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普通の大学生が、新卒で国連職員になった


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記事:佐藤由佳子 (ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
昨今、国連を目指す日本人が減っているという。その一方で、国連職員になるために必死に努力しているのに中々チャンスに恵まれない人も多い。
 
日本のごく普通の大学生だった私が、新卒でいきなり国連の正規職員になれたのは、本当に幸運なことだったと思う。
 
国連職員は主に中途採用なので、新卒採用は、おそらく何百人に一人もいないくらい、珍しい。
 
採用通知を受け取った時は、私にとって夢が叶った瞬間だった。
 
中学2年生の時、観光でニューヨークを訪れ、国連ビルの中をめぐるツアーに参加した。様々な国の人たちが一堂に介して働く、その環境に憧れて、こんなところで働きたい!と思ったその時の思いが国連を志すきっかけだった。
 
高校2年生から1年間、ニュージーランドへ交換留学に行き、南米やアジアから来た留学生と出会って国連への夢が再燃し、大学では開発学を専攻した。
大学の恩師が国連職員だったこともあり、ゼミでは様々な開発の分野や国連という組織について学んだ。
 
大学4年生の時に、国連の採用ミッションが来日して、幸運なことに日本から選ばれた3人のうちの一人として、新卒で国連に入ることができた。
 
こうして運良く、タイミングよく、機会に恵まれたことで憧れの国連職員としての第一歩を踏み出した地は、イタリアのローマ。
2020年にノーベル平和賞を受賞した、国連世界食糧計画、通称WFPの本部である。
 
前例がない、全く新しい採用プログラムで採用されたので、上司も戸惑っていた。
若手国連職員といえども、普通は皆中途採用で、新卒はまずいない。
3−5年の職務経験と、修士号を持っている人がJPO(Junior Professional Officer)派遣制度という外務省の採用プロセスを経て国連機関に派遣されるのが、若手職員として国連に入る最短コースなのだ。
したがって、新卒では入ってくる新職員のための研修などなかったし、新しいプログラムなので、先輩もいない。
1年留学したくらいでは、英語もそんなに上手くない。
それなのに、配属された部署は人手不足で、初めから仕事はどんどん降ってきた。
 
入職して3週間後くらいに、産休に行く同僚の仕事の案件を一つ引き継ぐことになった。それが日本円にして約1億円のファンド管理だったのには驚いた。
WFPの国事務所が新しい食料援助のプロジェクトを立ち上げる際の助成金だったのだが、その助成金を目掛けて世界中の国事務所の所長等からメールとプロポーザルが送られてきて、時には電話まで掛かってきた。
新卒で入ったばかりで右も左も分からないのに、所長のような立場にある「偉い人たち」から直接電話なんてきた日には、声だけでなく、受話器を持つ手も震える始末(笑)。
最終的な出資の判断はもちろん上司がするのだが、忙しい人だったので、決済のために時間は取れても、そこまでのやり方を教えてくれる時間はなく、相談もできず、途方に暮れた。
どの様に審査してどこにどれだけ出資するかの判断をするのか、と言うガイドラインも、引き継ぎノート以外にまとまったものがなかった。
出産したばかりの前任者を煩わすこともできず、過去にその仕事をしていた人をファイルから見つけて、片端からメールや電話で質問して、結果として数ヶ月後、このファンド運営のためのガイドラインを作ることができた。
それがすごく評価され、通常最低2年かかるところを1年半でスピード昇進したが、はじめの頃は海に突き落とされて、自分で泳ぎ方を学べ、と言われた様な気分だった。
でももがいていると、泳ぎ方を教えてくれる人とか、浮き輪を投げてくれる人とかが出てきて、いろんな方に助けられながらなんとか泳げる様になって行った。
 
よく入る前の国連のイメージと入ってからの現実のギャップはありますかと聞かれるが、比べられる社会人経験もないから、ギャップを感じることもなかった。
全くオープンに、すべての出来事に真っ向から向かう事しかなかった。あとで、同じ職場の同僚達に、それはおかしいよ、もっと上司を頼るべきだよ、とか言われたけれど、当時は、やれと言われたら、なんとしてでもやる! と思っていたので、ものすごく頑張っていた。
毎日早朝から夜遅くまで、燃え尽き症候群になる一歩手前くらいまでがむしゃらに働いていた。辛い時もあったけど、時には出勤するだけで、思わず笑顔になってしまうくらい、憧れの国連職員として働けることに喜びを感じていた。
 
これはあくまで私個人の経験だけれど、経験がなくても、やる気さえあれば仕事を任せてもらえて、仕事をしながら学び、成長できる機会をたくさん与えてもらった。
 
よく冗談で、ミッションインポッシブルをポッシブルにする仕事が多い、なんてことを言っていたくらい、エピソードには事欠かない。
そしてやればやるほど、成功すればするほど、もっとハードルが上がっていくのはどこの世界も一緒だろう。
おかげですごく成長させてもらって、現在の私があるのも、WFPのおかげ。
世界中、どこに行っても、なんとかなるだろう、そう思えるようになったのも、新卒で国連に入って鍛えられたから。
 
国連職員、楽しいですよ。あなたも挑戦してみませんか?
 
 
 
 
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2020-12-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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