WRITING LIFE

『殺し屋のマーケティング』の作者が本気で選ぶ、ビジネスマンなら読んでおかなければならない「24冊の特選マーケティング本」《天狼院書店/WRITING LIFE》


『殺し屋のマーケティング』(ポプラ社)著者、および、天狼院書店店主の三浦でございます。
11月9日に発売になった小説版『殺し屋のマーケティング』は、初版が大きかったにも関わらず、発売から3日で重版がかかり、11月26日に全電通ホールで上演した演劇版『殺し屋のマーケティング』にも大変多くのお客様にお越しいただき、小説をお読みいただいた皆様、演劇を御覧頂いた皆様、本当にありがとうございます。
『殺し屋のマーケティング』は、女子大生起業家桐生七海が、「受注数世界一の殺し屋の会社」を創る物語です。
「営業」も「広告」も「PR」もできない、世界一売ることが難しい「殺し」という商材をいかにして売るか?
もし「殺し」を自在に売ることができれば、世界最強のマーケティング・マネージャーになれるに違いない――
七海は「受注数世界一の殺しの会社」を創るために、世の中で売れないものはないと言われている最強のマーケティング・マネージャー、西城潤に弟子入りします。
物語を通して、彼が七海に伝授するのが「7つのマーケティング・クリエーション」という、まったく新しい次世代型のマーケティング理論です。
そして、表向き本屋である西城潤は、自分が経営する「天王星書店」にあるマーケティングの本をすべて、七海にまずは読ませます。
はたして、最強のマーケティング・マネージャーであり、情報を商う本屋である西城潤が、七海に読ませたマーケティングの本は何なのか?
『殺し屋のマーケティング』の作者である僕は、同時に天狼院書店という書店を経営しているために、多くの方から、
「七海が読んだマーケティングの本を教えて欲しい!」
と問い合わせがありました。
天狼院書店には、まったく別の3人のお客様から必要とされたことは実現させなければならないという裏ルールがあるので、ここに公開することに決めました。
七海が「受注数世界一の殺しの会社」を創るために読んだ、マーケティングに関する本を、七海はこう読んだのではないかと想定される順番で公開して行きましょう。

基本編/マーケティングを学ぶ前の地ならしのための読書


1.『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント《第12版》』フィリップ・コトラー+ケビン・レーン・ケラー著(丸善)

 

コトラーの『マーケティング・マネジメント』は、アメリカのトップのMBAなどでも教科書として読まれている決定版中の決定版です。
1,000ページを超える大著ですが、あらゆる解説書や入門書も含めて、この『マーケティング・マネジメント』が最も読みやすく、理解がしやすいです。マーケティングの初心者こそ読むべき本であり、まず、この本を読んで、マーケティングというものを体系的に捉えると、これから紹介する本を読むのも、理解が深まります。
まずは、マーケティング思考を手に入れるための本であり、マーケティング思考の土壌を手に入れてから、ブランドや商品開発、ビジネスモデルなどに関する本を読むといいでしょう。
僕自身も、起業したての9年前にこの本を「読み潰し」ており、その経験がなければ、今こうして会社を運営できていなかったのではないかと思います。
これを読み込んだおかげで、「マーケティング」に関して、ひとつも臆することがなくなりました。
ただし、この本には残念ながら弱点があります。
マーケティングの大家、コトラーは起業家ではなく、学者としての側面が強い。
つまり、未来を切り拓くための起業家のためマーケティングというよりは、分析するための学者型のマーケティング理論と言えるので、即効性は期待できません。
また、アメリカの方では、すでに15版が出ているはずですので、日本で出ている12版は論点が古くなっている可能性もあることを認識しながら読まなければなりません。
そのマイナスポイントを踏まえた上であれば、絶対的に読むべき本のひとつと言えます。

2.『商売心得帖』松下幸之助著(PHP文庫)

 

