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運動音痴コンプレックスを抱え30代後半から激太りした私が、たった3週間で5キロ痩せた理由は「碇シンジ」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:池田マチコ(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
運動が大嫌いだ。
 
小学校の徒競走ではいつもビリ。
 
中学時代には、運動の神に見放された。
男女混合で行うサッカーの授業だった。空高く投げられたボールを見ながら、ゴール近くに向かって全力疾走していた時、クラスで一番体格の良い同級生にぶつかった。
ぼよん、と鈍い衝撃を感じた瞬間、地面に叩きつけられた。これくらいで負けてたまるかと顔を上げたところ、サッカーボールがバコーンと顔面に直撃。高く上げられたボールを男子生徒がキャッチし、ゴール目掛けて力一杯蹴ったボールを顔で受けたのだ。
眼鏡が粉々に割れ、破片が刺さり、流血した顔に土埃がまとわりつく。砂でザラザラと気持ちが悪い。血生臭い。何よりあまりの情けなさに涙が出てくる。悔しい。
「大丈夫?」、「え、痛そう……」などのざわつきを背に、優しい女子たちに支えられて保健室行きとなった。
 
高校時代の棒高跳びでは足が上がらず、他の生徒と同じ高さのポールでは飛べないと先生が判断。体育館の隅っこに私専用の低いポールが用意され、そこでドタンバタンと練習していた(それもうまく飛べない)。
 
とにかく高校までの体育の時間は何をしてもつまらなかった。
屈辱的で苦痛でしかなかった。思春期真っ只中の自尊心はめちゃくちゃだ。
できることなら逃げ出したかったが、「とにかく授業には出席しよう。私は自分の体を体育館に運ぶだけでいい。その後のことは考えるな」と呟き過ごしてきた。
 
大学は天国であった。
1年間だけ体育の必修授業はあったものの、とりあえず出席していれば単位がもらえるものだけを選んだ。この時の解放感と言ったら! 身体能力だけで評価されない、これぞ「オトナの特権」のように思えた。この感覚、運動音痴の方には共感いただけるのではないだろうか。
 
こうして運動に対して屈辱と苦痛の歴史を抱え、生きてきた。
社会人になれば、しんどいことはあるが運動音痴が原因で仕事の評価が下がることはまずない。教育としての運動から解放された「オトナの特権」を最大限いかし、体を動かすことを徹底的に避けてきた。
 
そして悲劇は起こった。
 
30代後半になった頃から、ぶくぶくと太り始めたのだ。
これまで「このくらい食べてもこれ以上は太らない、太ったら1日徹夜で戻せる」という経験上のデータがあったのだが、そのデータに大きな誤差が生じるようになった。食べると食べた分だけ太る。徹夜をすればさらに太る。
 
なぜだ。
一体、私の体に何が起きたのか。
これは一時的なものに違いない。
幻想だ。
 
異変を感じてから半年。
現実を直視できずに過ごし、洋服のサイズはワンサイズアップ。
いよいよこれはマズいかも知れぬと、久しぶりに乗った体重計は未知の数字を示していた。
ここで体重を明らかにするのは差し控えるが、体脂肪42.7% 、BMIは24.1から想像していただきたい。
体脂肪率の目安は40%を超えると肥満体型と言われている。
また、BMIは肥満度を表す指針として国際的に用いられている指数で、日本肥満学会によると、25を超えると肥満。糖尿病、高血圧の生活習慣病リスクが2倍になると言われている。さしずめBMI 24はギリギリ肥満か。国際基準でほぼ肥満。
さらに、職場の健康診断では「肥満の傾向があり、生活習慣病の可能性があります。直ちに改善してください」と言われた。
 
まさか自分が。
世界が認めるほぼ肥満。
今ここで何かしないと二度と戻れなくなる。
一気に崖っぷちに立たされた気分になった。
ここから転げ落ちるのは簡単だ。今と同じ生活を続けたら良い。
どうする自分。
 
「逃げちゃダメだ」
 
これはエヴァンゲリオンの主人公、碇シンジの有名なセリフである。
私の中の碇くんが脳内で叫んでいる。
 
とにかく、今決める。
何か始めよう。
食事制限は精神的負荷が大きいので選択肢から外す。
では、運動音痴ができる運動で、短時間で体を絞れる方法は何か。
ランニング? いや、今、寒いからやめておこう。
縄跳び? それは、効果出るまで時間かかりそう。
では、筋トレ? そうだ、筋トレだ。
 
そうして、筋トレ生活がスタートした。
週2日、1回のトレーニング時間は40分間と決めた。
メニューは、Youtubeやスポーツ用品メーカーが独自にアップしている動画を参考にした。
 
これがなかなかハードである。
動画のレベルは「初級」。しかし、腹筋さえまともにできない。
うつ伏せになり、手の位置を肩の下に置いて、プッシュアップするだけの動作では、腕がプルプルと震えるばかり。動画のように上下に動かすことなどできず、体をその位置でキープするだけで精一杯。スクワットでは、足首が硬いため踵が浮き、爪先立ちになってしまい、足全体を床につけることができないなど、動画では描かれない想定外の事態が起こった。
 
あまりの出来の悪さに再び屈辱と苦痛の黒歴史が蘇る。
辞めてしまいたい。そもそも私にはハードルが高いのだ。たった1回目にして心がダークサイドに侵食されるのを感じた。「もういいや」とダークサイドに身を委ねてしまえば、たちまち体の負荷は消えて、楽になれる。もう辛い思いをしなくていい。
 
しかし、国際的ほぼ肥満のままでいいのか?
このまま健康リスクを抱えて生きるのか。
それは避けたい。
 
たった40分間のトレーニングの間に、何度もダークサイドに落ちそうになる。
汗はだらだら滴り落ち、「うぉぉぉぉぉぉ」と今まで出したことがない声が出る。家族にでさえ見られたくない姿だ。
辛い、苦しい、きつい、できない自分がかっこ悪い、もう辞めたい、辞めたい、辞めたい、けど逃げちゃダメだ!
 
こうして脳内碇シンジをメンターに、精神力のみで週2日を3週間こなした今の結果を皆さんにお伝えしたい。
 
5キロ痩せたのである。
BMIは23になった。
国際基準でも普通体重である。
 
初日にできなかったスクワットも、少しずつできるようになった。
できないままでも続けることで、ある日突然できる瞬間がやってくる。
 
筋トレは運動音痴でも続けられ、結果を出せる運動であった。
おまけに、メンタルも鍛えられ、長年のコンプレックスも乗り越えられそうだ。
 
 
 
 
***

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2020-12-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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