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記事:佐々木 慶(ライティングゼミ・日曜コース)
 
 
私は親友という言葉が好きではない。
ましてや、「私たちは友達だよね?」という言葉にはげんなりする。
気持ちが萎えてしまうのだ。
なんでわざわざ確認しないといけないのか? 確認しないと友達じゃないのか?
と、そう思うのだ。
逆に言うと、「友達」とはそんなことをいちいち確認しなくともいい存在に思えるのだ。
気付いたらそばにいるような。
 
私にも、そんな存在の人がいる。
 
出会いは、大学時代に遡る。
受験に無事合格し、晴れて大学に入学した私。
 
他の大学の例に漏れず、母校にも運動系や文化系など様々なサークルがあった。
その中でも、私が入部したのは在学生や高校生向けに様々なイベントを企画、運営するサークル。
 
私と同じタイミングで入部した新入部員は合わせて6名だった。
その中に、彼(以下、A君)がいた。
 
みんなそれぞれ、特徴のある感じだったが、その中でも同い年のA君は異彩を放っていた。
敬語は使わない。先輩に対しては、「○○ちゃん」呼ばわり。
そして、誰に対しても馴れ馴れしかった。
嫌がられるのでは? そんなことを勝手に心配していたくらいだ。
しかし、それは杞憂に過ぎなかった。
嫌がっている人なんて誰もいなかった。むしろ、とても慕われていた。
 
A君とは、もともとそんなに仲良くはなかったと思う。
彼は、いわゆる陽キャラ。先輩でも初対面の人とも誰とでも仲良くフレンドリーに打ち解けることができる人だった。
対して、私は逆。人見知りが激しくて、話す言葉が浮かばないし、屈託のない笑顔も振りまくことができなかった。
私とは正反対なA君に苦手意識を抱いて、どうしても話しかけることができなかった。
きっとA君から見ても私はさぞかし、お堅い人間に思えたことだろう。
 
そんなA君とはひょんなことから親しくなった。大学1年の11月頃のことだ。
私は、その時一大行動に出ていた。当時、サークル内で気になっていた人に告白したのだ。
結果は見事に惨敗。楽しかった大学生活が一気に真っ暗になったことをよく覚えている。
そして、図らずもA君もその時に同じ体験をしていた。
同じ体験をほぼ同時期にしたわけだから、意気投合しないわけがなかった。
 
それからは、A君とはいろいろなことをやった。
ママチャリで大学からさいたま市まで往復60キロの突発ロードワーク。
菓子パンを買い込んでラー油やコショウなど、どの調味料が合うのか試してみたり。
ただ、海産物が食べたいというだけで、千葉県の端っこに思いつきで行ってみたり。
とにかく楽しかった。
 
そんなA君に私はよく悩みを打ち明けていた。
いろいろなことを話したが、特に多かったのは、サークル内の話、恋愛の話だった。
 
A君なら、きっと悩みを解決してくれる。解決策を教えてくれる。
そんなすがるような気持ちだったのをよく覚えている。
 
しかし、A君は、そんな私の期待を見事に裏切ってきた。
たしかに、話は聞いてくれる。
でも、決して解決策を教えてはくれないのだ。
え、なんで? 仲が良いはずなのに。
俺のこと、あれだけ知っているはずなのに。
 
なんで、何も言ってくれないの?
 
気付いたら、こんな言葉を発していた。
その後のA君の言葉が今でも忘れられない。
 
「俺は聞くだけでいいんだよ。だって、佐々木君自身の中にきっと答えがあるだろうし。」
 
厳しい奴だなと、つくづく思った。
ただ、同時に思った。
 
この人は、私を心から信頼してくれているんだ、と。
私が自ら悩みを解決できるって心から信じてくれているんだ。
そして、その手助けをしてくれることは厭わないんだ、って。
 
それからというもの、私もまずA君の話をとことん聞くようになった。
しばらくしたら、A君も自然と自分の悩みを話してくれるようになった。
そして、彼とはますます仲良くなったのは言うまでもない。
 
大学卒業から、10年が経つ。
私は就職を機に群馬へ、A君は東京近郊にある地元の街に戻った。
昔みたいな頻度で会うことがなくなったし、頻繁に連絡を取り合っているわけでもない。
なのに、時々無性に会いたくなるのだ。話したくなるのだ。
 
A君は私とは、もともと性格も異なっているし、私を決して甘やかしたりしない。
しかし、そばにいる。困ったときに、寄り添う。
一口に友達と言っても、いろいろなタイプがいるだろうが、A君は私にカウンセラーのような存在だ。
 
先日、全国で緊急事態宣言が解除された。
この一ヶ月半という間、皆さんはきっといろいろなことを制限されただろう。
そして、まずこんなことをやってみたいということが浮かんだことだろう。
恋人とのデート、ひとり旅、食べ歩き、職場の同期との飲み会、音楽コンサートへの出席、人によって様々だろう。
私がまずしたいことは、A君に会うことだろうか。
 
厳しくも優しいカウンセリングを受けたいな、そう思う。
 
 
 
 
***
 
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2020-06-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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