カメラマンはレンズ越しにしか世界を見ていないのか
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:内野真紀(ライティング・ゼミNEO)
「肉眼で見るより綺麗!」という言葉。
美しい写真を見る際に、私はその言葉を褒め言葉としてよく使っていた。
本当にそうだったから。
しかし、そう言い続けているうちに、この言葉はある疑いを私に植え付けた。
「カメラで撮った綺麗な写真は、フィクションでしかないのではないか?」という疑い。
なぜなら、綺麗な写真はあまりにも私が目で見ている世界と異なるからだ。
断然写真の方が美しい。
そしていつの間にか「綺麗な写真に映るものは現実ではない」という考えに至り、美しすぎる写真に幻滅するようになっていった。
「素材を加工して美しくし、それに満足するなんて、プリクラと同じじゃないか……」と。
「カメラマンはレンズ越しにしか世界を見ていないのではないか?」と。
だから、もともとは雑誌に載るような「完璧」な写真が好きだったのに、だんだんと、少し粗く映るフィルム写真やスナップ写真を好むようになっていった。
そんな私が先日、天狼院のフォト散歩に引率のスタッフとして参加することになった。
自分のカメラを持っていないので私はiPhoneで参加。
「こんな私が皆さんと同じようなテンションで……、というか、みなさんを盛り上げることなんてできるのだろうか?」という不安が無いわけでは無かった。
しかし、正直に言うと、久しぶりに写真を撮るのでワクワクもしており、ちょっと複雑な思いでフォト散歩に臨んだ。
今回の参加者の方々のなかには、開催場所の吉祥寺をよくご存知の方が多く、みなさんどんどん進んでいく。
そして進みながらシャッターを切る。
進む。またシャッターを切る。
たまに見せ合う。
カメラをあまり知らない私には、参加者の方々がいろんなアドバイスをくれたり、いい写真スポットを教えてくれたりした。
「こういうレトロな看板をモノクロで撮ると味が出ていいんだよね」
「前にばかり進んでいきがちなんだけど、たまにふと後ろを振り返ると、また違った景色が見えるんだよね」
そう言って見せて頂いた写真は、自分も同じ場所を通ってきたとは思えないような、良い写真だった。
もちろん、写真は綺麗で美しい。
しかし、私はその美しさに何故か幻滅しなかった。
それよりも私が気になったのは、みなさんの目の付け所。
「そんないい場所ありました?! 同じ場所を通ってきたはずのに!」
「よくそこに目をつけましたね! 私も見たはずなのに!」
そう。
私が素通りしてきたもののなかでも、写真の素材になりそうなものを皆さんうまく見つけて撮影しているのだ。
「この光と影のコントラスト、見て!」あ! 確かに、綺麗。
「この電線の影、いいよね」電線に良いも悪いもないと思ってたけど、言われてみればそうだ。
「光で写真を撮るから、太陽がどこから来てどこに沈むのかを見ておくんだよ」太陽の位置なんて気にしたことなかったな……。
「え? その写真どこで撮った? 俺もそこで撮りたかった! 悔しい!」すごい熱量!
カメラマンはレンズ越しにしか世界を見ていない、なんて、完全に間違っていた。
実際は私よりもよっぽど世界を見ている。
道端の草、お店の看板、すれ違う人、電線、太陽、影、空、木……
「写真の素材として面白そうなものを絶対に逃したくない」という皆さんの熱量はびっくりするくらいで、散歩するにも、見るものやその量が私と全然違うことがわかった。
「このハイライトがいいでしょ?」
「逆光って難しいんだけど、カメラの位置のちょっとの違いですっごく綺麗に写るんだ」
「ここ! みて! ここなの!! ちょっとの違いでしょ?」
熱量がすごい。
この一枚に一生懸命になるそのパッション、素晴らしい。
確かに、この写真を見たら興奮する気持ちが私にもよくわかる!
「ええええええ!!! これが、こう写るんですね!? 超綺麗じゃないですか!」
もはや、自分が目で見た世界と写真に映るものが違くたって全然いいような気がした。
何故ならその写真はフィクションではなく、「カメラマンが捉えた世界」なのだから。
それは「私が気づくことのできなかった世界」でもあるのだが。
そういう意味では、この「撮影」という体験は「こう見ることもできるんだ!」という「発見」に近い。
図らずもカメラの面白さに気づいてしまった。
いつの間にか私が『レンズ沼被害者の会』にしれっと参加していたりしても、皆さん歓迎してくださいね。
***
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