松下幸之助と言えば、大ベストセラー『道をひらく』(PHP文庫)が有名ですが、その影に隠れるようにして、あるいはそれ以上の名著があります。
それが本書、『商売心得帖』です。この本は理論ではなく、商売人が持つべき商売上の心得が平易な文章で書かれています。
そこに並ぶ言葉は、一見、当たり前のことですが、この当たり前のことを網羅すれば、ビジネスが上手く行かないわけがないということに気づきます。
また、一方で、当たり前のことは、すっと入って来やすいために、心に留めおくことも難しい。
それなので、本書は、枕元や手の届くどこかに常においておいて、事あるごとに何気なく振り返って読むのがいいでしょう。
もしかして、読んだはずの言葉の中に、今最も必要としている言葉が眠っているかもしれません。
結構前の本ですが、本書を読むと、本質的な本は決して古びないということに気づくはずです。

3.『小さく賭けろ!世界を変えた人と組織の成功の秘密』ピーター・シムズ著/滑川海彦・高橋信夫翻訳(日経BP社)

 

「リトルベッツ」というシリコンバレーの考え方をわかりやすく解説した本です。
「リトルベッツ」を日本語にすると、タイトルの「小さく掛けろ」ということになり、本書ではたとえば乾坤一擲の関ヶ原の戦いのような大戦にもっていくべきではなく、ビジネスは、小さく、そして素早く失敗を繰り返して、成功にたどり着くべきものだというとても合理的な論点を展開しています。
失敗は、当然するもの。そして、失敗を繰り返すことしか、成功にはたどり着く道はない。
そうだとすれば、もう無感情に失敗し、早く立ち直り、また失敗して、成功を手繰り寄せるしかない。
この「リトルベッツ」という考え方を、マーケティングを展開するまえに頭に入れておくと、とても精神衛生上いいです。
LinkedInの創業者でもあるリード・ホフマンが言うように、
「起業とは崖から飛び降りながら、飛行機を組み立てるような」
ものであって、失敗は当然の投資になります。
ただ、失敗に耐性がない場合は、幾度か失敗すると心が挫けてしまう場合があります。けれども、この本で抗生物質のように失敗耐性を心に準備しておくと、大小問わずマーケティング・マネージャーとして、実際にプロジェクトを動かし、失敗した際に、そういうものだと次のチャレンジに向かうことができるようになります。

4.『「買いたい!」のスイッチを押す方法ー消費者の心と行動を読み解く』小阪裕司著(角川ONEテーマ21新書)

 

「買う」という消費者の行動を、脳の仕組みまで入り込んで読み解いた異色のマーケティング本。
結局は、「買う」は脳が決めていることで、その構造を知らなければ売ることはできない。様々な事例を折り込みながら、「買う」とはどういうことなのか、考えさせられる本なので、ぜひ、一度読んでみてください。また、価値とは何なのかに焦点を当てて、マーケット感覚の重要性を説く『マーケット感覚を身につけよう』ちきりん著(ダイヤモンド社)も一緒に読むといいでしょう。

参考:『マーケット感覚を身につけよう』ちきりん著(ダイヤモンド社)

コンテンツ(商品/サービス)をいかに組み上げるか?/「コンテンツ主義」時代の商品開発のための読書


5.『地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』細谷功著(東洋経済新報社)

 

服のレンタル「メチャカリ」や引き取りサービスの「CASH」、「メルカリNOW」など、時代は大量に消費し、所有するよりも借りたり、リサイクルする流れに向かっています。これからの時代の商品(サービス)開発は、これまで以上に難しくなると言えます。
これまでは、売れている商品があれば、模倣して市場の需要に対して提供すればある程度ビジネスが成り立つほど、マーケットが潤沢でしたが、今はそうではありません。消費者の目は肥え、趣向は細分化されています。
商品開発者は、これまで以上に、消費者のニーズを先回りして、商品(サービス)を作り上げていかなければなりません。
そのときに使えるのが、本書に登場する「フェルミ推定」という考え方です。
答えなきものに、答えを与えるようなアプローチで、これが身につけば、先行きが不透明な時代であっても戦うことができるのではないでしょうか。これと「リトルベッツ」の組み合わせは、これからのマーケターに欠かせない視点だろうと思います。同じ著者の『アナロジー思考』(東洋経済新報社)も、商品開発には使えます。

