後悔するとわかっていても、人はしてしまうもの――ガットショット・ストレート――という物語(連想読書紹介)
記事:西部 直樹(ライティング・ラボ)
あの時、マシュマロを我慢していれば……
我慢さえしていれば、今頃は大成して、好きなだけマシュマロを食べられるようになっていたかもしれない。
あの時、マシュマロを食べなければ……
心理実験の一つにマシュマロテストというものがある。
子どもを実験室に連れて行き、ひとつのマシュマロを目の前におく
子どもはマシュマロが大好きだ。
そこで、実験者はこういうのだ。
これから、私はちょっとこの部屋を出るが、私が帰ってくるまでこのマシュマロを食べなかったら、
ふたつのマシュマロをあげます、と。
実験者が部屋を出ると、子どもは、マシュマロを前にどうするのか。
という実験である。
いわれたとおり我慢する子、こっそりと食べてしまう子、いろいろだ。
そして、心理学者達はこの実験の後、実験に参加した子どもたちを追跡調査する。
何十年かに渡って。
わかったことは、言いつけを守り、食べたいのを我慢した子の方が、総じて成績がよく、成功もしているということ。
我慢とか耐性とか、そういうのがないと、成績も社会的な成功も覚束ないというのだ。
しかし、しかしだ。
ダメといわれると、逆に気になったり、その禁を破ってみたくなったりするものではないか、人というのは。
シロクマの生態のビデオを見せられ、その後「このあと、シロクマのことだけは考えるな」と言い渡されたら、どうしてもシロクマのことを考えてしまうではないですか。
(「シロクマのことだけは考えるな!」植木理恵著 新潮文庫)
開けるなといわれたら、開けてしまいたくなるのが人情というものではないですか。
でも、やるな、ということをやってしまうとどうなるのか。
言いつけを守れない、我慢強くない男の将来などたかがしれている。
そんな、禁を破ってしまった男の物語である。
「ガットショット・ストレート」
レストランの開業を夢見るシェイクは、車泥棒をおかして刑務所へ、有象無象、強烈凶悪な連中の中で、機転を利かせ、暴力的な状況を切り抜けてきた。
そして、シェイクが刑期を終えて出所した時のこと、ロサンゼルスにたどり着いた彼の前に、豪奢なリムジンに乗ったある女性が声をかけてくる。昔シェイクとワケありだった、リトアニア系ギャングの女性ボスだ。
彼女は、出所したばかり、ほぼ無一文のシェイクに、ある仕事を提案する。
一台の車をロサンゼルスからラスヴェガスまで運んで欲しい。届ける先は、ラスヴェガスのギャングのボス。
報酬は2万ドル。
そして、何をということを聞いてはいけない、車のトランクを開けてはいけない。といわれる。
そう、シェイクはどうしたかって、彼が我慢強く、忍耐力があれば、刑務所には入っていないですよ。
昔ワケありだったとはいえ、女ボスはボスになるだけあって冷酷非情だ。
ラスヴェガスのボス、ディック・モビーは残忍無比だ。
彼女は、こういっていた
「ラスヴェガスのディック・モビーだけど。怒らせていい相手じゃないわ」
「わたしも怒らせていい相手じゃないわ」
進むも、帰るもできない状況でシェイクは……
そして、そこには聖遺物の謎も絡んで……。
それはもう、楽しい一作です。
エンターテイメントとは、この本のことをいうのですよ。
紹介した本
・「マシュマロ・テスト:成功する子・しない子」ウォルター・ ミシェル (著), 柴田 裕之 (翻訳) 早川書房
・「シロクマのことだけは考えるな」植木 理恵 (著) 新潮文庫
そして
・「ガットショット・ストレート」ルー・バーニー (著), 細美遙子 (翻訳) イースト・プレス
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