そうだ 天狼院、行こう。
記事:Tomo San(ライティング・ラボ)
あそびで文章を書くようになってから、食事量が減った。文章のことを考える時間が、食べ物のことを考える時間に、とって代わっているからだ。標準体重を5キロ近くオーバーしている私にとって、それは大きなメリットだと思う。
食事以外にも、本や文章についてぼんやり考えている。たとえば、自分の読書における変遷。それは、ピンクのシルクロードのような流れだった。
保育園時代は、母親が小学校の教師だったこともあり、家に絵本はたくさんあった。特に「森おばけ」と「ももいろのきりん」は、私の中のヘビーローテーションで、寝る前に、必ず母親に、拷問のように読ませ続けた。「森おばけ」は絵本というよりハードカーバー本くらいの分厚さで、文字も小さく、いまだに母は「森おばけは、地獄そのもの」と言っている。
小学校の時は、ちゃおとりぼんとなかよしを毎月3冊、必ず買って読んでいた。ちゃおは、ふろくの質(量は少ない。少数精鋭)が、他の2冊と比してダントツに充実していた。一方、なかよしとりぼんは、かわいさと美しさみたいに、どっちかをとることはぜったいにできない、君臨する二大流派だった。ちゃおのふろくを文房具として使うのが、私のひそかなる自慢で、破れにくいクリアケースやポーチなどは、現代のOLさんが購入するような、付録つきの分厚い雑誌と完璧にリンクする魅力だった。田舎の小学校に通っていたこともあり、私しかちゃおを買っていなかったので、人とかぶることも、全くなかった。ちなみに当時は、全プレという制度があって、はがきで応募すると全員にプレゼントされるシステムが確立していた。抽選ではない絶対的な信頼感と、届いたときのちょっとしたがっかり感(写真では立派なポーチでも、実際はうすっぺらな袋だったりする)の混在した制度だった。
中学生の時は、別冊マーガレットと、(表紙がよければ、たまに)別冊フレンドを買っていた。なぜ別冊のほうが面白かったのか、あえて言うならページ数が多く読み切りに達成感があったから。毎週続く連載物は消化不良感があり、私には向いていなかった。
高校生になると、なんとか文庫とかいう、ピンクの背表紙に、恋愛どっぷりで、空白ばっかりの、カギかっこオンパレードな文体を読みふけり、文学作品なんて全く読まなかった。別冊マーガレットやなかよしの漫画家が、イラストをがっつり担当するというあからさまな罠に、まんまとはまっていた10代後半。
大学生の頃は、吉本ばななや江國香織を何度も何度も読んでいた。特に江国香織においては、初期作品はページごとに丸暗記するほど傾倒しており、はっきり言って、気持ち悪かった。セリフを暗記しているから、日常生活で組み込んだりして遊んでおり、当時の彼氏を完全に引かせた。他に、ダヴィンチ系統として宮台真司も読みまくって、当時の思考に響いたので、そのことを熱く語ると、友達にまるごと伝染したことがある。いつのまにかその友達は、キャバクラでバイトしてた。
社会人になってからは、健康本を中心に読んできた。女子力アップ的な本も、かなりの量読んだが、効果はまるでなかった。興味あるテーマについては、見境なく本を集めまくったりもした(例:花魁について。薬膳料理について、等)。最近は、実用書に心惹かれる。なぜなら、恋愛は文庫で読むほど美しいものではないし、江國香織の世界は現実社会には通用しないと学んだから(当然です)。
私の本の変遷は、全体的に乙女チックであり、私自身に幸福と愛とひまつぶしを与えてくれた本ばかり。それを「ピンクのシルクロード」と名付けたが、調べると、実はシルクロードは一本でなく、北へ向かう「草原の道」と、南へ向かう「海の道」があるのだそうだ。
天狼院書店は先月オープンした本屋で、別の友人を連れて2回、自分ひとりで3回行った。足を運ぶ度に、私の中の、新しい本が増えていく。
この世の中の、無数にある本から、選ばれし精鋭が、鮮度よく鎮座されている。まさかの真っ黒な本もある。
まだまだ続く2本のシルクロードを、今後は天狼院書店で、カラフルに染めていきたい。
そうだ 天狼院、行こう。
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