あなたの心に残る名ゼリフは何ですか?《陸奥亭日記》
記事:野田賀一(ライティング・ラボ)
「I’ll Be Back」
このセリフを聞いて思い出す映画は?
と聞かれたら、ほとんどの方はすぐに答えられると思う。
アーノルドシュワルツェネッガーが主演の『ターミネーターⅡ』である。
溶鉱炉に親指を立てながら沈んでいくあのラストシーンも合わせて秀悦である。
では、このセリフを聞いて思い出す映画は何だろうか?
「飛ばねえブタは、ただのブタだ」
キザ過ぎるブタが主演の『紅の豚』である。
ブタが主人公という突飛な設定に留まらず、到底言わないようなこのセリフを入れ込んでくるあたり、宮崎駿はセンスの塊だなと思えてしまう。
TVのバラエティや日常のちょっとしたウケ狙いの場面で乱用されているぐらい人気のフレーズでもある。
名ゼリフはただ一言発するだけで映画を聞き手の脳裏に再現させてしまう。
どちらの映画も面白さは誰もが認めるところではあるが、これだけ有名になったのは、やはり名ゼリフがあったからに違いない。
映画だけに限らず、漫画にも名ゼリフは存在する。
「あきらめたらそこで試合終了ですよ」
「またつまらぬ物を切ってしまった」
「燃えた。燃え尽きた。真っ白にな」
「殴ったね。親父にもぶたれたことないのに」
「おれは海賊王になる男だ!」
それぞれニヤニヤしながら漫画のタイトルを当てられると思う。
さらに映画、マンガに限らず、現実でもスポーツ選手、宇宙飛行士、政治家、科学者が残したものを挙げたらきりが無い。
それぐらい名ゼリフは時代を超越して生きているということである。
それだけ私たちは名ゼリフが好きなのだろう。
グッとくるかっこいいフレーズはここぞというタイミングで言ってみたいし、友人知人に映画や漫画の感想を伝える時にも名ゼリフは欠かせない。
ツラい時に力をくれたり、悲しい時に癒してくれるのもまた名ゼリフなのである。
そういえば、プロポーズに使ったっていうやつもいたっけ。
皆さんも色々な場面で名ゼリフを使ったことがあるはずだ。
だがそれだけ身近な名ゼリフも、気をつけなければならないことがある。
それは、その人によって名ゼリフの基準が全く異なるということだ。
ある人にとってはグッとくるフレーズでも、それが他の人も同じとは限らない。
名ゼリフを使って、「ビシッと決まった」と思って相手を見たら、きょとんとして場が白けたという経験は少なからずあるはずだ。
だから私は一度も周りに披露せずに、こっそりと心に閉まっている自分だけの名ゼリフを持っている。毎朝それを見て気合を入れてから仕事をしているので座右の銘と言ってもいいくらいの言葉だ。
恐らく皆さんも同じように自分だけの名ゼリフがあると思うが、一つの事例としてご紹介したい。
それは【壬生義士伝】という日本の映画に出てきたセリフである。
浅田次郎原作の歴史小説で2003年に映画化されたものだ。
この映画のあらすじは、
主人公の盛岡の武士が飢饉で家族がピンチだということを、妻の自殺未遂で知る。
↓
家族を養う為に脱藩(現在の亡命と同等)をして新撰組に入隊する。
↓
激動の幕末の中で、自らの儀と家族の為に一生を賭す
という物語だ。
時代劇+幕末+新撰組という人気の要素に加えて、友情、人情、家族への愛があふれた主人公の行動は涙無しには見れない。
人を斬って稼いだお金を家族へ毎月仕送りをするシーンや、生まれたばかりの娘との今生の別れのシーンは同世代のパパには鉄板の号泣タイムだ。
日本人が好きなものがギュッと詰まっている映画である。
その中のワンシーンで、主人公が地元盛岡の教え子たちを奮い立たせるために発した言葉がある。
「南部盛岡は、江戸より百四十里。奥州街道の涯てゆえ、西国のごとき実りはあり申さぬ。
おぬしらが豊かな西国の子らに伍して身をば立て、国ば保つのは並大抵のことではねえぞ。
盛岡の桜は石ば割って咲く。盛岡の辛夷は、北さ向いても咲ぐのす。
んだば、おぬしらもぬくぬくと春ば来るのを待つではねえぞ。
南部の武士ならば、見事石ば割って咲げ。盛岡の子だれば、北さ向いて咲げ。
春に先駆け、世にも人にも先駆けて、あっぱれ花こば咲かせてみろ」
これが私にとっての名ゼリフだ。
分かりやすく解説すると、
「盛岡は恵まれていない土地だ。そこで家族を持って生活していくのは並大抵のことではない。それでも、盛岡の自然はそれに抗うようにたくましい。それを見習ってお前達も大輪の花を咲かせる立派な人間になりなさい」
この言葉に救われたことが何度あったか分からない。
挫折し、悩み苦しんだ時に必ず脳裏に浮かんでくるのはこの言葉だった。
こうやって個人の想いも重ねて永遠に生き続けるセリフ。
皆さんにとっての名ゼリフは何だろうか。
そこには秘められたエピソードや想い、色んな感情が詰まっていることだろう。
たった一言ではあるが、やはり言葉の持つ力というものは凄い。
また名ゼリフを見つけたらぜひご紹介したいと思う。
その時には必ず私はこの天狼院メディアグランプリで記事を投稿する。
「I’ll Be Back」
どうもお後がよろしいようで。
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