僕たちが寝ている間にも細胞は働いている〜おもしろくて、ためになる『はたらく細胞』〜
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事: 熊元 啓一郎(ライティング・ゼミ平日コース)
「“凝固因子”は持ちましたか? それじゃあ、行っくよー!」
「「「はーい!」」」
小さな女の子の掛け声とともに、幼い子供たちが一斉に廃墟となった街の中心に走り出す。ポッカリと開いた大きな穴、血小板と書かれた帽子をかぶった子供たちは穴の近くまで来ると、フィブリンという小さなネットを“凝固因子”で繋いで巨大なネットを作って、あっという間に穴を塞いだ。
「傷口が塞がれた? これじゃ仲間を呼べないじゃない!」
穴が塞がれてあわてふためく細菌たち。
それを見た白い作業服の男たちは、ここぞとばかりに細菌たちに襲いかかる。
「細菌ぶっ殺ーす!」
白血球と書かれた帽子をかぶった男たちは、細菌の返り血を浴びながら一匹残らずと細菌を倒していく。
ここは人間の中、傷口から侵入した細菌たちを細胞たちが体を守るために働き今日も細菌から体は守られたのだ。
これは『はたらく細胞』という漫画の一場面。
この漫画は赤血球や白血球、血小板など体の細胞を擬人化した物語だ。
近年、様々な擬人化がブームとなっている。戦艦や武器、お城など数えたらキリがない。中には大腸菌や古代生物など、もはや何でもアリなんじゃないかと思うくらいそのジャンルは広がりを見せているが、その中でもこの作品は異色の輝きを放っている。
なぜか?
理由は簡単、面白くて勉強になるのだ。
体の中の様々な細胞が擬人化され、体の仕組み、細胞の役割をコミカルに描かれている。
例えば血小板、教科書などには大体以下のような説明がされている(読み飛ばして結構です)。
血液に含まれる細胞成分の一種で、血栓の形成に中心的な役割を果たし、血管壁が損傷した時に凝集してその傷口をふさぎ、止血する作用を持つ。これを一次止血という。その後、血小板の周囲を凝固因子がどんどん反応していき……(以下略)。
途中で説明を切り上げたが、中学や高校で生物を勉強していても今の説明ではよく分からないかもしれない。
血栓? 凝集? 一次止血?
はっきり言って体の細胞のことなんてイメージが湧かない。
だって細胞なんて目に見えないのだから。
難解な言葉で説明されてもさっぱり分からない。
それを擬人化して僕たちに近づけることで格段にイメージしやすくなるのだ。
方向音痴でドジっ子だけど、いつも一生懸命ながんばり屋さんの赤血球。
真面目で面倒見も良いが、一旦細菌と出会すと容赦なく切りつける白血球。
幼い子供の姿をしていて人懐っこい血小板ちゃん。
他にも多くの細胞が特徴的かつ魅力に描かれている。
それぞれの細胞の役割をストーリーに仕立てて解説することで、楽しみながらも体の細胞のことをしっかりと理解できるのだ。その話の多くはコミカルで見ていて楽しい。
ちなみに血小板の役割については、冒頭で記載したエピソードを見ることで、その役割から止血の話までしっかり理解できる。なにより画面の中ではたらく“血小板ちゃん”が可愛らしい。
そしてしばしばドラマティックな展開を見せるのがこの作品の魅力でもある。
例えば、癌細胞。
彼らはどんどん大きくなって周囲の細胞を破壊し、最終的に人間を死に至らしめる。体から排除しないといけない悪い細胞だが、実はこの癌細胞には悲しい生い立ちがあって、結末は涙なしでは見られないのだ。僕は実は消化器内科医として癌治療に従事しているが、これを見た時一瞬癌治療をやめようかと思ってしまった。
他にも大きな傷からの大量出血で起こった出血性ショック。体に異変が起こり、仲間がどんどん消えていく中、一人で懸命に細胞へ酸素を運んでいく赤血球。倒れそうになりながらも、後輩の赤血球に伝える“その言葉”は、まさに赤血球の役割を代弁しているようで、その姿に泣けてくるのだ。
『はたらく細胞』、楽しみながら体の勉強ができ、そして自然と体の知識が身に付けられる作品だ。それは、“こどもちゃれんじ”にのめり込んで気がつけば色々なことができるようになっている幼児の感覚に似ているかもしれない。この漫画は講談社から出版されており、現在5巻まで発売中だ。またamazon primeなど動画配信サイトでは、このアニメ化されたこの作品を見ることができる。これから体のことを勉強する人や体のことが苦手だった人にはおすすめだし、そうでない人にも純粋にストーリーを楽しめることができると思う。また、医療系の職業についている人など体のことに詳しい人でも擬人化して細胞を見ることで新しい発見があるかもしれない。
またこの作品を通して、自分の体ことを思いやるようになるかもしれない。
僕たちの体の細胞たちは休むことなく日々働いている。仕事や勉強が忙しくて無理している時や体調を崩した時、どんなときでも体の細胞たちは僕たちの体の状態を保つために働いている。でも細胞たちの物語を見ると、無理させすぎるのは良くないと思うようになると思う。現代社会は忙しく、無理をしないといけない時は多々ある。でも無理をさせすぎると体の細胞たちは弱っていき、いざと言う時に細菌やウイルスなど外敵と戦うことができず自分の健康を損なってしまう。必要以上に無理をしない、少なくとも不規則な生活や不摂生は可能な限り止めよう。はたらく細胞たちを見て僕にはそんな想いが芽生えるようになった。
おもしろくて、勉強になって、さらに体のためにもなる。『はたらく細胞』は様々なコンテンツを含んだ作品だ。まだ読まれていない方は是非読んでみてほしい。
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