メディアグランプリ

どうしてもっと早くできないの? いつもイライラの私を変える呪文を見つけた


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:森中あみ(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「トモちゃんはね、あんたのことが大好きなんよ……」母は言いづらそうに、ゆっくりと始めた。「はやく、はやくって言われるのだけが、どうしてもイヤなんやって」
 
もの静かなトモちゃんとは幼稚園からの友達。小学校も同じで、放課後はトモちゃんの好きな切手集めをしたり、私の好きなブランコで遊んだ。子どもながらに、母が気を使っているのがわかった。きっとトモちゃんがお母さんに相談して、それが母に伝わって、二人の仲を壊さないように、慎重に言葉を選んでいるのだと思った。大人のキモチは手に取るようにわかるのに、いつも一緒に遊んでいたトモちゃんの本当のキモチはわからなかったんだ。自分がいつ、「早く!」なんて言っているのかもわからなかった。だけど、次の日からゼッタイにそれだけは言わないようにして、いつも通りトモちゃんと遊んだ。
 
自分が人よりもムダが大嫌いなのは、社会人になってからよくわかった。定時で仕事を終えているのに、だらだらとしゃべって会社に残る人たちの気が知れなかった。やるべきことに優先順位をつけずに、目の前のことに片っぱしから手をつける人にも、無性に腹が立った。「あなたが終わらなければ、わたしまで残業するハメになる! 早く! 早く!」口に出してはいけないのは、トモちゃんから教わったからぐっと飲み込む。でも心はものすごくイライラしていた。
 
家に帰ってからの育児だってそう。仕事のクライアントは「少々、お待ち下さい」と言えば、待ってくれるけど、赤ちゃんにそれは通じない。唯一、助けを求められる夫には、一瞬のムダもなくやってほしい。それなのに何もわかってくれない。「なんでもっと早くできないの?」私はいつも心の中で人をせかしている。
 
本当はもっとゆったりした気持ちでいたい。赤ちゃんが泣いてもあせらずに、いつも笑顔でいたい。できることを精一杯してあげたらいい。それなのに、私の頭はいつも「次に何をするのが最短か」を考え続けている。友達と遊んでも、仕事をしていても、家事をしても、私の気が休まることはない。このまま一生イライラしつづけたまま、死んでいくのだろうか。そんなのイヤだ。どうにかしたい。
 
そもそも、急いだらダメなの? 限りある時間をめいいっぱい使いたいだけ。この記事もストップウォッチを使って書いている。人はおしりが決まっているほうが、集中力を発揮できるのだそうだ。それを聞いてから、今まで一週間に二本しか書けなかったボリュームの記事を一日一本ペースで書けるようになった。急ぐことはぜったいに悪くないと思う。仕事だって、家事だって、はやく終わらせたほうが他の好きな時間に使えるじゃない。
 
じゃあ、なぜあのとき、母はわたしに「早く」と言うのをやめるように言ったの? トモちゃんは何がイヤだったの? 思い出せるのは、トモちゃんがブランコから降りるのが遅くて、私ははやく鉄棒に行きたかったから「早く!」と言った。トモちゃんは、もっとブランコで遊びたかったの? それを私の勝手ではやく終わらせた? トモちゃんは「もっと遊びたい」と言えない代わりに、ゆっくり降りた?
 
娘を泣き止ませるのはミルクが一番なんだけど、それを知らない夫は、娘の抱っこを私に任せて、食べ終わったお皿を片付けた? 自分にできることをしてくれた?
 
わたしの最大の過ち。それは「私はこうしたい! こうしてほしい!」と言ってこなかったこと。トモちゃんに「次は鉄棒で遊ばない?」と聞けば、夫に「まずはミルクからおねがい」と言えば、きっと何の問題もなかった。目の前に見えているものは、ほんの一部で、人は心の中で何を考えているかは言葉に出さないとわからない。もしかしたら、トモちゃんは「鉄棒が終わったら、またブランコに行こう」と言ってくれたかもしれないし、夫は「お皿は片付けなくていいの?」と聞いてくれたかもしれない。それを私はいつも早くしろとせかすばかりで、相手の気持ちはまったく考えず、さらに自分がどうしたいのかすら、伝えてこなかった。
 
母が私に諭したときも、「早くなんて言ってない。私は次の遊びに行きたいだけ」とちゃんと伝えれば、「じゃあ、トモちゃんにそう言いなさい」とアドバイスをもらえていたのかもしれない。そうすれば、こんなに長い間、悩むこともなかった。あの時は、ダメだと言われたこと、気づかないうちに人を傷つけていたことがショックで、どうしてこんなことになったのか考えなかった。ガマンすればいい、と簡単に考えた。私は今までずっと、「本当の気持ちを伝える」という一番めんどくさいことから逃げていた。
 
「どうしてもっと早くできないの?」それを言いたくなったら、まず飲み込んで、「わたしはどうしたいの? ちゃんと伝わってる?」そう自分に問いかけてみようと思う。
 
 
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2017-07-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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