手にカビが生えた話
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記事:加藤有加里(ライティング・ゼミ平日コース)
「たくさんカビがいるよ」
「え、そんなはずはないでしょ、ちょっと見せて」
そう言いながら、私も顕微鏡をのぞくと、紛れもなくそこにはカビがいた。
私は医療機関で働いている。
最近、両手の皮がどんどんむけてくるので、何でだろうと思っていた。
同僚の臨床検査技師が試しに私の指の皮を少しだけ取って、顕微鏡で検査してくれた。
その結果、カビの一種である白癬菌というものが私の手に住み着いていることが分かった。
いやいや、白癬菌って足にいる、いわゆる水虫ってやつでしょ。
なんで私の手に……。
私も、いちおう女性。水虫という言葉には敏感である。医療機関で働いているので、そんな患者さんはたくさん見てきたがまさか自分が、しかも手に。
何とも言えない敗北感と絶望感。はたから見れば笑いごとであるが、当の本人にとっては真剣なのだ。
カビの一種である白癬菌は、皮膚の角質層に入り込んで寄生し、繁殖する。体のどこにでも感染するが、通常9割近くは足に感染する。手はほんの1割だ。この菌は、皮膚の表面に付着しただけでは感染しない。洗い流されずに残った菌が、皮膚の傷などから入り込み、さらに繁殖しやすい条件が整ったときに感染する。この繁殖しやすい条件というのは、高温多湿の状況。汗や汚れがずっと残ったままだと繁殖しやすい。
このご時世、いつも以上に手を洗う回数が多かった。なのになぜ……。
よくよく考えてみると思い当たる節がいくつかあった。
新型コロナウイルスの感染予防のため、医療機関では手袋をして対応することが多くなった。私が働く職場でも同じだった。
私も働いている時間、ずっと手袋をしていた。少し暖かい季節になり、手袋の中は当然蒸し風呂状態。汗をかいてとても気持ち悪かったが、手袋を外すわけにもいかない。休憩時には、手袋を外して、手洗いやアルコールをしていたが、物資不足のため、手袋は1日1セットの支給。また同じ手袋をはめて仕事をしていた。手袋の中で菌が繁殖する条件が整っているわけだ。
もうひとつ思い当たることとして、私はもともと湿疹がよくできるため、ステロイド入りのクリームを使用していた。手にも湿疹はできていたので、毎日のように塗っていた。ステロイドを塗ると、炎症は抑えられるのだが、その反面免疫力を抑えてしまうので白癬菌が増殖してしまう可能性があるらしい。湿疹の治療と引き換えにこんなことになるなんて。
白癬菌にとって、最高の繁殖の場を提供していた私の手は、白癬菌にすっかり気に入られて、両手のすべての指に住み着かれてしまった。ああなんてこった。こんなことになるなんて、コロナのせいだ。手袋をはめなきゃこんなことにならなかったんだ。みんなが手袋を買い占めたからだ。1日1セットしか手袋を支給してもらえなかったせいだ。原因を全部まわりのせいにしようとした。しかし、当然だがそれで治るわけではない。
事の次第を職場の医師に話し、抗真菌剤を処方してもらった。
とにかく白癬菌をやっつけるしかないのだ。
1日1~2回、抗真菌剤を手に塗り込む。症状のある部分だけでなく広範囲に渡って塗り込むことが重要らしい。薬剤師さんに言われた通り、両手全体に薬を塗りたくった。でも今の時期、頻繁に手を洗うため、薬がすぐに落ちてしまうのではないかと不安になる。これもコロナのせいだと心の中でつぶやいた。
まだ治療し始めて日が浅いため、目に見えての改善はないが、今後も地道に薬を塗り続けるしかない。治ったと思っても、さらに1か月は薬を塗り続けなければいけないそうだ。なんともしぶとい白癬菌ではないか。消えたと思っても、実はどこかに潜んでいるらしい。こんなところもコロナに似ている。
私の手にカビが生えるくらいだから、世の中の医療従事者や手袋をつけて仕事に従事している人は大丈夫だろうか?
毎日の手洗い、アルコール消毒で手はガサガサになり、さらに暑くなってきたこの頃でも手袋をつけて仕事をしなければならない人はたくさんいる。私も医療現場で働く一人だが、もっと過酷な状況で働いている人はたくさんいるはずだ。本当に頭が下がる思いだ。
もし、手の皮がめくれてきたり、気になる症状が出たりしたら、病院で検査することをおすすめしたい。皮膚を一部採取し、顕微鏡で検査すれば、カビかどうかはすぐに分かることが多い。ただの手荒れだと思っていたら、実はカビの仕業かもしれない。カビにハンドクリームを塗り込めば、栄養を与えているのと同じでさらに繁殖してしまう。ずーっとカビを手に住まわせることになってしまう。
とにかく今回の私の手のカビの原因は、すべてコロナに結びつけてしまおう。そうでもしないとやっていられない。そして、私の手が治るころには、現実のコロナも収束していることを願いたい。
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