スーパーなリンゴたち
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:Mariko.m(ライティング・ゼミ日曜コース)
2019年10月14日、大型台風19号が日本列島を襲い、各地に莫大な被害をもたらした。
特に長野県は千曲川が氾濫、このニュースはきっと記憶に新しいと思う。
収穫直前のリンゴは暴風雨の被害に合い、木から落下したり、雨風で汚れたり傷がついたり。
各農家で収穫され、倉庫に集められたリンゴ達も千曲川の氾濫により水に浸かって廃棄処分を余儀なくされた。
私はニュースに映し出される映像を見て拳を握り、悔し涙を浮かべた。
台風の直撃の当日、私はまさにこの場所でリンゴ園の収穫の手伝いをする予定だったのだ。
高齢化や後継者不足の農家を救うため、JA(農協)が一般向けの援農ツアーを募集していることを、知る人はまだまだ少ないと思う。
神奈川県に住み、東京23区に通勤する私は、畑仕事とはほぼ無縁の生活をしていた。しかし、ひょんな事から知り合いの田んぼを手伝い、母の趣味の家庭菜園を手伝ううちに、土いじりの楽しさを知るようになった。
それと同時に、食べる物を収穫するまでの苦労や有り難みを改めて知るきっかけにもなった。
話を戻そう。リンゴ畑の援農の話だ。
援農ツアーは、色々心配されたが長野新幹線の復旧の関係もあり、翌々週に延期されることになった。
私達が到着する頃には、廃棄されるリンゴも処分され、リンゴ畑も思った程酷い状態には見えなかった。あの強い風でも、頑張って木にぶら下がってくれた真っ赤なリンゴ達。
嬉しそうに私達を迎えてくれたようにも思えた。
私達が派遣された農園は、傾斜のある小高い丘にあったため、脚立を使わなくてはいけない場所がある。(というか、高い木の枝は脚立必至だ。)
知らなかった事だが、繊細なリンゴを扱う収穫は全て「手作業」になる。
リンゴの「へた」の上の部分は膨らんでいて、リンゴ本体を軽く押さえながら,そこをキュッと一回転させる。
するとポロっとキレイに枝からもぎ取れる。
うまくやらないとヘタが取れてしまい、ヘタ無しリンゴになってしまうのだ。
いくら見た目が最高に美味しそうでも残念ながら、これは店頭に置くような「商品」にはならない。
形が悪いもの、ヘタが落ちた物はジュースやジャムやお菓子等の加工食品という別の道が用意されている。
収穫はまるでオーディション会場のようなものだ。映画の主役は逃しても、エキストラやサブキャラという役回りが与えられる。
もうひとつ、不運により退場させられるリンゴがある。
それはポトリと地面に落ちたリンゴだ。
私は、脚立で収穫中にバランスを崩して籠ごと転がりおちてしまった。運良く頭は打たず、尻もちをついて自力で何とか起き上がれたが、収穫した籠一杯のリンゴがコロコロと坂道を転がり落ちてしまった。これは商品としてアウトだ。
中がクラッシュされ早くパサパサになってしまうらしい。
私は申し訳ない気持ちで一杯になり、農家さんに頼み落ちたリンゴの一部を持ち帰らせてもらった。(味は新鮮なので本当においしかったです!!)
二泊三日の収穫体験だったが、手作業で脚立に登り丁寧な仕事をされている農家さんに頭が下がる思いだった。帰りのバスでは、こんな話を聞いた。
「東京のお店に並ぶのは、百個に一個なんですよ」
え?
正直,私は信じられなかった。
百貨店や高級な贈答用なら分かるが、スーパーで販売する物もその数字なのだろうか?
「強い実以外を切り落とす作業から始まって、これでかなりの実が間引きされます。そのあとは木から落ちたり、鳥に食べられたり、猪に食われり……そうやって最後までたどり着くのは一部なんですよ。(※実は収穫中にも猪の子供であるウリボーが二匹やってきて落ちているリンゴを食べていた。大人猪ではなくてよかった……)
最近は、天敵が動物だけじゃなく、集荷直前に根こそぎ盗んで行く輩もニュースになっていますからね。困ったものです。
そんなわけでスーパーに並ぶのも凄いリンゴ達なんですよ。贈答用や高級専門店は更に凄い倍率ですけどね。まず、種類も違いますし、手間も倍かかります」
私には衝撃だった。リンゴだけじゃない。野菜も生花も様々なものに言える事かもしれない。
何もないところから始まり、たくさんの人の見えない努力で形になっていき、そして最後に私たちの目に留まるステージに立つ。
スーパーに並ぶ色とりどりの季節のフルーツたち。
まだ国産のリンゴの季節には早いけれど、ふと輸入物の小さな赤いジャズリンゴという種類のものを手に取ってみる。
私の手のひらに乗っている小ぶりな赤いリンゴ。
このコもオーディションを勝ち抜いて此処にいる。
スーパースペシャルなリンゴじゃないか☆
私は、今年もまた長野のリンゴ達に会いにゆく。
君達を大切に送り出したいから。
***
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