春日のままでは、落ち込めない~膝のケガから学んだ真実~
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事 飯田あゆみ(ライティングゼミ平日コース)
いろんな仕事をしているのでどれが本業なのか自分でも時々よくわからなくなるが、私のメインの仕事は乳幼児の野外遊びのサポートである。
毎週火曜日は、2,3歳のちびっこを預かって野外で遊んでいる。ちびっこという生き物は、高いところから飛び降りるのが好きな生き物で、ちょっとした段差からジャンプできるようになると、次々高いところに挑戦を始める。
あれは、2019年3月のことだった。私は、人様のおうちの石垣から飛び降りてはキャーキャー言っているちびっこ達を見て、楽しそうだなあ、やってみたいなあ、と自分も石垣から飛び降りてみたのだった。
瞬間、ひざの関節がみしっと嫌な音を立てた。
体重がせいぜい15,6キロの3歳児と、その4倍以上ある50歳児とでは、受ける衝撃の度合いも、それを吸収するはずの関節の軟骨のすり減り具合もまるで違う。たかだか60センチのジャンプにより左ひざを負傷した私は、2019年の秋まで痛む膝をだましだまし外遊びを続けていた。
自身も膝を痛めたことがある主人に、整形外科に行けとしつこくすすめられて行ってはみたが、関節にヒアルロン酸の注射をしましょう、と言われるままに治療を受けたら、ますます痛みがひどくなり、近隣の整形外科は信用できない、と行かなくなった。
年齢的にも、ここから劇的回復を遂げることはないだろうと思ったこともあり、治療をあきらめていたのである。
そんなある日、SNSで「膝が痛いよう」とぼやいていたら、懇意にしているお蕎麦屋さんのご主人が「もしかすると、ここなら一発で治るかも」と不思議な治療家さんを紹介してくださった。その先生は、ご自身の息子さんがサッカーで膝を壊し、一年余り評判の高い整形外科医院、鍼灸、マッサージ、整体をすべて試したがよくならず、親子して絶望の淵をさまよわれた過去を持つ。最後の望みを託して飛行機で四国まで治療を受けに行ったところ劇的な回復を遂げ、あまりの感動に、自分でもその治療のテクニックを学び開業してしまった人だ。本業は一級建築士、治療家としては「ひろメディカルケア」の看板を掲げていらっしゃる。
ひろ先生の治療は、とても不思議で、どう説明したらいいのか素人の私にはよくわからないのだが、まるで自分が木材になったような気分になる。仰向け、またはうつぶせで治療を受けているので、膝がどうされているのか私には見えない。ただ音が聞こえるだけ。ボードにタッカーでホチキスを打ち込むようなバチンバチンという音や、インパクトドライバーで木ねじを打ち込むようなガッガッガッという音がして、機械で骨や関節のずれを修正しているらしき様子がうかがえる。そして、最後にテーピング。それも普通のテーピングとは違って、あちこちシワシワよれよれの、まったく筋肉をサポートしないテーピング。皮膚を浮かせてその下の血管やリンパにきちんと患部まで栄養を届けてもらえるようサポートするという理屈らしい。見た目は「このシワシワよれよれが何の役に立つのだろうか?」と思う。だが、これが本当に効くのだ! 私の膝は二回通ったらよくなって、日常生活には全く問題なくなってしまったのだ。あんなに痛かったのに。
先生はおっしゃった。
「歩き方や体の使い方の癖でまた痛みが出ることもあるかと思います。時々メンテナンスに来てくださいね」
言われてハッとした。それだ、それなのだ! 私は歩き方のバランスが悪いと、いろんな人に言われる。太ももの前半分だけ使っていて、後ろ半分(いわゆるハムストリングス)を使えていない。そのせいで登りや長距離の歩行がすぐに疲れてしまう。せっかく、ここで膝を直してもらえたのだから、気になっているところを全部なんとかしてみよう。やるなら徹底的に、短期に、一気に、である。歩き方を変えて、バランスの良い使い方を覚えよう。
そこで、「らせん流タオRUNNING倶楽部」を主催されている、ランニングセラピストの小松美冬さんのもとを訪ねた。小松さんのノウハウは、これまた独特である。徹底的に自分の体に訊く、ということを大事にされている。「正しい姿勢、正しい歩き方、正しい体の使い方」という「型」を教わるのではなく、どうしたら、快適な動きができるか、そのコツだけ教わってあとは自分の体との対話がメインとなる。「この動きはどうかな? これは不快だろうか?」常に今の自分の体がどう感じているかを確認しながら動く。まるで瞑想のようでもある。終わるととても気持ちよく、歩くって快感だったのだな、と思い出させてもらえる。
体の声を聴くうちに、自分が一番気持ちよい姿勢で歩くと、上を向いて胸を張ってのしのしと、簡単に言うとオードリーの春日のように歩くのが楽だ、というところに到達してしまった。見た目は大変えらそうである。しかも一応、女子なので、これはどうなのか? と思わないでもない。しかし体の声には逆らえない。これが楽なんだと覚えた体は、いついかなる時も春日でいようとする。そうして約二か月、春日でいたら、なんとメンタルも変化してきたのに気づいた。私は自分のことを繊細で落ち込みやすい人間だと思っていたが、そんな私が、あらゆることを「まあ、いいか」と鷹揚に流せるようになってきたのだ。以前は、人からちょっとアドバイスめいたことを言われただけでも「クレーム」と受け取り、勝手に凹んでいたのに、春日化してからは「まあそんなこともあるよね」「あなたはそう思うんだね」と開いた胸板バリヤーであらゆることを跳ね返せるようになってきたのだ。
不思議、不思議、いったいどうして? と思って、似たような事例はないかと調べていたら、大富豪・斎藤一人さんの言葉にたどり着いた。それは、お弟子さんの一人が鬱になった時に、毎日、肉を食べに行こうと誘ったという話。「どうして肉なんだろう?」とお弟子さんが不思議に思って聞いたら「病気で元気がない人は肉なんて食べないでしょう? 病人らしくないことしてたら、勝手に頭が病気じゃないって思って、治っちゃうもんなのよ」とおっしゃったというのだ。なるほど! である。
つまり、私たちは「病は気から」ということわざに代表されるように「人の変化は心が先、体は後」だと思い込みすぎているということだと思う。何かあるとすぐに凹んでしまう私のような人は、こんな私はだめだと、メンタル強化に比重を置きすぎ、体をおろそかにしていたので、そこからしっぺ返しを食らってしまっていたのだ。
膝完治からの春日ウォークや、肉を食べることの例が教えてくれるのは、体が先で心は後だ、ということである。体が快適で、常に「どんとこい!」という姿勢を保ち、健康でなければ食べられないようなものを選んで食べていれば、心はつられて健康になっていくものなのだろう。常に「快」を選択する姿勢があれば、「不快」を遠ざけようとする意思が働き、自分の置かれている不快な環境を変えようとか、あるいは、これ以上は無理だからさっさと逃げようとする算段も整えやすくなる。意思を支えるのは肉体なのだから、当たり前と言えば当たり前だ。
人間は春日の姿勢をキープしたまま、落ち込んだり、悲しんだり、後ろ向きになったりは、なかなかできない生き物だったのだ。私にとって、これは、「体から学んだ目からうろこの新常識」となったのであった。
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