発達障害を活かす生き方
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記事:佐藤 謙介(ライティング・ゼミ特講)
あなたは「発達障害」という言葉を聞いたことがあるだろうか。
ずいぶんメジャーな言葉になったので、おそらく聞いたことある方のほうが多いだろう。
発達障害をものすごくざっくり言うと「脳機能の偏りが強い障害」だと思ってもらええればいい。
「脳機能」とは、例えば計算能力や言語理解力、集中力、記憶力と言った思考能力から、社会性やコミュニケーション力、人の気持ちを察する力などの対人関係能力などあらゆる能力のことを指している。
通常であれば、大人になるにつれてこれらの機能は段階的に成長していく。ところが発達障害の特性がある人というのは、一般的な生活を送るうえで何かしらの支障が出るほど、脳機能の発達に偏りがあるのだ。
私は障害者支援の仕事を10年以上行っているが、ここ最近の障害者支援と言えば、発達障害と精神障害の方たちへの支援が中心になっている。
しかし、私はこれからビジネスの世界で生きていこうと考えるのであれば、むしろ「脳機能の偏り」を上手に使わなければ生き残ることが出来ないのではないかと考えている。
その理由について説明してみたい。
ここで少しだけこれまでの日本の産業構造と教育システムについて振り返ってみたい。
日本が高度成長期に経済成長した理由の一つは、高品質な製品を低コストで大量に作ることが出来たからだろう。そのためには一定の能力を持った社員を全国で多数雇用し、生産ラインを安定的に稼働させる必要があった。そこで求められているのは、一定水準以上の能力を有する社員だった。そのため、学校教育では社会に出ても役立つ人材を育成するために日本国民全員に義務教育を行い、均一な能力の底上げをはかってきた。
結果としてはこの取組みは成功を収めたので、日本人の中に「勉強して、良い大学に入り、良い会社に入れば将来は安泰だ」というステレオタイプな成功モデルが植えつけられることとなった。
ところが現在その考えが崩れつつある。安泰だと思っていた大手企業の業績は安定せず、中には倒産に追い込まれたり、外資系企業に買収されるなど、入社してから定年まで一生安定するということはなくなった。
またテクノロジーの進化によって、人が行っていた仕事はAIやロボットに置き換えられるようになり、みんなが出来ることは人間がやる必要が無い時代が来てしまった。
そんな中で生き残るために必要なのは、平均的に何でもできる能力ではなく、この人にしかできない尖った能力なのだ。つまり「自分の強みを持っている人」ということだ。
しかし、自分の強みを活かして仕事を行うということは思った以上に難しい。これまでの日本の教育は強みを伸ばすための教育ではなく、弱みが出来るだけない状態を目指す教育システムで、突出した能力よりも平均的に何でもできる人を優秀だと評価してきたからだ。
その教育を受けてきた中で突然「自分の強みを持て」「他の人と違うことをやれ」と言われても、それは無理な話しだと言える。
そこで注目されるのが発達障害(脳機能の偏り)なのではないかと私は考えている。
発達障害の傾向がある人は、脳機能に偏りがあるため、できることとできないことがかなりはっきりしている。
例えば、極端に忘れ物は多いが行動力は人一倍あるとか、人とうまくコミュニケーションをとることは苦手だがプログラミングは時間を忘れて没頭することが出来るといった特徴である。
そして重要なことは、この脳機能の偏りは誰にでも存在しているということだ。当たり前の話しで我々はロボットではないので、脳の発達度合いは人によって違いがある。ただ、それが今までの教育システムの中ではマイナスが無いように、且つ平均点が高くなるように教育されてきたので、むしろ偏りがあることはダメなこととされてきたのだ。
しかしこれからはこの脳機能の偏りを上手に使うことが必要になってきたのだと私は考えている。
かくいう私もかなり脳機能に偏りがある。
仕事でいえばまずルーティン作業を毎日続けることが出来ない。日々のタスクの中に入っているのに、やり忘れる。2~3日は続けられてもそれ以上になると忘れてしまって続けられないのだ。当初は私も自分が単にだらしない人間だからだと、一生懸命強制しようとした。しかしどう頑張ってもルーティン作業が得意になることはなかった。
一方で難しいことを分かりやすく人に伝えるなどの、抽象的な概念を「見える化」して人に伝えることは得意である。この能力に関しては比較的高いほうだと自負している。
そのため私は自分の仕事の中でルーティン作業はできるだけ人に任せて、自分の得意な企画の仕事やプレゼンテーション、教育という分野に特化して仕事を行うようにしている。
ここで自分の特性を活かして仕事を行うために大事な点が2つある。
① 自分の脳機能の偏りに気づき、強みを徹底的に磨き上げる
② 自分の弱みを補う仕組みを構築する
この2つをできるだけ自分の仕事の中で行うことが出来れば、あなたは職場の中で替えの利かない存在になれる可能性が高まる。
もしあなたが自分にも発達障害の特性があるのではないかと疑うのであれば、もしかしたらそれはあなたが会社の中で、さらには業界の中で抜きんでた存在になるチャンスかもしれない。
とにかく大事な点は、できないことにフォーカスを当てることではなく、むしろ自分の脳機能の偏りを見極め、その偏りを人の役に立つように転嫁する方法を考えることである。
仕事とは「人の役に立つことをすること」である。
あなたの脳機能の偏りを人の役に立つように転嫁することが出来れば、あなたは自分の得意なことで仕事をすることが出来るようになる。つまりはそれが自分の強みで仕事をするということだ。
ぜひあなたも自分の中にある発達障害の特性を見つけてそれを磨いていただきたい。
***
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