メディアグランプリ

ガラクタ救出大作戦


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記事:AZE(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
ででん。
朝起きたら、そこにやつがいた。
ヒビの入った花瓶。
花瓶といっても一輪挿しのような奥ゆかしいサイズではない。
壺と呼んだ方がしっくりくる位の厚かましい大きさだ。
 
この壺みたいな厚かましい花瓶を我が家に持ち込んだ犯人は、奴しかいない。
私は一緒に住んでいるパートナーを叩き起こした。
 
「ちょっと、このでかい花瓶どうしたん」
『ああ、道に捨てられてたから拾ってきた』
 
またか……
 
私の住んでいる国、フランスでは、路上に捨てられた物を拾ってくる人が一定数存在する。
(フランスでは正規の方法で路上に捨てられた物には、ある印がついてあり、その方法で捨てられた時点で誰の所有物でもないので、拾って持って帰ることは違法ではない)
 
私のパートナーもそのうちの1人で、今までベランダに置くテーブルやイスも拾ってきた事がある。
しかし今回はヒビの入った花瓶だ。テーブルやイスのようにそのまま使う事は出来ない。花瓶なんてヒビが入った時点でもう寿命ではないか。そんな使えない物を何故拾ってくるのか。
 
そうまくし立てる私に『まだ使えるから』と、捨てる気が全くない彼。結局私は彼を説得する事に失敗し、そのヒビの入った花瓶はベランダにそのまま放置される事となる。
 
断捨離。ミニマリスト。
〜必要の無いものは手放して、自分が本当に好きだとか、必要だとか思えるものだけに囲まれて暮らしましょう〜
 
数年前からシンプルライフが良しという断捨離文化が広まっている中、時代の逆行ともいえる、人が捨てたものを拾う人たち。
何故なのか。
私はベランダに放置されたヒビのはいった花瓶を眺めながら、ずっと疑問に思っていた。
 
そしてその疑問は、ある日突然答えにたどり着くこととなる。
それは観光で日本からやって来た友人を、パリの蚤の市に連れて行った時だった。
 
蚤の市では、ガラクタにしか見えないものが沢山売られている。
腕の欠けた陶器の人形。
蓋のないポット。
絶対に切れないボロボロのハサミ。
塗装が剥げて、ちょっとオカルトチックなマネキン。
 
あとは捨てるだけだろうと思ってしまうような物が、安い値段で売られ、蚤の市にやってくる人たちは、それらをまるで宝物探しのように目を輝かせながら漁っているのだ。
 
アンティークブローチや、欠けていないお皿とかならまだ分かる。
しかしお役御免となったガラクタを、この人達は一体何に使うんだ。
 
そう心の中で思いながら進んでいると、今度はオウムが入りそうなボロボロの大きな鳥かごを満足げに抱えているおじさんを見かけた。
そのおじさんは満面の笑顔でパートナーであろう奥さんの元に歩み寄っている。一方、奥さんの顔は険しい。
そりゃそうだ。あんな大きな鳥かご、一体どうするんだよ。
私は奥さんに同情しながら、横目でその場の成り行きを観察していた。
すると突然、おじさんが何かを言った後、奥さんの顔がぱぁっと明るくなったのだ。
 
私の位置からでは2人の会話は聞こえない。しかし、奥さんの気が変わった事には間違いない。おじさんの手振りから想像するに、その大きな鳥かごは、どうやら鳥かごとしてではなく、新しい何かとして使われる様だった。
 
あの鳥かごをランプシェードに使うなら良いかも。
2人のやりとりを遠目で見ていた私はふと思いついた。
鳥かごとしてはもう使えないけど、ランプシェードとしてならとても味があって素敵じゃないか。
 
そうか。これだ。
路上に捨てられたものを拾ってくる人も、蚤の市でガラクタを漁る人も、誰かがもう使えないと判断したものを新しい使い方で蘇らせようとしているのか。
 
私には今までこの発想が無かった。
断捨離といって今まで沢山のものを捨ててきた。それが正解だと思っていた。
しかし、その中には、用途さえ変えればまだまだ延命できたものは隠れていたのだ。
「もう使わない=断捨離」に気を取られ、私はその可能性に気づかなかった。
もしかしたら、あのヒビの入った花瓶も見方を変えて寿命を伸ばせば、良いものに化けるかも。
 
私は早速家に帰ってから、ベランダに放置されていたヒビの入った花瓶と向き合った。
この花瓶は、ヒビがはいった期待値ゼロの状態で私たちの元へやってきた。
花瓶としてはお別れするタイミングだろう。
でも、花瓶という枠組みを外して、“大きな入れ物”としてはどうだろうか。
そうすると、色んなアイデアが湧いてくるのだ。
 
傘立てとしてはどうだろう。
ベッドの横に置いて部屋着入れとかはどうかな。
花瓶にしたら水漏れがひどいけど、鉢代わりにしたらまだ使えるかな。
 
ポイントは、わざわざ買うにはお金が惜しいものに変えて、寿命を伸ばしてあげる事だ。
すると、初めて見た時は役立たずにしか見えなかったヒビの入った花瓶が、なんだかとても実用的に見えきて、ワクワクしてきたではないか。
路上に捨てられたものや蚤の市でガラクタを吟味していた人たちは、こんな気持ちだったのか!
 
結局、ヒビの入った花瓶は、今のところ「洗う前にもう一度着れそうな洋服入れ」として、我が家で生まれ変わって活躍してくれている。
今まで行き場がなく部屋の四隅に散乱しがちだった洋服が纏められて、かなり便利なのだ。花瓶として誰かの家からお別れしたヒビの入った入れ物が、今では我が家の必需品になってくれた。
 
もし貴方の周りにも寿命を迎えたものがあれば、すぐに捨てずに一度立ち止まって見てほしい。広い視野で見直すと、それは再び愛着のもてる何かに生まれ変われないだろうか。捨ててしまう前に一度想像を膨らましてみよう。
それはものを“救う”始まりかもしれない。
 
 
 
 
***
 
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2020-07-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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