メディアグランプリ

白い一枚の紙が放つ光を見たとき


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:笹谷幸恵(ライテイング・ゼミ平日コース)
 
 
2021年が始まった。
ニュースで、雪が降っている地域が多く、何年ぶりかの寒波が来ているとの事である。
幸いわが街は、晴天が続き太陽の恵みを、ありがたく感じている。
そこには、太陽から差し込む光が、一枚の紙を通し明るく輝いているのである。
 
2020年12月30日、障子貼りをした。
破けた障子を見て、夏の頃から障子張替えを、考えていたのである。
張り替えたのは4,5年前である。障子紙は薄く茶色。
時間をかけて変色してきたので、気にもとめなかったのであるが、さすがに破けて大きな穴があくと、やらなくてはと思い始めていたのである。
予定は10月にやろうと決めていたが、どんどん流され12月30日である。
障子紙貼りを諦めていたが、前日、息子が手伝うと言い出したので、思い切って30日朝から始まった。
近くのスーパーに、開店と同時に障子紙を調達に入った。
「あ! ここだ、ここだ」と障子紙売り場を見つけ物色する。
何通りもの障子紙が売っていた。
昔からあるノリで貼るもの、両面テープで貼るもの、アイロンで貼るもの、紙の種類も一般的な和紙の普通紙から、強化紙、プラスチック障子紙など、障子貼りの素材までが進化していた。
以前よりも、障子貼りコーナーが縮小され、一番奥に追いやられていたのが寂しい。それだけ障子紙を張る人が、少なくなってきているのだろう。
その中から一番安い障子紙を手に取り、紙の強度や張り方の違いなどで値段が違っていると確認をしながら、普通紙で安いものを4本買う。紙の上段には糊、刷毛、障子をはがすための糊が置いてあった。今までは障子紙についている糊を使い、刷毛で糊付けをしていたが、この作業が大変なので今回はチューブ入り糊のステックを4本買ってみた。
ここまでは、材料調達なのでたいしたことはない。
 
今回は、部屋中すべての張替えをする。
10枚の障子を一か所に集合させるので、ここで一番大切なのは障子に名前を書く事である。鉛筆で、どこの部屋の内側外側を書く。鉛筆で書くと、消せるので後が楽である。このひと手間をかけると、貼りあがった後迷子にならず、作業時間が短縮される。
10時過ぎから、庭に障子を出し壁に立て掛け、1枚ずつバケツに水を汲み障子紙を濡らすのである。ここからは冷たい水仕事である。寒い!
10枚をどんどん濡らし少し置いておく。紙は水分を含んで桟から浮き出て、はがしやすくなってくる。その紙を一枚ずつめくるのである。
快感。すーと紙は剥がれてきた。
大きな障子紙に、桟の場所が茶色くなり茶色の格子がでてくる。
長年の糊が変色したことと、桟の木が汚れを吸って、水に濡れたことで茶色の格子ができたのである。時間を感じ、障子紙に感謝をする。
 
ここからは、障子の桟についている汚れと糊を落とす作業である。
息子が、たわしでやればと言う。
それはやってはいけない。
桟は、細い木が組み合わさり出来ているので、強くこすると桟の表面を傷つけてしまうである。濡れた雑巾で優しく桟を拭き上げ、汚れを取るのが一番である。それが終わると乾燥である。かなりの汚れが黒い水となり出てくる。この汚れを見ると、長年の汚れに恐怖を感じる。
 
午前11半。
乾燥している間にお昼を食べる。
裸になった障子の桟が、太陽の光に照らされ、寒そうでもあり恥ずかしそうでもある。
 
ここからは障子を一枚ずつ部屋の中に入れる。
新聞紙をひいた部屋で、床に障子を寝かせての糊付け作業。
二人でやるとアッと言う間に糊付けが終わり、障子紙を張るときも曲がることなく真っすぐに貼ることができる。ステック糊はとても効率が良い。買ってよかったと思いながら作業は進み3時間ですべてが貼りあがる。夕方になっていた。
前かがみの仕事で腰が痛い。
 
最後に、霧吹きに水を入れ、乾いた障子紙に向けて全体に吹き付ける。
ビショビショになるが、乾いた後は紙がピンとはり綺麗な仕上がりになる。
完成である! やっと出来た。
 
すべてが乾いたら、各部屋に設置する。
我が家は物が多いので、完成した障子紙を運ぶにも神経を使う。
張り終えた障子を設置していくのだが、立てかけておいた障子が倒れ、穴が開いてしまったのである。
ぎゃー。ど真ん中に1㎝の穴が……。
ここまで来て何ということだ。今までの苦労はどうなる。
 
考えた。
残った障子紙を、2枚重ねで正方形に切り、折り紙の要領で桜の花びらに切ったのである。折り紙を広げると、直径1,5㎝の桜の花びらが2枚できた。これを破けた障子紙を両方から挟んで桜の花びら完成。胸を撫で下ろす。
 
日本中で、年末に障子貼りをする家庭は、どのくらいいるだろうか。
かなりの確率で減ってきているのは、スーパーの障子紙売り場で確認できた。
障子紙の和紙も日本古来の文化であり、和紙の素晴らしい耐久性に感心させられる。
新築の家で、障子がある家庭はどのくらいだろうと思いながら、年末の大きな作業が終わったのである。
 
次の日も青天。
朝起きると部屋の中が、とても明るい。
障子紙からさす朝日は、白く明るく部屋中に広がっていた。
障子紙貼りの疲れを、飛ばしてくれたのである。
各部屋を周り、太陽光線のありがたさを、余すことなく体で感じる。
破れた1㎝の穴も、きれいな桜の花びらになっていた。
あと5年後位に、障子貼りがやってくるだろう。
その時も大変な仕事であるが、この喜びがあることを思い出しチャレンジしたい。
その時は、寒くない10月ごろに、障子貼りをしたいと、強く思ったのである。
(今回の障子紙貼りは、我が家のやり方で行っています。詳しいことが知りたい方は検索してください)
 
 
 
 
***

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2021-01-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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