ふるさとグランプリ

祇園のスナックでタダ酒を飲む方法


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:あやっぺ(ライティング・ゼミ平日コース)

「あちらのお客様からです」

バーのカウンターで、見知らぬ男性からお酒をご馳走になる。
テレビや映画でよく見かけるそんなシーンに、昔からずっと憧れていた。
憧れてはいたものの、お洒落なバーに飲みに行くような生活とは縁遠かった私に、そんな素敵な出会いは訪れなかった。

ただ、ちょっとシチュエーションは異なるが、祇園のスナックでたまたま居合わせた隣のテーブルのお客さんと、スナックのママさんからお酒をご馳走になったことがある。
かれこれ、10年ほど前のことになる。
起業家仲間のご縁で飲み会の2次会として、八坂神社から徒歩3分ほどの距離にあるスナックに連れて行ってもらった。
店内では、隣のテーブルのお客さんがカラオケを楽しんでいた。初老の男性を中心とした、3名ほどの中年男女のグループだった。

私達のグループは、誘ってくださった書家の50代の男性以外は、20代・30代の男女10名ほどの賑やかなグループだった。私達もカラオケをしようということになり、アニメソングや流行のJ-POPなど、代わる代わる選曲して皆が歌い続けた。
人数の違いもあったが、後から店に入ってきた私達のグループがマイクを持っている時間が長くなってきた。しかも、若者が自分の好きな流行りのJ-POPを次々に歌っているだけで、カラオケBOXで騒いでいるのとあまり変わらない状態だった。

私は、隣のテーブルの初老の男性の様子が気になっていた。明らかに、だんだんと不機嫌になってきているように見えた。
まずい、この空気を何とかしなければ……。
このままでは、2つのテーブル間でのマイクの奪い合いで揉めてしまいそうだ。

私は、自分の出番だと思った。
お隣のテーブルの初老の男性は、演歌好きなご様子だ。
ここで私が演歌を歌えば、この微妙な空気を変えられるに違いない!
そう確信した私は、坂本冬美の「夜桜お七」を予約選曲した。

そして、ママさんに頼んで割り箸とストローを数本用意してもらった。
私は箸袋やストローの紙袋を集め、さらには財布の中から不要なレシートを取り出し、それらをせっせと細かくちぎり始めた。ちょうど片手で掴めるくらいの量の紙吹雪ができあがった時、いよいよ私の歌う番が回ってきた。

手作りの紙吹雪をポケットに忍ばせ、私は真剣に歌い始めた。
サビの最後の「さくら さくら 花吹雪」のところで紙吹雪を撒いて、天を仰いでポーズを決めた。
ウケた。拍手喝采だった。
フルコーラス歌い終えた時、隣のテーブルの初老の男性は、すっかり上機嫌になっていた。
そして、私の方へ近づいてきて、

「ええ歌やった。ありがとう。何か好きなお酒を頼みなさい。私がご馳走するから」

とおっしゃった。
お断りするのも逆に失礼な気がして、

「ありがとうございます。それでは、お言葉に甘えて遠慮なく頂戴いたします」

と言って、梅酒ロックをいただくことにした。
さらに、ママさんからも

「さっきはありがとう。助かったわ!」

と、初老の男性の不機嫌モードを上機嫌に変えたことへのお礼を言われた。
そして、

「私からも1杯ご馳走させて」

と言われた。
かくして、この日の私は、祇園のスナックで、初対面のおふたりの方からお酒をご馳走になるという経験をした。
「芸は身を助ける」とはこういうことなのかと思った瞬間だった。

団塊ジュニア世代の私が小学生だった頃は、今みたいに若者が歌えるような曲がカラオケにほとんど入っていなかったので、演歌や歌謡曲を歌うのが自然なことだと思っていた。
そして、社会人最初の職場は同世代が誰もいなかった。年配の方が大半の職場では、飲み会の後のカラオケで、演歌を歌うと喜ばれた。

自分の好きな曲だけを気ままに歌いたいなら、個人的に友達や家族などと行くカラオケで歌えば良い。近年では、「ヒトカラ」と呼ばれる「ひとりカラオケ」を楽しむ人も珍しくなくなっているので、ひとりで楽しむのもアリだろう。
しかし、職場であれ職場以外であれ、何かしらのご縁で異世代が集まっている時、さらにスナックのように他のテーブルのお客さんも一緒に楽しむという場面では、選曲に気を配るという心遣いが大切だと思う。

最近の若い世代は、会社の飲み会に参加するのを嫌がる人が多いらしい。「飲みニケーション」が成立しないと嘆くオジサンの声もよく聞く。
確かに、会費を払って仕事が終わった後まで上司に付き合いたくないという気持ちは、全くわからないわけではない。気の合う仲間と気楽に飲むのが楽しいのは当たり前だ。
しかし、自分が楽しませてもらうことばかりを考えるのではなく、ちょっと視点を変えてみてはどうだろうか。

私は、楽しみには6つの段階があると考えている。

   第1段階 “乗る” 楽しみ
     人から誘われたら参加して、自分が楽しむ
   
第2段階 “探す” 楽しみ
     自分で探して参加して、自分が楽しむ
   
第3段階 “ハマる” 楽しみ
     自分で作り出して、自分が楽しむ
   
第4段階 “伝える” 楽しみ
     自分で作り出して、人を楽しませる
   
第5段階 “贈る” 楽しみ
     人を楽しませることを楽しむ
   
第6段階 “繋ぐ” 楽しみ
     “人を楽しませることを楽しめる人” を育てることを楽しむ

人を楽しませる側に立つことで得られる楽しみを知ることも、社会人として身につけておいて、決して損はないスキルのひとつだと思う。
もちろん、仕事の能力が重要であることは間違いないが、それだけではない。
周りから可愛がられることで得られるチャンスというものは、確実に存在している。
楽しみの深掘りをすることで、“人を楽しませることを楽しめる人”になる。
これは即ち、人間力を高めることに他ならない。

天狼院書店には、スタッフさんはもちろんのこと、お客さんも個性豊かで魅力的な老若男女がたくさん集まってこられる。既に第4段階以降に到達している人が多いように感じる。
もし、自分はまだ第3段階以前だと思っている人がいたとしても、一足飛びに先へ進もうと焦らなくても大丈夫。
ライティング・ゼミで学んだ「読者へのサービス」とは、まさに人を楽しませたいという気持ちが根底にあって成り立つものだ。その気持ちを忘れずに、周りの素敵な人達と共に楽しみの深掘りを続けていれば、きっと次の段階へと進んでいけるはずだから……。

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