メディアグランプリ

人間はワインと同じだ。〜退屈な仕事人生を送らないために、人生に想像力とワインを〜


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:龍頭 慧(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「どんな就職先を考えてるの?」
「お前は人生で何をしたいの? 強みとか弱みとか見えないよっ」
その日も突っ込みを受けていた。
 
これはかなり昔昔、私が理系の道に進み、研究者としての道を目指していた大学生の頃。
大学院受験に失敗し、所属していた研究室に入れず、途方に暮れた就職活動最中のOB訪問での話。
 
「え、テニスサークルでキャプテンやってたので、その辺りのリーダーシップを……」
「お前、サークルのキャプテンなんて、日本に何人いると思ってんだよ」
「え、では喫茶店でバイトしてた話を……」
 
似たような話しか絞りだせず、口調も小さくなる。
あぁ、何をどうPRしたらよいんだろう。自分の将来に物凄く悩んでいた。
 
親友と呼べる友人ができたサークル活動やバイトは楽しく、充実した日々を送っていた。
それが大学院受験に失敗し、一気に流れが変わった。
 
大学のクラスメイトで、大学院受験に失敗したのは、私、ただ一人。
ちょっと触れないであげておこう、感が漂っていた。ように思えた。
 
サークルの飲み会にも参加しなくなり、大学の友人とは疎遠になった。
自己啓発本を必死に読み漁り、手当たり次第、OB訪問をしてみたけれど、先ほどの状況。
うぅ、こんなはずじゃなかった。
 
現実逃避して、お酒に溺れ、漫画喫茶に籠る日も結構あった。
 
ただ、人生って捨てたもんじゃない。
100人を超えるOB訪問を続ける中、人生の転機となるOB訪問での出会いがあったのだ。
その先輩は、とあるコトバを教えてくれた。
 
ワインは、空と大地と人によって形成されている。
生まれ育った地域の気候、畑のテロノワール、生産者の哲学から、それに紐づくエピソードがある。
この考え方を示す言葉が「天地人」であり、人間も似たようなもんだよ、と。
 
正直ずいぶん昔の話なので、細かくは覚えてないけれど、何かそんな感じのことだった。
たぶん、「神の雫」という漫画で見た話なんだろうと思う。
 
ただ、そんな話を聞いた後、あらためて、自分の小さい頃を思い浮かべた。
そして、自分の「天地人」を振り返ったとき、目の前がパッと晴れた。ように感じた。
 
自分が生まれ育った地域は、親族の繋がりを大事にしていたこと。
お盆とお正月には、親戚が30人くらい自分のうちに集まって、宴会があったこと。
祖父が本家の家長として、その宴会を取り仕切っていたこと。
そして、私が、その流れを継ぐべく、親戚一同から期待されている本家の長男であること。
 
そんなことを思い出した。
 
そういえば、おじいちゃんのように、人を率いる姿がカッコいいなって思ってたんだった。
なんだか、当たり前すぎて忘れていた。
 
あ、だから小学校のクラスでも学級委員として褒められるのが嬉しかったんだ。
あれ、テニスサークルのキャプテンも、何か自分でイベントを主催してたのも、それかっ。
 
それから少しずつ、就職活動への意識が変わり始めた。
何にもないエピソードだと思っていたものが、自分の「天地人」に基づくエピソードだったんだ。
自分の大事にしている価値観が見えてきたことで、心がスッと楽になった。
 
サークルのキャプテンだって、私唯一のエピソードとして話せた。
「大学でテニスサークルのキャプテンなんて、五万といるでしょう」
「そうだね」
「でも、私は生まれ育った時からリーダーになりたかったんです」
「え!? どういうこと?」
 
そんなそこらのキャプテンと同じにしないでくれとばかりに、自信をもって話せた。
 
「ほぼ大喜利じゃないか、その答え」
と言われようとも、実際にそうだったんだ、と思えた。
 
就職活動は無事、順風満帆に進んだ。
そんなこんなで、就職活動は難関の第一希望に無事内定をもらい、現在に至る。
この戦略、海外MBA留学にも昇格試験にも、まま使えたので、かなり実用性があると信じている。
 
そんな私も、時を重ね、OB訪問を受ける側が度々ある。
「ワインは、空と大地と人によって形成されているんだよ」
 
自分が開発したかのように、ドヤ顔で、君のテロワールはなに?と言ってるとか言ってないとか。
 
人間はワインと同じだ。
退屈な仕事人生にならないように、自分の大事にしたいことは明確にしておいた方がよい。
そして、そのヒントになるのはワインと同じく「天地人」なのである。
 
「小さい頃、どんな環境だった?」
「テロワールは?」
「ご両親の教育哲学って聞いたことある?」
 
そんな真面目な話をワインとともに。
 
 
 
 
***
 
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2020-12-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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