参考:『アナロジー思考』細谷功(東洋経済新報社)

6.『小倉昌男経営学』小倉昌男著(日経BP社)

 

「経営学」とありますが、商品開発を考えるときにこそ、読むべき本です。
なぜなら、小倉昌男こそは、それまで日本に存在していなかった「宅急便」という、日本人の生活様式までも変える「商品(サービス)」を開発した人だからです。
しかも、この本では、『地頭力を鍛える』のまるで実践版のように、小倉昌男がどうやって「宅急便」というサービスにたどり着いたのかという思考の軌跡をトレースすることができます。あるいは、彼こそが「フェルミ推定」の達人かもしれません。そして、彼の思考法こそが、我々ビジネスマン誰しもが身につけるべきスキルなのではないかと思います。
「経営」という極限の状態で、絞り出すように、あるいは織りなすように「アイデア」を紡いできた彼の足跡を今こそ本書で振り返るべきです。

7.『1坪の奇跡』稲垣篤子著(ダイヤモンド社)

 

永遠の名著と言ってもいい本が本書です。「幻の羊羹」というハイパーコンテンツで有名な吉祥寺「小ざさ」を築き上げた親と娘の二代の物語であって、いかに商品開発に徹底してこだわるかについて、起業家とはどう振る舞うべきかということについて、そして、お客様とはどういう関係性を保つべきかということについて、日本ならではのアプローチで描ききっています。
1坪、商品2品で年商3億円以上。
40年間行列が途絶えない吉祥寺「小ざさ」は、あるいは世界最強のビジネスモデルかもしれません。
なぜなら、圧倒的な「コンテンツ力」で、「広告」「営業」「PR」の一切を不要としているからです。
これこそが、まさに、小説『殺し屋のマーケティング』(ポプラ社)で、主人公の女子大生起業家桐生七海がお手本としたビジネスでした。
「幻の羊羹」を作り込む場面は、まるでアートを創作しているかのようで、商品開発も極限まで至ると芸術と紙一重になるのではないかと思わせられた一作でした。
本書とともに、小さな町でおはぎを1日4,000個以上売り切ってしまうというスーパー「さいち」を描いた『売れ続ける理由』佐藤啓二著(ダイヤモンド社)も読むと、ビジネスにとっていかに「コンテンツ」が大事なのかがわかります。

参考:『売れ続ける理由 一回のお客を一生の顧客にする非常識な経営法』佐藤啓二著(ダイヤモンド社)

8.『SHOE DOG』フィル・ナイト著(東洋経済新報社)

 

圧倒的なブランド「ナイキ」を創り上げたフィル・ナイトの自伝ですが、まったく想定していなかったのが、コンテンツ・メーカーとしての「強者としての日本」が大きく登場することでした。フィル・ナイトは、「ナイキ」を創り上げる前に、日本から「タイガー」と呼ばれるシューズを輸入して販売していたと言います。しかも、彼は大きくなる過程で何度も会社が潰れそうになり、かなりの苦境を経験した、アントレプレナーであったとこの本を読むと、圧倒させられながら気づかされます。
また、そういった「苦境」こそが、宅急便の小倉昌男と同様に、ハイパーコンテンツを生み出す契機になるのかもしれません。
マイケル・ジョーダンやタイガー・ウッズと組むことによって、「ナイキ」は手に入れることも困難なほどの圧倒的なブランドとなりますが、これも『1坪の奇跡』の吉祥寺小ざさとどうように、シューズに命をかけるほどに、商品開発に取り組んだ結果だろうと思います。同時に、池井戸潤の『陸王』(集英社)も読むと興味深くシューズの世界が見えてきます。

参考:『陸王』池井戸潤著(集英社)

9.『アップル驚異のエクスペリエンス 顧客を大ファンに変える「アップルストア」の法則』カーマイン・ガロ著(日経BP社)

 

