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メディアグランプリ

人生に敵キャラは必要だ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:渡辺ことり(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
女性のストレスフリーナンバーワンといわれる愛媛で、毎日のんびりと暮らしている私だが、子育て中はイライラが溜まることも多かった。
 
最悪だったのは子供会の会長を務めた1年間。
 
ノープランで出かけた初回の会議で、メンバーの一人から「こんなに無駄な会議は初めてだ。会長は全ての準備をして、効率よくちゃっちゃと采配するべきだ」と言われ思わずムッとしてしまった。
 
私は最大限の背伸びをして、会長の席に座っている。
 
人前で話すのは大の苦手。
それどころか人と話すこと自体が苦手だ。俗に言うコミュ障というやつだ。
他のメンバーと違ってフルタイムで働いている。
何より自分は能力があって選ばれた会長じゃない。たまたまくじ運が悪かっただけだ。
 
明るく社交的な他のメンバーに、
「なんなら私と代わってくれますか?」
と言いたいところをぐっとこらえる。
 
その人の言うことが一理あると分かっていたから。
 
みんな子供を家に残してこの会合に出席している。
会長の私が、それこそちゃっちゃと指示を出し、早い時間に会議を切り上げなければ、大切な自分の子供や家族にしわ寄せがいく。
 
くじで選ばれた会長とはいえ、そのポジションにいる私が段取り良くしきれば、そこにいるみんなが幸せになる。
何より私の段取りの悪さに、イライラしている人が確実に一人いる。
分かっている以上、スルーできない。
 
そこで私は会合前に、必ず予習をすることにした。
テキストは前任者から渡された引継書3冊。
これを真剣に読み込んだ。
 
ところがまたすぐに頭を抱えることになる。
内容がちっとも頭に入ってこない。
どの引継書もとても丁寧に書かれていたのに、テンパっている私の頭には呪文か暗号のように見えてしまったのだ。
 
困った私は以前の会長に連絡を取った。
どの方も丁寧に教えてくれた。
それでも私の凝り固まった頭の中には、例えばお祭りでどのルートを歩くとか、ジュースは保管するクーラーボックスに氷をたくさん入れて、生ぬるくないらないように工夫するとか、後になって考えれば、不思議なほど簡単なことがなかなか入ってこなかった。
 
弱り切った私は、親しい友人たちにSOSを出した。
子供会の経験がある友人数人から、理解しやすい言葉で教えてもらうことで、徐々に作業手順がわかってきた。
 
次に、どんな会合でも誰かの手が開くことなく、作業が進むように、気を配った。
ウェブカレンダーで手順表を作り、インターネットで共有する。
当時はまだネットが今ほど盛んではなかったため、メンバーたちは最初戸惑っていたが、すぐに適応してくれた。
 
メンバーも私も頑張り、イベント本番には歴代の会長がこぞって手伝いに来てくれた。
 
そのおかげもあり、どのイベントも大成功。 たくさんの子供たちの笑顔を見ることができた。
 
ヘタレた人間が、負荷のかかる出来事に遭遇し成長する。
物語の定番だ。
しかし現実には一悶着あった。
 
打ち上げの席で「効率性ばかりを追い求めて楽しい活動ができなかった」と言う声が、メンバーの中から上がってしまったのだ。
 
悔しさにその晩眠れなかった。
私は一生懸命みんなのためにやってきた。
時には自分の子供を後回しにして、町の子供のために頑張ってきた。
そのすべてが否定された気がして涙がこぼれた。
二度と長の作立場にはなりたくないと、心の底から思った。
 
そして数年経ち、くじ運のいい私は、新たにPTA部長を引き当ててしまった。
やっちまった、と正直思った。 子供会の経験で、自分がどれほどダメかわかっている。 しかし、引き受けたからには出来る限りのことをしよう。 人様の迷惑にならない程度で良い。
そんなふうに思っていたのに……。
驚いた。
どんな風に動けばいいか、どんな風に頼めば人が動いてくれるか、すらすらと頭に描けるのだ。
頑張りを褒めてくれる人も増えた。
子供会での経験が生きたのだ。
こうなると活動が楽しくなってくる。
 
そして気がついた。
全ては初回の会合で「ちゃっちゃとやれ」ときつい言葉を投げかけてくれた、あの人のおかげだと。
 
人前で話すのは苦手。
コミュ障。
仕切るのが嫌い。
 
そんな私は子供会の会長を貧乏くじだと思っていた。
しかし二度目のくじを引き当てた、その時は違う。
自分にできることなら貢献したいと心から思うことができた。
「みんなのためにしてあげている」と思っていた全てが結局は自分の成長に繋がっていた。無理せず楽しんで行動することで、協力者も増えた。子供会のラストで、「楽しくなかった」と言われてしまったのは、私が肩肘を張りすぎていたせいだった。
 
物語では敵キャラがレベル上げのきっかけを作る。
怒りが根底にないと、スーパーサイヤ人にはなかなかなれない。
人生も多分そうなのだ。
負荷が飛んできたら、笑顔でラッキーと思えるようになったのは、子供会で得た教訓が大きい。
くじ運が悪くて本当によかった。
確かにイベントの企画や会議をしている間、自分の子供はおろそかになる。
しかし子供はいつか成長し、巣立っていく。
そうなった時に人前で話すのが楽しい、仕切るのも楽しい、そう思える人生の方がきっと素敵だ。
 
ストレスフリーの町で暮らしてさえも、イライラとは無縁でいられない。
でもそれが全て糧になると知っているから、これからも深刻化せずに生きていく。

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2018-06-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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