メディアグランプリ

あなたがビジネスを始めない方がいい2つの理由


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:伊藤翔(ライティング・ゼミ平日コース)
 
「あなたにビジネスは向かない。やめておいた方がいい」
 
耳を疑った。
まさかビジネスを勧めている人にこんなことを言われるとは思ってもいなかった。
大力優希。僕と同じ25歳。市内の中心部に事務所を構える社長だ。
 
名前のインパクトから強面の男性なのかとイメージしていたが、現れたのは小柄な女性だった。ただ、目には力があった。
 
「え、それはどういうことでしょうか?」
 
「そのままの意味です。伊藤さんの目標は今の生活をそのまま維持しながら、月に5万円程の収入を増やしたいというものでした。その期待には添えかねます。お帰りください」
 
「ち、ちょっと待って下さい。僕は週6日深夜まで働いて、今日は貴重な休日なんです。その休日をつかってお話しを伺いに来ました。理由をお聞きするまでは僕も引き下がれません」
僕も必死だった。現実を変えたいと思っていた。何かをしないといけないと思っていた。
 
大力さんは少し呆れた表情をしている。
「他人の時間を生きているんですね。まあいいでしょう、伊藤さん見込みはあります。バカっぽいですし」
 
他人の時間を生きている?バカっぽい?
少し美人で成功しているからって調子に乗るな。
とは大力さんの目を見ると口に出せなかった。
 
「まずビジネス初心者の方には物販ビジネスをお勧めしています。投資をしてそれを回収して利益をだすというビジネスの基本が初心者でも分かりやすい。商品自体に価値があるので特別なスキルが必要ありません。また毎日コツコツ30分でも作業すれば月に5万円の収入は誰でも稼げます」
大力さんは淡々と話す。
 
「それなら僕にもできそうじゃないですか!? 30分ならなんとか時間取れると思いますし。期待に添えないとはどういうことでしょうか?」
 
「もちろん伊藤さんでも今の生活をしながら月プラス5万円の収入を増やすことは可能です。ただ、今の生活をそのまま維持するという点は厳しくなるかと思います」
 
30分くらいなら生活のリズムが崩れることもないと思うが、大力さんは何を言っているのか? 僕はたった30分の作業に音をあげる男に見られているんだろうか。
 
「ビジネスを始めると奪われるものが時間の他にもう一つあります。それは今まで培ってきた働くことに対する常識、考え方です。想像してみてください。1日30分の作業で月5万円の収入が得られる。1時間なら? 3時間なら? 伊藤さんは月25万円の収入を得るのに何時間ご自身の時間を使われていますか?」
 
「……1日12時間は使っています」
なぜ月収が見抜かれているのだろうか。顔に書いている?
確かに1日30分で月5万円の収入なら費用対効果は本業とは比べものにならない。ただ僕が働く理由はお金を稼ぐことだけではない。
 
「大力さんは僕が副業をするうちに働くのが馬鹿らしくなって、今の仕事を辞めるんじゃないかと思われているということですか? それはありませんよ。僕は今の職にやりがいを感じていますし、人の役に立っているという実感があります。」
馬鹿にしないで欲しい。大力さんも金の亡者なのかと思い残念だった。
 
「その通りです。理由は全く異なりますが伊藤さんは今の生活を手放されると思います」相変わらず淡々とした話振りだった。
 
「大力さんの言う通りにはならない自信があります」
今日一番の声が出ていた。
 
「私も本当に稼げるのか半信半疑ながらも副業からビジネスをスタートしました。そして副業の収入が本業の収入を上回るようになりました」
 
「そして他人の時間を生きるのは自分の人生に対して失礼だという思いで、不安もありましたが独立しました。その時から私は自分の時間を生きることが出来るようになりました。私は自分が本当に人生で成し遂げたい事をする時間、大切な人と一緒に過ごす時間、両親に今まで育てて貰った恩返しをする時間を手に入れることが出来ました」
 
「ビジネス=お金を稼ぐ事と思われがちですが、私はビジネス=自分の人生を手に入れる手段だと思っています。だから私は副業・起業という選択肢があることを伝えたい。そんな想いで今の仕事をしています」
 
「なので今の生活を維持しながら収入を上げたいという伊藤さんの希望にはお応えできません。ただ、伊藤さんの本当の幸せのお手伝いはさせて頂きたいと思います」
 
「伊藤さんが人生で本当にしたい事は何ですか?」
 
僕が本当にしたい事。それは僕の常識では絶対に出来ない事に思えた。だから自分の出来そうな範囲の希望を伝えていた。
 
「僕は、本当は……がしたいです」
大力さんが今日初めて笑った。
 
「僕にも出来るでしょうか?」
言葉が漏れていた。
 
「初めに申し上げましたが伊藤さんには見込みがあります。成功者は本当の天才かバカのどちらかです。私の周りの経営者もバカばかりです。行動できる人ならビジネスはうまくいきます。行動できるのは、はじめからリスクとリターンの把握ができる天才かリスクを考えないバカです」
 
「褒められているのか、けなされているのかわかりません」
大力さんが、また笑った。
 
「一歩踏み出すのに必要なのは勇気ではありません。情報です」
 
「伊藤さんが電車に乗れたのは勇気があったからではなく切符の買い方と改札の抜け方を知っていたからです。ビジネスも同じです。伊藤さんは今日私に会いに来ることが出来ました。情報を取りにくることが出来ました。だから、大丈夫です」
 
大力さんの言うことを完全に納得できた訳ではなかったけれど、ほんの少し思い当たる節はあった。だから、どうにかこうにか信じてみようと思った。
 
その後僕は大力さんに師事し、副業を始めた。そして半年で副業の収入が本業の3倍になり大力さんの予言通り脱サラした。
そして今まで本当にしたいと思っていたボランティアの活動を中心とした生活を送っている。
 
現在僕は大力さんのお手伝いをさせて頂いている。
 
目の前には1年前の僕と同じような青年が話を聞きにきている。
「あなたにビジネスは向かないと思います」
 
***

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2018-11-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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