商品だけでなく、サービスに対しても消費者の目は厳しくなってきています。
これからの時代、もしかして、おもてなしやホスピタリティ系のサービスでは、顧客は物足りなさを覚えるかもしれません。
必要なのは、サービスを超えた「体験(エクスペリエンス)」。
本書は、それについて書いています。
いかにして、アップルストアは一平米あたりの売上高でティファニーに買ったのか、これを読むと理解できます。
これと共に、同じ著者が書いた、スティーブ・ジョブズの本の中でもとても質の高い『スティーブ・ジョブズ驚異のイノベーション』(日経BP社)を読んでみるのをおすすめします。

参考:『スティーブ・ジョブズ驚異のイノベーション』カーマイン・ガロ著(日経BP社)

ビジネスモデルは結果論に過ぎない/「ビジネスモデル」のまやかしに騙されないための読書


10.『ビジネスモデル症候群』和波俊久著(技術評論社)

 

もし、この本が日本で飛ぶように売れるのならば、日本のビジネス界は今後100年安泰だろうと思います。
ところが、残念ながら、きっとそうではないでしょう。
本当のことを言っている良書が買われないということも、残念ながらあります。
一方で、◯◯だけやれば英語は大丈夫、これであなたは月収100万円、といった論点の本が飛ぶように売れます。
理由は簡単です、人は楽をしたいからです。
ビジネスをする際に、「いい商品(サービス)」を用意しなければならないことは誰だって知っています。
けれども、「質の高いコンテンツ」を用意するには、途方もない時間と労力、あるいは投資額が必要となります。
その苦労を回避して、人は「ビジネスモデル」で解決しようとします。
そうして、多くの人がビジネスを構築するのに失敗します。その理由が、本書に痛いほど鮮烈に書かれています。
やはり、楽をする道に正解はない。
コンテンツの質を真面目に高める人が、これからの世の中ではますます評価をされ、マーケティング的に成功をおさめるでしょう。
しかし、僕は何も、ビジネスモデルがすべてダメだと言っているわけではありません。
「商品(サービス)」の質が高まった後でなら、ビジネスモデルの構築は功を奏します。
逆に、せっかく質の高い「商品(サービス)」があるのに、モデルの構築を失敗したために、ビジネスがうまくいかないということもありえます。
少なくとも、機会損失することになります。

11.『ストックビジネスの教科書』大竹啓裕著(ポプラ社)

 

僕は編集協力として本書の制作にも深く携わっているのですが、『ビジネスモデル症候群』とは対象的な理由から、本書は想定以上にマーケットに支持されました。発売して二年経っても、重版がかかっています。
ただし、天狼院書店で本書のイベントをしてフィードバックを受けた際に、読者が容易にストックビジネスを構築できないのではないかと懸念を覚えました。
それは、消費者の立場になればわかることです。
何の実績もない独立したてのフリーランスの人の、有料メルマガを購読したいとは思わないはずです。オンラインサロンに入りたいとは思わないはずです。
しっかりとその人やその人に付随するコンテンツがある場合にのみ、その定期購読するモデルは機能します。
つまり、「質の高い商品(サービス)」を担保することができれば、ここに書かれている理論は、一気に使えるようになります。
AdobeもメチャカリもマイクロソフトのOfficeも、今、サブスクリプションと呼ばれる定期購読方式に、課金モデルが変わってきています。
うまくいっているいずれの企業も圧倒的な「コンテンツ」を有していることは言うまでもないことでしょう。
それなので、本書を読む前に、ぜひ、「コンテンツ」の重要性を説いた本を併せてお読みください。
特に『殺し屋のマーケティング』では、主人公の桐生七海は「ビジネスモデル主義」から入って一度、ビジネスに失敗します。「コンテンツ主義」になってからうまく回っていきます。

12.『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』デイヴィッド・ミーアマン・スコット+ブライアン・ハリガン著(日経BP社)

 

