お酒も執筆も中毒性あり
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:多田 充(ライティング・ライブ東京会場)
「やっと、ストレスが解消した。週末は気分が良い」
1週間の仕事を終えた後、週末にホッピーを割って飲んでいるといつもこんな気持ちになる。最近、お酒を飲まなくても同じような快感を味わえるようになった。それは書くことである。週末の楽しみはお酒とエッセイを書くことである。
書くこととお酒を飲むことはとても似ている。お酒を飲むと、気が大きくなり、調子に乗って、言いたいことを躊躇なく話してしまう。頭の中に溜まった思いを外に出せ、とても気持ちが良く、あっという間に時が経つ。酔っぱらった後はよく眠れる。翌朝、目を覚ますと言ったことが恥ずかしくなり、どうしようかと思う。
書くことも同じだ。書くことに没頭していると、言いたいことが沢山浮かんでくる。書くことで頭の中のぼんやりした考えや気持ちが整理され、体の中に貯まったものを出すことができる。書くことは誰かに聞いてもらうのと同じような効果があり、とても気持ちが良い。書き進めるうちに、話が載ってくると、あっと言う間に時が経ってしまう。全て書き終わると気分が晴れ、大抵は夜中なので、気持ちよく眠ってしまう。朝、目覚めると、自分の内面をさらけ出したことを振り返り、少し気恥ずかしく思う。
夏目漱石が「坊ちゃん」を書いたのは統合失調症の時だったらしい。漱石がイギリスに国費留学した際、心の病気になり、日本に帰ってきた。国から期待されてイギリスに行ったのに、松山中学で普通の英語教師になった。その時に執筆したのが、坊ちゃんである。坊ちゃんの主人公も教師であり、どこに行っても他の人に見られて監視されているとか、部屋の中に虫が沢山いるとか、誰かが自分の悪口を言っているのが聞こえるという場面があり、これらは妄想、幻視、幻聴は統合失調症の症状と同じである。漱石は坊ちゃんを書き上げた後、精神状態が良くなった。書くことはこのようにポジティブな効果がある。
私も書くと、肩の荷が下りたような気がする。自分の思いや、感情を他の人に聞いてもらっているような気持ちになるのであろう。まるで、薬のような効果がある。お酒もある意味、良薬である。週末はお酒で気持良くなり、しらふで書いて再度、気持ち良くなる。
私は週末だけお酒を飲むことにしている。最初の一杯目が極めて旨い。いくら仕事が忙しくても、最初の一杯でストレスが解消していく。そして、その勢いでどんどんお酒がすすみ、話も弾む。お酒を飲むと大抵の人はよくしゃべる。お酒は依存性があり、飲み始めると習慣になり、なかなか止められない。書くことも同じでずっと書いていると止められなくなりそうである。
今年になってから、ほぼ毎週書きたいことを書いている。習慣化する程までには至っていないが、書かないと週末が少し物足りないような気がする。それはまるで週末にお酒を飲まないとささやかな楽しみを失い、物足りなく感じるのと似ている。
お酒の飲みすぎは良くないが、適量は体に良い。書くことに没頭して考え過ぎると漱石のように神経衰弱になって、体を壊すのかもしれない。文豪で自殺した人も多い。川端康成は自殺した。ほどほどに書く分には、精神的に良いように思う。しかも楽しい。
でも、書いた後の翌朝はいつもちょっと恥ずかしくなる。だから、今後は恥ずかしくならないような文章にしよう。でも、そうすると本音が書けなくなるので、面白くない。恥をしのんで、書いちゃっても良いのではないか。
今はコロナ禍で、なかなか友人と飲みに行く機会もない。それなら、家でしっぽりと書くのが良い。書いたことを発信して、友人とネットで繋がることもできる。書けば書くほど、他に書きたいことが生まれてくる。もう病みつきである。耽溺性がある。
私はお酒を一生止められないと思う。それはそれで飲む喜びがあり、幸せだと思う。だから、書くことも止められなくなるかもしれない。どちらも人生を豊かにしてくれる。飲んでおしゃべりするも、しらふで書くことのも同じようなものである。そろそろ眠くなってきた。今、書いてスッキリしたのだろう。書き過ぎると体に良くないかもしれない。だから、今日はこのぐらいで止めておこう。毎週楽しめるのだから。と、勝手に決めつける。趣味で書くのは麻薬のようなものである。美食家の開高健はお酒を飲みながら書いていた。すでに来週の楽しみができた。来週はワインを傾けながら……。
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