メディアグランプリ

外国人旅行者に、ぜひ教えてあげたいグルメガイド


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:関戸りえ(ライティングゼミ ・平日コース)
強面の中年男性に何が起こったのか? スーツを着た長身細身のその男は、眉間にシワを寄せて、お昼時に歩道の真ん中に立ち止まった。
私何かしたのだろうか? それとも彼の感情を逆撫でするようなできことが何か起きたのだろうか? 早くこの場を立ち去った方が良いのだろうが、彼のこの表情の理由が知りたい。
「ああ、無性に腹が減った」
彼の心の声がダダ漏れである。
その男の名は「井之頭五郎」
 
『孤独のグルメ』というコミックの主人公。ドラマ化されて、すでにシーズン8までテレビ放映されている人気番組だ。
腹が減って力の抜けた強面の男は、はっと我に返り、颯爽と歩き出すのだ。
あたりをキョロキョロ見まわし、あっちに行ったりこっちに行ったりして、今日のターゲットを探しているのだ。
昨今は、行きたいお店や食べたいものは、あらかじめ検索したり、そのお店の口コミやランキングなどを参考にすることが多いのだが、彼は決してスマホをポケットから出さない。自分の直観でお店のドアを開けるのだ。
大都市は、交通の便もよく、徒歩圏内に選択できるお店がたくさんあるのでこんなこともできるのだろう。
ランチは、働く人の楽しみであり、午後の仕事のモチベーションにもなる重要な毎日の小さなイベントなのだ。
近年は、日本を訪れる外国人観光客が増えているが、特にこの数年は、彼らの求めているものが大きく変わってきている。
「爆買い」という言葉が流行った5、6年前は、日本でしか手に入らないものや、自国では高値でしか手に入らないものを大量に購入するのがブームだった。
近年では、「モノ」よりも「コト」を求めてやってくる外国人が多い。ガイド
ブックに載っている情報は、すでに古いのである。
そこで、外国人観光客にぜひおすすめしたい日本の食文化体験型グルメガイド、ドラマ『孤独のグルメ』だ。その理由は5つ。
1. 松重豊さん演じる、主人公「井之頭五郎」が、他人と言葉を交わすことはほとんどない。無性に腹の減った五郎さんの頭の中は、食べることしかないのだ。人との関わりも、店員さんとのオーダーのやり取りくらい。すなわち余計なことを考えずに食べることに集中して見ていられる安心感。1話に1店舗しか登場しないのも、味や雰囲気のイメージがしやすく集中して観られるのだ。劇中に登場するお店は、全て現存しているので、外国人のカルチャーショックを軽減し、安心してお店のドアを開けることができる。
⒉ 劇中では、五郎さんとお店の人とのやりとり以外、料理や味の説明などは全て松重さんのナレーションのみ。話している内容は、食に関することがほとんどなのだ。だから日本語の理解に乏しい外国人でも、それほどストレスなく理解のできる番組なのだ。役者、松重さんの演技力と擬音、BGMだけで、どれくらい美味しいのか、優しい味なのか、もっとパンチのあるガツンとしたメニューに挑戦するのか、これはハズレメニューだったのかなどが伝わってくる。
松重さんの細身な体型からは想像できないほどたくさんのメニューを注文する。こんなに食べられないだろうという品数を毎度オーダーするのだ。予想に反し、全ての皿を綺麗に食べつくす。
「うんうん」と頷きながら、次から次へと食事を口に運ぶ姿は、見事な演技力だ。
事実、欲求に勝てず、夜中にデリバリーを2度も頼んでしまったことがあるほど、食欲のコントロールを麻痺させてしまう演出効果抜群の番組なのである。
⒊ 日本人の働く大人のランチ事情が垣間見られる。首都圏ならではの、徒歩圏内によりどりみどりのお店があるというのは、私の住んでいるマレーシアではありえない。だから毎回街並みを歩いて、自問自答しながら空腹を満たす小さな冒険の旅に向かう五郎さんを羨ましく思うのだ。
 
⒋ 日本は「コメが主食」であることを、五郎さんはその食べ方から力説してくれる。炒め物や、小鉢のお浸し、ある時は、マグロのぶつと、追加でオーダーしたとろろや生卵にちょっと醤油を垂らして、「ガガーっ」とかき混ぜて白いご飯にかける。ちょっと行儀は悪いかもしれないが、煮物の残った汁やタレをかけて、茶碗に口をつけてかきこむ場面は、普通のグルメ番組のリポーターは絶対にやらない。
5.日本の「驚きの食べ方の習慣」が外国人には勉強になるのだ。まずは手を合わせて「いただきます」。その後、茶碗を手に持ちおかずをご飯にのせるのだ。刺身には醤油をちょっとだけつけて食べるというのも、まだまだ知られていない。番組では、漬物を食べるときの「ポリポリ」「シャキシャキ」という音をあえて強調しているのも驚きなのだ。
4、5番のいずれかを実践するだけで、「この外国人、通だなあ」という印象を受けるので、こぞって真似をしたがる。ただし、麺類を「ズズーっ」とすする勇気のある外国人を見たことはほとんどない。
2、30年前は、「日本食といえば、天ぷら、寿司、刺身、そば、うなぎ」などが定番だった。今ではラーメンやうどん、照り焼きなども定着している。
今外国人に熱いのは、日本のコンビニ飯とスイーツ、目立った看板もない、こぢんまりとした食事処だ。旅行ガイドには載らないレベルのものを皆競って探している。
近年日本を訪れる外国人観光客のお目当ては、「日本人の日常を経験する」ことなのだ。
2020年、オリンピックイヤーでますます外国人観光客は増えるであろう。そういう人たちにアドバイスしてあげたい。「井之頭五郎巡礼の食事の旅」は、新しい経験になるよ、と。
 
 
 
 
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2020-01-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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