アメリカの伝説的なロックバンド「グレイトフル・デッド」の売り方が、現代の「フリーミアム」などのマーケティング手法に似ていたことから、グレイトフル・デッドのマーケティング手法を活かそうという主旨の本です。
もっとも、グレイトフル・デッドのメンバーたちはそこまでは考えていなくて、売れるために必死なだけで、結果論的に本質的なことをしていた可能性はありますが、そうした目で見たとしても、彼らのマーケティング手法は、とても参考になります。そして、何よりも痛快です。
普通、ライブで録音OKにはしないですよね。
それでも、彼らはライブでの録音をOKにしてしまうのです。
けれども、当時は今のようないい音源で録音できる仕組みはまだまだ高かったので、顧客が録音するテープは音が劣悪でした。それで、結局はグレイトフル・デッドが用意したいい音質の商品が売れるのです。
割り切って、本質を捉える。
これは、あらゆるビジネスのマーケティングに通用する考え方なのではないでしょうか。

13.『レッドブルはなぜ世界で52億本も売れるのか』ヴォルフガング・ヒュアヴェーガー著(日経BP社)

 

「コンテンツ主義」の立場から、今回、マーケティング本を選書していますが、「ビジネスモデル主義」の立場を取ったとしても、ここまで徹底すれば圧倒的な成功を収められるのかと驚嘆させられるのがこの本です。
「ビジネスモデル主義」を貫くとすれば、行き着く先は「ブランド」の構築です。しかも、本書における「ブランド」はコンテンツの質よりもイメージを重視するというもの。
そうです、「タウリン1,000mg」などではなく、「翼をさずける」というぼんやりとしたイメージでブランドを確立したレッドブルが、「ビジネスモデル主義」の成功の最たる例でしょう。
レッドブルは、元々、日本の栄養ドリンク剤「リポビタンD」を作っている企業の経営者が長者番付に乗っていることに目をつけます。
栄養ドリンク剤の市場は、当時の欧米にはほとんど存在しなかったからです。
日本を中心として、それを模倣するかたちでアジア圏に主にそのマーケットは存在していました。
簡単に言ってしまえば、その中のひとつ、タイの工場で作られている「リポビタンD」の模倣品をヨーロッパに持っていき、イメージでパッケージングし直して大ヒットさせたのが、レッドブルだったのです。
レッドブルの創業者ディートリッヒ・マテシッツはユニリーバの子会社で、マーケティング・マネージャーとして働いていました。そこで得たマーケティングの知識を活かして、レッドブルという世界企業を創り上げました。
F1やサッカーなどに巨額の資金を出資してレッドブルのイメージを向上させるその「ブランディング」のやり方は圧巻です。

14.『MAKERS 21世紀の産業革命が始まる』クリス・アンダーソン著(NHK出版)

 

言うまでもなく、企業秘密は秘密にすることでマーケットにおいて競争を優位に進めることができます。
けれども、本書では、「オープンソース化」、つまりは簡単にいえば、企業秘密を開示したほうが、多くのフィードバックを得られて得が大きいと、逆転の発想で説いていきます。
インターネットでつながりやすくなった21世紀だからこそ顕著になってきた戦略であって、この戦略をとることによって、低価格で成長を加速させることができ、一気にマーケットを席巻する可能性も出てきます。また、オープンソース化にともなうコミュニティの構築についても、本書では述べられているところが面白い。
「ビジネスモデル」よりも大きな枠での「戦略」の話かもしれませんが、これもマーケティングにとって、切っても切れない論点です。

15.『誰がアパレルを殺すのか』杉原淳一/染原睦美著(日経BP社)

 

タイトルからして、アパレル業界の苦境をルポルタージュするものかと思いきや、「希望」が詰め込まれた本です。
しかも、本質的なところまで書いているので、アパレル業界に限らず、多くの、いわゆる「衰退産業」と思われている業界のビジネスに通用します。
多くの人が、「これは、自分の業界と一緒だ」と感じるでしょう。
ユニクロやZARA、H&Mといった世界企業の中の多くがとる「SPA(製造小売業)方式」を、焦って猛追したナショナルブランドは、過剰な在庫に苦しむことになります。
これも、結局は「ビジネスモデル主義」の失敗とも取れるのではないでしょうか。
結局、今新しい萌芽として芽吹いているのは、「コンテンツ主義」を徹底しているブランドたちだと取れます。
一方で、ZOZO TOWNのように、ネットを使うというモデルを構築した企業も爆発的に伸びているという関係性が面白いです。
ぜひ、自分の業界に置き換えるとどうなるかと考えながら読んでみてください。

