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1日で2㎏やせた話

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記事:松島香織(ライティング・ゼミ 夏季集中)
 
 
私はこの1カ月で太ってしまった。
 
それが判明したのは、ディズニーランドに遊びに行った日の夜のこと。
 
ディズニーランドの後に泊まったホテルのバスルームに、体重計があった。今日は1日沢山歩いたし、もしかしたら痩せた?くらいの軽い気持ちでのった体重計は、見たことのない数値をたたき出していた。
週1で通っていたパーソナルトレーニングのジムがコロナの影響で閉店となったため、体を動かさなくなり、体重を定期的にきちんと測るといういうことすらしなくなっていた。
それでも、ジムが閉まってからまだわずか1カ月。まさか、この1カ月でこんなにも体重が急増するなんて。
何度体重計に乗っても、信じられない数値は変わらない。
乗る位置をちょっと変えたら、0.1kg減った。
けど、そんなことは救いにもならないほどの数値だった。せっかく久しぶりの夢の国を楽しんだ後なのに、最後にとんだ悪夢が待っていたものだ。
 
しばらくバスルームから出られなくなっていた私だが、夫の声で我に返った。
そうだ、夫にも量ってもらおう。事情を何も話さないまま、とにかく夫にも体重計に乗ってもらった。まずは服をきたまま。夫の顔色が変わる、ついで夫は無言で服を脱ぎ棄て、再度体体重計にのった。
 
「5kgも増えてる」
 
夫の絞り出すような声を聞いて、私は安堵した。この体重計が壊れていることが分かったからだ。夫は、とても5㎏も太ったようには見えない、なのに+5㎏と出たということは、体重計が壊れた以外には考えらえれない。それはすなわち、私も太ってなどいないということだ。
急速に気持ちが明るくなった私は、私の体重も+5㎏になっていたことを夫に話した。夫は、以前に数10kgの大幅なダイエットに成功してからというもの、男性の中では体重にナーバスな方だったので、私のネタ明かしを聞いて、大いにホッとした表情をしていた。
私たちは、「この体重計壊れてるね」言い合いながら、その晩は穏やかな気持ちで眠りについた。
 
翌日、帰宅後に家で量りなおした体重は、1カ月前と比べて、3㎏増えていた。
ホテルの体重計は確かに壊れていたが、私は確実に太っていたのだ。
 
しかし、不思議なことに、私の心は全く荒まなかった。
もちろん、「あちゃー、太っちゃったか」くらいは思った。しかし、あくまで「あちゃー」レベルのもので、最初に+5kgの体重を見たときの、世界を呪うレベルに落ち込んだ気分と比べたら雲泥の差だ。むしろ、「何もしていないのに、1日で2㎏痩せた!ラッキー!」とすら思えた。
 
同じ太ったでも、+5㎏と+3㎏でここまで気分が違うものなのかと、自分のことながら驚いた。最初に見たのが+5kgだったからこそのショック療法的な意味合いも当然あるかもしれないが、+3㎏増えたくらいじゃ、思っていたより体型もサイズも変わらないんだな、と自分と夫を見て冷静に分析できたことが大きい。
私は思春期から常に体重計とにらめっこして過ごす日々を送っていたが、こんな風に前向きに体重の増加をとらえることができたのは初めてだった。
 
最初に乗った体重計が自宅のものでなくて良かった、と思う。
最初に+3㎏という数値を見ていたら、太った!もう嫌だ!とプチパニックからの自暴自棄になり、坂を転げおちるようにますます太ってしまった可能性もある。
 
+3㎏の現実を冷静に受け止めた私は、その後、油断しすぎることも過度に張り詰めることもなく、地道に生活習慣を見直し毎日を過ごしている。増えた3㎏はまだ完全には戻っていない。アラフォーともなると、痩せづらく嫌になる。
日々、少し減っては喜び、増えたといっては落ち込む。それでも、以前と比べて、体重に一喜一憂する気持ちの振れ幅は、確実に少なくなった。
体重=体型ではないという、当たり前すぎるダイエットの基礎知識を、身をもって体験したからだ。
 
体重だけに振り回されるのに慣れっ子になっていた私にとっては、これは大きな変化だった。
体重だけで頭がいっぱいの自分が、体重計から解放されるきっかけを作ったのもまた体重計。なんという皮肉だろうか。
でも、自分を客観視するきっかけをくれたのは、1日で私から離れていった幻の2㎏であり、ホテルにあった壊れた体重計なのである。つくづく、体重計に縁のある人生だ。
 
この増えた3㎏を無事に完全に戻せたら、あのホテルの体重計にぜひお礼を言いたい。その日を楽しみに、今日も私は筋トレをする。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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