メディアグランプリ

誰かと住むことがスッと楽になった話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:坂下佳奈(ライティング・ゼミ冬休み集中コース)
 
 
社会人1年目、大学時代の延長線上のように共同生活をはじめた。
一軒家を借りて友人たちと住む、いわゆるシェアハウスというもの初めてしたのは、6年前のこと。大学のバスケサークルの先輩2人と私の3人での共同生活だった。知り合いとはいえ、家族ではない赤の他人との生活がスタートした。
 
 
始める前に決めていた「シェアハウスの終わり」の期限をすこし超えて、2年半で最初の共同生活は終わった。それからは、大々的にシェアハウスをうたっている施設に入居したことはないが、シェアハウスのような誰かと住む生活を断続的に続けている。
 
 
カウチサーフィンというアプリを使って、旅行者を家に泊めたり、プロジェクト参加者が自由に滞在できる家を運営したりしている。短期だと1日から、長期だと4ヶ月まで、一緒に住んでいる人がいる状態が続いている。
 
 

誰でもウェルカムで人を受け入れていると、「一緒に住めない人とかいるの?」「共同生活しんどくないの?」とよく聞かれる。もちろん、最低限のマナーを踏み越えてくる人とは、一緒に住めないと思う。ただ誰かと住んでいるからストレスになると言うことは、ほとんどなくなった。正確に言うと、ストレスがあっても解消できる場合が多いと今では思っている。
 
 
ただそんな私も、一番最初の共同生活をしているときに「共同生活は無理だ」と思ったことがある。
その感情が沸き起こったのは、シェアハウスを始めてから2ヶ月ほどたったときだった。
「何で私ばっかり?」という気持ちがピークに達したときだ。
夜、シンクに溜まったお皿を洗いながら「何で私ばっかり洗ってるんだ?」とモヤモヤしはじめたのだ。
 
 
私たちがシェアハウスを始めるに当たって最初に決めたルールは、最小限だった。家事などのルールはほぼなく、掃除は、決められた2週間のうちのどこかで担当の場所を掃除するという緩いルールだった。ほぼないに等しかったし、最後らへんは、形骸化していたと思う。
 
 
それが、なぜか共同生活をはじめてから、「やらないといけない」と思いはじめた。
家でご飯を食べ終わったときに、たまたまシンクにお皿が溜まっていることが何回か続いたのだ。そして律儀に私は、シンクに溜まったお皿を洗いモヤモヤしはじめた。
私自身、もともと大して掃除をする方でもなく、ある程度の量や汚さになったときに「まあ掃除するか」というタイプだ。お酒を飲んで気分が良くなって急にスイッチが入って、夜中に掃除を始めるような気まぐれな人間だ。
 
 
「何で私ばっかり皿洗いしてるの?」
「自分で食べたお皿くらい洗えばいいのに」

 
 
ただこのモヤモヤは、1ヶ月もしないうちに急に消えていった。
あることを意識しはじめた瞬間に、スッと楽になっていて、それからの共同生活は楽しいこと続きだった。「共同生活で嫌なことある?」と聞かれたら、「特にない」と言えるようになったのだ。
 
 

モヤモヤが消えていって、共同生活を楽しめるようになった。
意識しはじめたのは「無理をすることをやめた」ことだ。
 
 
溜まっていた皿を洗いながら、勝手に怒るくらいなら辞めようと思った。
「私はやっているのに、何で他の人はしないの?」と思うくらいなら、自分の使った皿だけ洗って、シンクにある皿はそのままにしておけばいい。シンクに皿が溜まるのが気に入らないのなら、「使ったら洗うようにしよう」と言えばいいだけだと気づいた。
 
 
もともとズボラだった私の生活を振り返ると、私だって毎回使った皿を洗うわけではなかった。
仕事が忙しくて、疲れているときは、シンクに皿が溜まることくらいある。
そう思って、少し肩の力を抜いた。
 
 
それからの共同生活は、すごく楽だったし、たくさんのことに気づかされた。
肩の力を抜いて生活をしていると「何と独りよがりな感情を抱いていたのだろう」ということがよく見えてきた。
 
 
自分の仕事が忙しくて、連日帰ってくるのが遅いときは、誰かが散らかった部屋を掃除をしてくれていた。同居人が作ったご飯を食べさせてもらったことも多い。自分だけが何かをしていたわけではなかった。
 
 
それがわかってくると、自分の気持ちに余裕が出てきたときは、率先してシンクに溜まった皿を洗った。家でご飯を食べない日でも、シンクに溜まったお皿を気持ちよく洗えるようになった。自然と「やりたい」と思えてくるようになった。誰かのためにやってるとか、やらされてるではなく、「自分がやりたいからやる」だけになると、共同生活は楽になった。
 
 
自分ができる時に、自分ができることをする。
誰かがしてくれたことには、思いっきり甘えさせてもらう。
そして、大切なことは、ちゃんと「ありがとう」を言うこと。
 
 

共同生活をはじめて3ヶ月で、やっと私はそんな当たり前のことに気づいた。
きっと家族だろうとなかろうと同じなのだと思う。私たちは結局赤の他人なのだ。
自分の気持ちや時間を大切にしながら、互いに思いやることで一緒に生活ができる。
 
 
これから先も、誰と住むときも無理をせずに「ありがとう」の気持ちを大切にしていこうと思う。

 
 
 
 
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2020-01-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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