なぜ「上昇スパイラル」を長く維持することができるのか?/「ブランド」を維持するための読書


16.『星野リゾートの事件簿 なぜ、お客様はもう一度来てくれたのか?』中沢康彦著(日経BP社)

 

衰退産業だ、不況だ、ライフスタイルの変化だなぞと文句を言うのは誰でもできます。
ビジネスというゲームは、与えられた駒で戦わなければなりません。ただし、たとえば「歩」も「金」になることができます。
自分では「歩」と思っていたことも、「金」に変えられることを、この本は教えてくれます。
発想の転換は、あらたに「価値」を生み出し「顧客を創造」します。
こうした根本の発送法が、星野リゾートの「上昇スパイラル」を維持させているのでしょう。

17.『JR九州・唐池恒二のお客さまをわくわくさせる発想術』唐池恒二著(ぱる出版)

 

国鉄民営化した後に、ドル箱路線を持たない北海道と九州は苦境に立たされました。
しかし、唐池恒二は、ドル箱路線を持たないならば、ドル箱路線を創ればいいと考えました。
それが、今は定番となった九州の観光列車です。
予算がなく、新型列車を創れず、改装で凌がなくてはならなかったことを逆手にとって、数々の魅力的な観光列車を九州中に張り巡らせることによって、わざわざこれに乗るために、人が日本全国から、また、世界から押し寄せることになります。
苦境を跳ね除けるのは、「アイデア」であって、自由な発送法がこの本には詰まっています。
一緒に、後に出た、同じ著者の『鉄客商売』唐池恒二(PHP研究所)も読むといいでしょう。

参考:『鉄客商売』唐池恒二(PHP研究所)

18.『元・宝塚総支配人が語る「タカラヅカ」の経営戦略』森下信雄著(角川ONEテーマ21新書)

 

閉ざされたマーケットで顧客と強固な繋がりをもち、100年続くエンターテイメントの巨星「宝塚歌劇団」がいかにして現在のようなブランドを手に入れ、今なお維持し続けられているのかを、中にいた著者の視点で描いているのがとても興味深いです。
自前の市場で収益を上げ、排他的な育成システムでコンテンツの質を担保するそのやり方は圧倒的で、逆にそこまで圧倒的でなければ、アート市場でブランドを維持することは困難なのだろうとも思わせられます。
非常に考えさせられる1冊です。

これらの本をすべて捨てろとは、いったい、どういうことなのか?/『殺し屋のマーケティング』の真意


さて、ここまで、メインとして18冊、参考として6冊の、計24冊のマーケティング関連本を紹介して来ましたが、『殺し屋のマーケティング』(ポプラ社)の作中で、七海の師匠である最強のマーケティング・マネージャー西城潤は、七海に何年もかけてマーケティングの本を読ませておきながら、こう言い放ちます。
「今まで読んだマーケティングの本を、すべて忘れるんだ」
それは、何も、マーケティングの本の価値を否定しているのではありません。
西城が言いたかったのは、得た情報は、失敗を繰り返しつつ、実際のビジネスで活かさなければ意味がない、分析のためのマーケティングは、趣味でしかなく、本当の意味でのマーケティング、ドラッカーがいうところの「顧客の創造」は失敗の中からしか生まれないということを言いたかったのでしょう。
皆様も、ぜひ、これらの本を読み、皆様のビジネスで活かしてみてください。
マーケティングは、自由を生み出し、人が生きる場と時を提供するものだと僕は考えています。

*「24冊の特選マーケティング本」は天狼院書店各店に常備してありますが、人気のものは入荷待ちの可能性もありますので、ご了承ください。


2017-11-29 | Posted in WRITING LIFE, 特選本

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