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親の役割


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:平山いずみ(ライティング・ゼミ特講)
 
 
私は、3人姉妹の長女で生まれた。
父は仕事も忙しく、休日もいない時間が多かったので、私は女だらけの家庭で育った。
教育熱心な母親に育てられ、しかも長女だった私は「優等生」であることで、両親に愛されていると思っていた。
「いい子」じゃないと愛してもらえないと、勝手に思っていた。
だから学級委員長、部長、生徒会役員なんかをずっとやってきた。
 
だが、目立った私は生意気に見えたのだろう。
中学に入ったら、いじめにあった。
 
休み時間、一緒に過ごす相手がいなくて、暗い資料室に隠れていたこともある。
思い切って出した初恋の人へのラブレターが、黒板に貼られていたこともある。
そしてそこからの私は、人から嫌われないように、目立たないように、人からの評価をいつも気にしながら生きてきた。
 
そんな私も主人と結婚して、二人の男の子の母親になった。
息子たちが生まれた時は、本当に可愛かった。
寝顔は天使だった。
笑うだけで幸せで涙が出た。
 
だけど、男の子という生き物がわからなくて、すべてが不安で手さぐりだった。
実家は遠くて頼れないし、母に相談しても「男の子はわからない」と言われた。
 
大きくなるにつれて、うまくいかないことが増えていった。
ハイハイしない、離乳食を食べない、言葉が遅い、みんなと一緒に遊べない……
泣き叫んで暴れたり、ふと目を離したすきにどこかへ行ってしまったり。
 
愛しているのに、自分の子供が理解できなかった。
母子手帳にはチェックできない項目が出てくるようになり、保健所に要観察だと言われた。
 
公園に行けば、周りの子達と比べて、できないところばかり数えては、
「なんでみんなと同じようにできないんだろう」と悩んだ。
思い通りにいかない我が子を、どうしたらいのかわからなくて、怒鳴ったり、叩いたりしたこともあった。
 
それだけじゃない。
他のママ達や先生に「あそこの親はしつけがなってない」と陰口をたたかれるのではないかと怖かった……
結局自分を守りたいのか。 最低な母親だ。
可愛い寝顔を見ながら、そんな私は母親失格だと、自分を責めた。
 
それから数年後、子供達は、発達障害だと診断された。
 
ショックだったと思うだろうか。
むしろその逆だった。
私はほっとしていた。
これからやるべきことが、やっとわかったから。
そしてなにより、私の育児のせいじゃなかったと思えたから……
 
それからの私はたくさん本を読み、いろんな勉強会に行った。
でもどこに行っても、どうしたら良くなるのか教えてくれなかった。
ただ『治らないから、周りがその子に合わせた環境を作らなくてはいけない』と教わった。
 
だから私は、子供が起きてから寝るまで子供達を管理し始めた。
持ち物は全てチェックして、忘れ物は届け、宿題はべったりと横について一緒にやった。
少しでも心配なことは連絡帳に書き、先生のフォローをお願いした。
 
彼らがみんなと同じようにできるように。
他の子に迷惑をかけないように。
私みたいにいじめられないように。
ばかにされないように。
傷つかないように……
 
私は彼らが失敗をしないように、全てのことに、手出し口出しを続けてきた。
それが愛情だと思って疑わずにいた。
だって、この子達は普通の子とは違うから……
 
でも、そうしていたら、だんだん何をするにも私の顔を見るようになったのだ。
トレイに行くのにも、行ってもいいかと聞くようになった。
そして何か良くないことが起こると、私のせいにするようになった。
 
なにか違う。
これは私の目指す子育てだろうか。
そう思っていた私は、とある子育てセミナーで言われた言葉に、衝撃をうけた。
 
発達障害? そんなの関係ない!
自分のことは自分でやる。
自分のケツは自分でふかせろ。
そこで、学んだことは、子供には大いに失敗させろということだった。
 
そこで私はまず、色々なことを一緒にやってみた。
そうじ、洗濯、料理、アイロンがけ……
 
そしたら、できるのだ。
しかも私より丁寧で上手だったりする。
揚げ物だって、シャツのアイロンがけだって。
 
上履きを忘れた日は、届けずにじっと我慢した。
パニックになっているんじゃないか?
先生方に迷惑かけているんじゃないか?
ずっとドキドキしていたのに、帰ってきた息子はけろっとしていた。
「一日くらいなくてもなんとかなったよ」と。
 
あーー 私は何をそんなに心配ばかりしていたのだろう。
この子達は、もう自分で自分のことがちゃんとできるのだ。
私は子供たちが、失敗しないようにするのではなく、失敗した時どうするかを、学ばせなきゃいけなかったのに。
ただ私が「できない」と勝手に決めつけ、この子達の力を、ずっと潰してきてしまっただけだった。
偏見の目で見て、この子達をずっと信じてあげられずにいたのは、誰でもない私だった。
自分の子供なのに……
 
子供達は、私が疲れてご飯が作れなくて、コンビニ弁当になってしまっても、美味しいと言って食べてくれる。
イライラして八つ当たりしても、お母さん大好きと言ってくれる。
 
なのに私は、子供達が「いい子」の時しか、褒めてあげなかった。
認めてあげなかった。
本当は、生きていてくれるだけで充分なのに。
 
ちょっとくらい勉強ができなくたって。
ちょっとくらい運動ができなくたって。
ちょっとくらい言葉が遅くたって。
それが何だというのだ。
 
生まれてきてくれてありがとう。
私はあなたたちのお母さんで、とても幸せです。
 
 
 
 
***
 
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2020-02-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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