ホステルのスタッフの1日
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:岡尾明奈 (ライティング・ゼミ日曜コース)
ホステル、それは即ち、ターミナル駅である。
いろいろな場所から人がやってきて、出会い、またそこから他の場所へと旅立って行く。
そんなホステルという場所に惚れ込み、世界各国のホステルで働くこと約5年、ホステルオタクになってしまった女の話をしたい。
はじめに、ホステルとは一体何なのか。話の流れが変な方向に進まないように注意書きをしておく。一応述べておくが、新宿の歌舞伎町で活動しているような男性にお酒を次ぐ女性、「ホステス」ではない。「ホステル」である。
ホステルは、ひと昔前までバックパッカーズとか、ユースホステルと呼ばれていた。簡単にいえば、若者向けの簡易宿である。ホテルとは違い、リビング、キッチン、シャワー、トイレなどが共用になっており、寝る部屋は大抵ドミトリーと言って、二段ベットが何台か置いてある。自分が寝泊まりする部屋も見ず知らずの他人と共有するのである。
ホステルでの宿泊の醍醐味は何と言っても、他のゲストとの交流である。大抵のゲストが一人で旅をしているからこそ、ホステルで一緒になった他のゲストと仲良くなり、次の日に一緒に街を観光をしたりすることもある。宿側はこのようなゲスト同士の交流を促進するためにも、イベントを提供している場合が多い。
私の最初のホステル就労経験は、京都。2015年大学1回生のときであった。2015年といえば、訪日外国人観光客数が増加し始めた年であり、京都はここからみるみる観光都市へと変貌を遂げることとなった。それに伴い、ホステルや宿泊施設数は爆発的に増加した。
そんななか、京都の河原町三条にあるホステルで働き始めた。そこでの自身の珍道中をしたためたいと思う。
ホステルスタッフがどういう仕事をしているのかは、実際に宿泊したことがある人しか想像つかないと思うが、ホステルスタッフとしての1日はハプニングの連続であることが多い。普通に考えたら起こらないカオスが発生するのである。
フロントデスクでチェックイン対応をしているといきなりゲストが悲痛な叫び声をあげたことがある。どうしたのかを尋ねると、自分の携帯がないという。心当たりを聞くと、さっき乗ってきた新幹線かもしれないと言われ、警察、JRのみどりの窓口へ連絡することになる。
また、ある日は、シャワーの更衣室から大量の水が漏れているのを目撃した。脱衣所の中にシャワー室があるから、廊下からシャワーまでには扉が2枚あるはずなのだ。なのに、扉2枚挟んで廊下まで水が溢れ出ている。これはどういうことだ ! 中で人が倒れているのかもしれない。必死で私は扉を叩き、安全を確認しようとした。すると中からカップルが出てきた。「あ、ごめんね。水流れてたの気付かなかった」必死で扉を叩いている私と、ただ中でいちゃついていたカップル。こっちの気にもなってほしいものである。
また、ある日は、客室の清掃中に客の忘れ物に気づいた。なんだこれ。拾い上げて見ると、セクシーなTバックのパンツである。施設内で見つけた忘れ物については1ヶ月保管しないといけないことになっている。このセクシーなパンツも例外ではない。なぜ、パンツを客室に忘れるのか。しかも忘れ物はこの1点のみ。人の下着を堂々と掲げて廊下を歩くわけにはいかないので、自分のポケットにとりあえずしまった。どう考えても、この行為、これだけ見たら変態行為である。結局、この下着をフロントの忘れ物置き場に持っていき、これは保管されることになったのだが、実際にゲストが取りに来たのかは分からない。旅先でパンツ1枚忘れても、それを取りに来る客はまあ普通いないが。
まあ、このようにカオスが連発するのがホステルなのである。
カオスだけではなくて、たまに嬉しいハプニングも起こったりするものだ。ホステルスタッフの仕事の中に、ゲストの満足度を上げるためという名目のゲストとの交流というものがある。もうこうなってくると歌舞伎町のホステルとしていることは変わらないような気もするが。ゲストは世界各国から来ている観光客である。時に彼らのために日本文化イベントとして、料理教室をしたり、折り紙教室をしたりすることがある。
ある日、折り紙教室をしていると、日本でいう小学2年生ぐらいのフランスの男の子が参加してくれた。彼は英語が話せなかったし、私もフランス語は話せない。だが、言葉は分からなくても、気持ちは通じ合ったようで、折り紙レッスンをとても楽しんでくれた。次の日の朝が彼と彼の家族のチェックアウト日で、私のシフトは夕方からだったから、チェックアウト時には会うことができなかった。しかし、出勤すると他のスタッフから折り紙を渡された。それは昨日の男の子が折ったもので、その折り紙のかぶとには日本語でメッセージが書かれていた。「きのうはありがとう。またね。フランスにきたら連絡してね」心が癒され、私の心を虜にした。天使よ。ありがとう。
このようなカオスと癒しの連続が刺激的であるからこそ、5年間もホステルで働き続けてしまうのだ。ホステルで働くということは一種の依存症なのかもしれない。
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