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マスクの下は、にっこりスマイル!

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:庵 雅美(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「マスクなのに、お化粧してるんですね」
 
先日、ネイルサロンでのことだ。席に着いて、ちょっと息が苦しくなったので、少しだけマスクを外した。新型コロナでマスクの日々だが、なかなか慣れずに、つけたり、外したりしている。
 
それを見たネイリストさんの第一声だった。私はマスクをした彼女のことを、一瞬誰だかわからなかった。長年お世話になっている仲良しだけど、顔全体の表情が見えないと、案外とわからないものだ。声を聞いてすぐに気がついたが失礼するところだった。
 
彼女曰く、一日中マスクを外せないのだから、隠れているとこは化粧しなくなったという。メイクもしなければ、ファンデもつけなくなったそうだ。20人程のネイリストさんが働くそのお店では、お店あげてマスク着用が決められた。私のように、つけたり、外したり、中途半端なことはできない。
 
さらに、話は続いた。ネイリストさんやお客さんのあいだでは、お肌のシミ取りをしてる人が続出だというのだ。シミ取りをすると、一時的にカサブタになるが、マスクをしていれば隠せる。これはシミ取りのチャンスというわけだ。ちなみに彼女は、まだ何もしてないので、何かいいのがないか検討中とのことだった。
 
なんとポジティブな切り替え力だろう! マスク生活の今しかできないことをさっそく実行している人たちがいることに感心した。わたしは、相変わらずいつも通りの化粧なぞして、出遅れた感でいっぱいになった。マスクしてると、メガネがくもるだの、息苦しいだの言ってる場合ではない。
 
というのも最近、顔がたるみはじめたのが気になっていた。ウィルス感染の心配や外出の自粛などで、つい憂鬱モードになってるせいだ。さらに、リモート勤務が多くなり、同僚と顔を合わせないことで、表情筋を使ってないからだろう。仕方ないと思っていた。でも、もっと前向きに考えないといけないと思った。
 
私はもともとが苦手だった。なぜかと言えば、表情が見えないからだ。
 
コロナ以前から、近年、風邪などの予防のためにマスクをする人が増えていた。ひと昔前にはなかった光景なので、時代の変化なのだろう。特に冬から花粉症の季節まで多くなる。私の周りにも家族を含めて予防マスクの愛用者は多い。
 
私は、マスクをした人と話をしていると、相手がどんな表情をしてるのかな? と気になってしまい、少々不安になる。すると、私の心は閉じ気味になってしまう。それではコミュニケーションが楽しくない。
 
目は口ほどにものを言うというが、わたしには目の表情だけでは心許なかった。顔全体の表情が見えないのでは何か物足りなかった。だから私は、具合の悪い時以外は、マスクをしない派だった。
 
でも今や、新型コロナの影響で、病気の人も、予防の人も、そうでない人も皆がマスクをするのが常識になっている。電車などでは、マスクをしないと目立ってしまう。マスクをしていない人がくしゃみでもしたら……、とマスクをしていない人を警戒する。他人に安心してもらうためにも、マスク着用は欠かせなくなった。
 
世の中は皆、気をつかう日々だ。私も毎日マスクをしている。人に近くで接する時にはできるだけ外さないように気をつかっている。ネイルサロンでもマスク着用のままがんばった。
 
ネイリストさんとお互いマスク顔でのおしゃべりは、今しかできない美容をしよう! と盛り上がり、楽しかった。でも、やっぱりいつもより物足りなかった。彼女の表情が見えないのがつまらなかった。もちろん彼女のせいではない。私の問題だ。この事態のさなかに、つまんないとかぼやいてる方が不謹慎だ。
 
ネイルサロンから帰宅して、手洗い、うがいをした。私は鏡の前でたるんできた顔を見ながら、たるみを直そうと口角あげてにっこりしてみた。
 
これだ! と思った。変に聞こえると思うが、鏡に映る自分のにっこりを見て、なんだかほっとしたのだ。
 
その時、マスクが苦手な理由がはっきりとわかった。人がにっこりするのが見えないからだ。にっこりは、口元やほっぺたが表情をつくる。マスクをしているとそれが見えない。
 
私は、人がにっこりするのを見るのが好きなのだ。それを見て、私も笑顔になる。元気になれる。マスクをしていると、元気の素をいただけないから、なんだか物足りないと感じていたのだ。人がどう思うかは別として、私も人に笑顔を見せていたいと思っていた。なんとも自分勝手な理由だった……。
 
そう言っておきながら、マスクの下で憂鬱顔になっていたのは私であった。マスク生活が続き、表情が乏しくなり、顔がたるんできていたことに気がついた。鏡の前でしてみたにっこりをマスクの下でもしてみようと思った。ちょっと変な人だけど、マスクしてるから、見えない。今しかできない美容だ。
 
水鳥が水面下でバタ足してるみたいに、マスクの下ではにっこりスマイル。見えなくても、営業中だ。
 
わたしも誰かの元気の素になれるように、今のうちにトレーニングしておこう。不思議なことに、ちょっと憂鬱でもマスクの下でにっこりしていると、なんだか楽しくなってくる。テンションあがる。
 
マスク解禁となり、皆のにっこりがオープンになる日が待ち遠しい。
 
 
 
 
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2020-03-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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