私が中古本を買わない理由
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:加藤有加里(ライティング・ゼミ平日コース)
古本屋の100円コーナーで本を選ぶ。読みたかった本があれば、ラッキーと思い、手に取る。定価1,000円以上の本が100円で買えるなんて、利用しない手はない。
学生時代、お金があまりないころはこんな風によく中古本を買っていた。大学の教科書も中古本を買っていたくらいだ。1円でも安いものを探し、多少の古さは気にせずに買っていた。とにかく、読めればよかったのだ。
でも今は中古本を買わなくなった。
社会人になってお金に余裕が出たからというわけではない。つい最近まで、インターネットを使い昔と同様中古本もよく買っていた。Amazonを使えば、買いたい中古本の値段一覧をすぐに見ることができる。その中から、一番安くてきれいそうなものを選ぶ。ぽちっと購入ボタンを押すだけで、あとは玄関まで届けてくれる。
それがあることをきっかけに変わったのだ。
何気なくある本を読んでいた時、
「書いている著者にお金を届けたいから、中古本は買わずに新品を買う」
という文章が目に留まった。その本を書いていたのは、たしか自分よりも若いアーティストだったと思う。決してお金があったからというわけではなく、アーティストとして売れる前の学生時代のころからそうしていたそうだ。
私は、はっとした。
今まで自分が払っていたお金が誰に届くかなんて考えてもいなかったのだ。本の販売の仕組は詳しくないが、中古本を買えばそのお金は介入している本屋に入るだけだろう。新品の本なら、印税という形で著者にもいくらか入るらしい。私が今まで買っていた中古本は、1円も著者のところには届いていなかったのだ。もし私が本を書いている著者の立場だったら、中古本ばかり買われていて、とても嫌な気分になったかもしれない。
本を作る、つまり文章を書くというのはとても大変な作業だと思う。書いている間は、その本が売れるのかどうかまだ分からない。読んでくれる人が本当にいるのかどうかも分からない状況で書く。読んでくれる人を想像しながら書くしかない。とても孤独な作業だ。
ライティング・ゼミを受講したことで、毎週2,000字程度の文章を書くようになり、そのことが今まで以上に身に染みている。書いては消して、また書いて、しばらくたってから、また変な箇所を見つけて書き直し。書く内容を決めるのも時間がかかる。キーボードを叩く手が止まってしまい、もう途中でやめてしまいたいと何度も思う。
1冊の本を書き上げるとなったら、私が経験している大変さなんて、ほんの一部分でしかないだろう。
中古本を買っていたころは、著者のそんな苦労のことなど露知らず、無料で読んでいたことに対してとても申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
それからは、私は本を書いてくれた人に感謝の気持ちを届けたいという理由から新品の本を買うようになった。お金が届けば、また次の作品につながるに違いない。著者を応援する、そんな想いも込めるようなった。
もちろん、中古本も否定するつもりはない。
中古本で気に入って、新品の本を買ってくれる人もいるかもしれないからだ。もしくは、私がそうだったようにお金があまりない学生にとっては、とてもありがたい存在でもある。社会人になり、お金に余裕が出てきたら新品の本を買ってくれればよいのかもしれない。
現代は、インターネットが普及していることもあり、本以外からもいろんな情報を手に入れることが容易になってきた。その情報一つ一つは誰かが書いて成り立っている。数年前、卒業論文のコピペが問題になったことがあった。私もコピペまでとはいかないが、いろんな本から引用して、書き上げた。当時は何の罪悪感もなく、周りのみんなも普通に行っていた。しかし、それは間違った行為だ。本を書いた人のことを無視した行為だったと今は反省している。
文章を書くということ自体、なかなか商品として見てもらえない部分があるが、価値あるものであれば、きちんと対価を払わないといけないし、無断で利用するなんてもってのほかだ。私にもそんな意識がようやく出てきた。
リサイクル、そんな風に言ってしまえば、まるで良いことのようにも聞こえてしまうが、物によっては、ふさわしくない場合もある。
私が中古本を買わない理由。それは新品の本を買うことで、著者に感謝と応援の気持ちを届けるとともに、次の新しい本につなげてもらうためだ。私もこれから文章を書いていく立場として、そう思ってもらえるような著者にもなりたい。
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