるほどね。わかったわかった」

嬉しいなー。マニュアルなんて使ってくれなさそうな人が、手に持ってくれてる。しかも質問してくれた。
作ってよかったなー。

仕事のマニュアルは愛する人のために。そして新人さん向けには、まだ見ぬ君へ向けてのラブレター。

面倒な仕事も想像……妄想次第で楽しくなります!

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2017-04-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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