スラムダンクは親友だ
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:本田啓介(ライティング・ゼミGW集中コース)
バスケットボール漫画の金字塔、スラムダンク。
僕らの世代は夢中になって毎週ジャンプを読んでいた。
あれから20年以上が過ぎたが、未だに多くのシーン、名ゼリフが不意に出てくる。そしていつも、「試合はまだ終了していない」、と勇気づけられる。
中学生のとき出会ったスラムダンクは今でもそばにいる親友のような存在になった。
仕事でどうしても納期が間に合いそうにないがけっぷちのとき、応援を頼んで残業して、やっとのことでおえた。そんなときも、安西先生の名ゼリフ「諦めたらそこで試合終了ですよ」の声が聞こえ、なんとか乗り越えることができた。
女の子の気を引きたくて、好きでもないことを「大好きです」バスケットマンですからとカッコつけてしまうような時もあった。後で本当に大好きになるのも原作と一緒。
資格試験を受けようと専門学校に通ったが、仕事にかまけてやりきれず、「俺はどうしてこんな無駄な時間を過ごしてしまったんだ」と三井寿を思いながら後悔をつぶやいたときもあった。
スラムダンクは6年間連載されていたが、桜木花道が高校に入学してから1年の夏のインターハイまで、たった半年程度の物語である。最初は、まったくできなかったバスケットを、徐々に、しかし実は1か月ごとに驚異的なスピードで身に着けていく。
はじめは体育館のすみで、マネージャーあやこさんとひたすらドリブルをする基礎練習から。庶民のシュートと馬鹿にしたレイアップは、あこがれのヒロイン晴子さんとの早朝練習で「ボールを置いてくる」とコツをつかんだ。「リバウンドを制する者は試合を制す」とキャプテン赤木に教わり夜まで猛練習をした。安西先生に「相手はまさかこんな短期間にシュートがはいるようになると思っていないからフリーでうたせる どうだね桜木君 わくわくしてこないかい」とおだてられ、1週間で2万本のシュートを練習する。
こうして主人公桜木は、どんどん成長していく。
これを見ているだけでも、自分が成長しているようでわくわくする。
そして、いつも周りにいる人たちと一緒に新しい能力を身に着けていく。
そして、成長した桜木が花開くのが最後の試合、インターハイで毎年優勝の最強の敵、山王工業との試合だ。
桜木が空中でパスを受けそのままダンクをする高等技術アリウープを決める驚きの展開からスタートするが、前半戦で大差をつけられてしまう。
後半、エース流川が拒んでいたパスを出すことでシュートが決まり始め、スリーポイントシューター三井寿が疲労困憊のなかで仲間を信じて打ち続けるスリーが決まり、追いつていく。その中心に、パワフルなディフェンス、そしてリバウンドをとることで試合の流れを変えた桜木がいた。
追い上げるが時間が残り少ないなか、試合は静寂に包まれる。
セリフがまったくなくなる。
スピード感のある動きの描写。
キャラクターの視線が語る。
場外に出ようとしたボールに桜木が飛びつく。
絶対にパスを出したくなかった流川がそこにいる。
やむを得ずパスを出し、流川が決める。
相手ボールを奪い、流川がドリブルで突っ込む。
ブロックされそうになる。
桜木が2万本練習したシュートの体制で待つ。
流川がパスを出したことのなかった桜木へパス。
ネットに触れることもなく桜木のシュートが決まる。
二人がかけていき、バチィーンと聞こえるようなタッチを交わす。
この情景に、涙してしまう。
今までパスを出すことをしなかった主役2人がそれぞれ相手にパスを出す。セリフを交わすことなく、ただ、アイコンタクトで語っていく。
その一瞬に、相手を認めあう親友の感覚が見て取れる。
親友は、いつも一緒にいるから親友というわけではない。本当のところで相手をわかりあえるから親友になるのだ。
このシーンを見ると、親友とはそんなものだと思えて仕方ない。
熱く夢を語るときもあるが、やはり背中を預けながら一緒の仕事を達成するときが相手のことが本音でわかる。
明日までに納品しなきゃいけない。トラブルで足りない物品を僕がかき集めるなか、彼は周りの段取りを完璧にして乗り越えてくれた。そんなときに、試合最後の数秒のときにパスを出せる信頼をおける相手が親友だ。
仕事にも、人生にも、本当に追い詰められるときがある。全力でぶつかればぶつかるほど、自分の無力さを感じるときがある。まわりがどうせだめだとあきらめてしまうときがある。
そんなときに、今までの自分の姿をみていてくれて、最高のパスをくれるやつがいる。
追い詰められたときこそ、パスを出せる親友がいる。
エース流川にパスを出すことの大事さを教えてくれた、ライバル校のエースキャラ仙道はいう、
まだ慌てるような時間じゃない。さあていこうか。
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