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朝、路上で男に膝まづかれて「ぬぐ?」と言われた時の対応とは


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:8☆(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
この冬の通勤途中の出来事だ。
 
「くつ、ぬぐ?」
 
その男はいきなり私の前に膝まづくと、私のブーツの足首をぎゅっとつかみ、私の顔を見上げてそう言ったのだった。
 
男に面識はない。
自宅からを出て2分ほどの出来事だ。
足首に彼の手が触れた一瞬で、私の身はぎゅっっっとかたくなる。こわい。
 
でも……これ、きっと……
 
 
 
 
私には、『思い当たるところ』があった。
 
……この人、“発達障害”なんじゃないかな?
 
 
“発達障害”を知ったのは、5年前のアルバイト先、学童クラブである。
 
クラブでの仕事は、夜まで家に保護者がいない児童と、放課後の数時間を共に過ごすこと。お喋りしたり、宿題をみたり、一緒に遊んだり、皆でおやつを食べたり。
クラブには、“発達障害”と診断された生徒が二人いた。ノリ君とカズヤ君だ。彼らの見た目は、“障害”と診断されていない生徒と同じである。知能が遅れているわけではないから、他の生徒と同じように会話もできる。ただ、脳機能に特性がある。だから、スタッフが一人ずつつき、安全を見守りながら、彼らのペースで時間を過ごすことになっていた。
 
 
ノリ君は小学4年生。
皆と遊ぶのが好きだったが、普段とは違うやり方や、今までなかったものが増えることなど、環境の変化を受け入れるのも苦手だった。だから、新入生や新しい遊具を導入する時は、その数週間前からノリ君にそのことを言葉で伝え、絵にして見せ、受け入れ準備を整えた。
 
私は海外旅行が好きで、異文化を知ることに積極的だ。
国内でもやりたいことが沢山あって、色んなアルバイトも経験して、様々な“新しい一歩”に慣れていた。
誰もが“初体験”や“いつもと違うこと”には戸惑いを抱くが、丁寧に理解していけば、好きにはならずとも認められるようになるのでは、と信じていた。さらに言えば、それは“多様性の受容”であり、皆の受容範囲が広がればいいな、と。
 
だから、日常の定型パターンを大切にするノリ君の姿は、新鮮だった。
価値観とか、信条とか、あるいはワガママとか、意地悪とか、そういう話ではなく、個人の特性として「新しいものを受け入れ難い」ということがあるのか、と。
 
そして、“多様性の受容”が大事ということは、“多様性を受容できない”というあり方のことだって、認めなくてはならないじゃん……そう考えるようになった。
 
 
カズヤ君は小学5年生。
口数が少なく、他の子とは遊ばない。ただ一人で校庭を走り回る。ふとした拍子に足を止め、「あ~う~」と歌いながらその場で踊り始め、また走り出す。それがカズヤ君の“遊び”で、スタッフはその後を追う。
私は追いかけるだけではなく、隣で歌ったり踊ったりしながら「カズヤ君、楽しいね~」と盛り上げた。カズヤ君がキョロキョロと周りを見渡すことがあれば「誰を探してるの?」「ゆみちゃん達が縄跳びしてるね~」などと、カズヤ君の心情を察して言語化していた。サービス精神旺盛に。
 
……そう、サービス精神旺盛なつもりだった。
 
でも、カズヤ君担当を繰り返すうちに、カズヤ君が「楽しいね~」をはじめとする私の発言に、無反応なことに気付いた。
 
カズヤ君は笑ってはいる。
けれど、それは私の「楽しいね~」への応答ではないのだ。
 
私のやり方は、カズヤ君を傷つけてはいないのだけれど、カズヤ君を無視していることになるんじゃ……。
「笑っている=一緒に楽しんでる」という私の価値観や、「きっとこんなこと考えてるんだろう」という私の推測や、一般論を押し付けてはダメだ。カズヤ君はカズヤ君の感じ方で過ごしてることを、そのまま認めなきゃ……そう考えるようになった。
 
 
文科省による小中学生約5万人を対象にした調査によると、その中の6%強が発達障害の可能性があり、特別な教育支援を必要とすると考えられるそうだ。
その当時、私にはすでにfacebookには500人程の“友達”がいたから、単純計算でいうと、facebook友達のうち30数名が“発達障害”の可能性があることになる。
 
しかし、500人の中に“発達障害”の友人は皆無だった。
 
 
いや、正確にはこうだ。
“発達障害だと名乗る人”はいなかった。
そして、
“私が発達障害だという特性を理解し、付き合ってきた人”がいなかった。
 
 
なぜだろう。
 
障害のことを、知らなかったから?
知る機会がなかったから?
障害を持つ人が、社会から少し距離を置いてるから?
距離を置かされてるから?
障害という特性に対し先入観があるから?
 
 
「残念なことだ」
の5文字では表しきれない、もやもや。
 
もし“発達障害”という特性を知っていたら。
自発的に知ろうという機会があったら。
身近で共に過ごしていく環境にあったら。
 
知らなかったことが原因で、無意識に人を傷つけていたことがあるのでは?
自分の特性に気付かずに、息苦しい思いをしている人がいるのでは?
 
 
 
 
「くつ、ぬぐ?」と、目の前でひざまづいている男。
すーーーはーーーすーーーはーーー、落ち着け、落ち着け、と呼吸を整える。
だめ、やっぱり、こわい。
でも、この人から、悪意とかいやらしさは感じられない。
 
ゴクリと唾を飲んで、言った。
 
「大丈夫ですよ、ありがとう」
 
すると、男は「ん!」 とうなづいて立ち上がり、その場を去って行った。
 
 
その後、数か月たつが、この男に会うことはなく、なんら事件も起きていない。
 
彼が発達障害だったかどうかは、分からない。
私の対応が適切だったかも、分からない。
 
これが夜だったら? 人通りがない場所だったら? 治安の悪い地域だったら?
そんな甘っちょろいことやってたらいつか痛い目あうよ、と考える人もいるだろう。
 
 
5年前に“発達障害”に向き合い、その後、その理解を深め続け、今では……という美談はない。
 
ただ、発達障害を始めとした“特性”への受容が広がればな、と思っている。
個人的には、何事も、決めつけたり押し付けたりする前に一呼吸、と、心がけている。
 
 
だから、「そんなの、甘っちょろい」といわれても、すーーーはーーー。
うん、そう考える人もありなんだ、と。
 
どの対応が正しいか決めがたいから、私のやり方を押し付けたいなんて思ってない。
 
ただ、この発信から「こういうこともあるのか」と「知ること」がどこかで始まりますように。広がりますように。そう願っている。

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2018-05-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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