アラサー女性はサラダボウル
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記事:春花(ライティング・ゼミ 平日コース)
「来年は手ぶら(子なし)では参加できないな……」
去年の予感は的中した。
毎年恒例、夫の親族が集まる新年会。
今年はある程度の展開を想定し、心に鎧をまとって挑んだ。
すべて想定内だったのに、わたしの心は想定外の脆さだった。
「子どもはまだか?」のドストレートな質問や、
「数の子をたくさん食べなさいね!」といった間接的なメッセージを作り笑顔ではぐらかし、心をすり減らしながら、親戚の子どもをあやした。
結婚4年目。さすがに言い訳がなくなってくる。
結婚式があったから、海外旅行が控えているから、転職直後だから……。
ついにネタは尽きた。
なんで正直に「なかなか授からない」と言えないのだろうか。
本当は結婚式だって関係なかった。いつだって迎え入れる準備だけは万全だった。
プライド? 心配をかけたくない?
自分でもわからないが、気を遣われることさえ辛くなっていた。
授かり婚をした親戚の「子どもは早い方がいいよ」の直球アドバイスは特に響いた。
自分が一番焦っている。他人事だと思っていた不妊治療もこっそりはじめている。
去年の新年会の直後に決心してはじめたのだ。
その場では、焦って空回りしていることがバレないよう必死に隠した。
これがまた仇となり、空気を読まない呑気な夫婦に映ってしまっているようだ。
夫が長男であることも、問題をより深刻にした。
期待してもらえるありがたさと、ほっといてくれというヤサグレ。
あれ? この感情、前にも感じたことがある……。
そうだ、結婚前に感じたあの感情だ。
20代前半は「まだ若いから」と幾度となく言われ、年齢など気にも留めていなかった。
30歳に近づくにつれ、あれよあれよと周囲の友人が結婚しゴールテープを切っていくように見えた。
「まだ」と言われた年齢が、「もう」と言われるようになっていた。
この時期に感じていた「ほっといてくれ」という感情が再びあらわれたのだ。
アラサー女性、なかなか難しいお年頃だ。
……?!
わたしも以前、周囲の人にこの手の疑問を感じたことがあることにふと気が付いた。
「結婚してしばらく経つけど、子どもはどうするのかな。」
「付き合って長いけど、入籍の予定はあるのかな。」
無意識に抱いていた疑問という名の余計なお世話。なんて失礼なことを……。
きっと新年会でのやり取りも、素朴な疑問から生まれた悪気のないプレッシャーだったのだろう。そのままそっくり自分に返されただけだ。
何をどうやって悲劇のヒロインだと勘違いしていたのだろうか。急に恥ずかしくなった。
結婚を望まない友人がかつて、結婚を期待する親の心配と世間体を嘆いていたことを思い出した。
子どもを欲しいと思わないし本当は結婚もしたくないけど、世間体を気にして結婚だけはしようかな、と。
そういう考えもあるのか。人に合わせる必要はないし、彼女の意見は尊重されるべきだと思った。でも、彼女の本心を知らない人は、その考えには及ばないだろう。
女性は20代から30代にかけてライフスタイルに大きな変化があったり、決断に迫られることも多い。
パートナーを求めない人、パートナーがいても婚姻関係という形にこだわらない人、
子どもを望まない人、望んでも思うようにいかない人。
人には人それぞれの価値観があり、それぞれのペースがある。
アラサー女性はサラダボウル。
アメリカの多文化多元主義をあらわすサラダボウル。
たくさんの民族がそれぞれの文化や個性を失わずに、それぞれの良さを共有して、社会で共存することを表す言葉。
「人種のるつぼ(メルティングポット)」のように、混血することで融合するのではない。
トマトはトマト、レタスはレタス。
個性を失うことなく、お互いを尊重して社会という器のなかで共存するこの言葉が好きだ。
女性だから、とかアラサーだから、とか。生き方や思考を均一にする必要はないと思う。
今は多様な生き方が認められているように思えるが、それでも時に感じる周囲の期待や、世間体を意識した何気ないひとことで性別や年齢を意識してしまうこともある。
そんなときこそサラダボウルを思い出して、自分の考え方や個性を大切にしたいと思う。
もちろんわたしも相手を尊重し、自分の考えを押し付けることで無意識に誰かを傷つけないようにしたい。
さて、アラフォーのわたしはどんなことを考えているのだろう。
もっといい例えが見つかっているだろうか。個性を失わずに、自分らしく過ごしていることを願う。
そのためにまずは身近な課題。
来年の新年会は、どういう状況であっても心から笑って過ごしたい。
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