猫にもあるんだ! 防災手帳
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:田盛稚佳子(ライティング・ゼミNEO)
休日の前に、私のもとにある一冊の手帳が届いた。
「もしもの時のねこちゃん手帳」なるものだった。
私の友人に、約2年前に知り合ったキャットシッターという猫専門のペットシッターさんがいる。神奈川県在住で、神奈川から東京までカバーしてくれる頼もしい方でもある。
その方が猫専用の災害対策兼用の手帳をリニューアルするというので、興味津々で購入してみた。
以前から、定期的に猫と避難する場合の災害対策について講義を開催したり、飼い主のごく初歩的な質問にも、明快に答えてくださるので非常に助かっている。
ペットを飼ったことがある方はご存知かもしれないが、犬を飼っているお宅同士はわりと知り合い、いわゆる「犬友」ができやすい。なぜなら犬は毎日散歩をする必要があるからである。
通勤途中に、毎日決まった時間に散歩をしている光景を目にする方も多いだろう。
例えばその散歩道が近所の公園だったりすると、人間同士は赤の他人でも犬友ということで、一気に距離が縮まりやすかったりする。
「あら、かわいい! ワンちゃんのお名前、何ですか」
という会話に始まり、他にどういう犬種を飼っているのか、どこの動物病院に通っているか、シャンプーやカットはどこでやっているのかと次から次へと話題が尽きない。
それゆえに、また同じ時間帯に散歩途中に会えば、
「先日、紹介してくださったサロンよかったです! ありがとうございます」
などとまた新たな会話が弾む。
しかし、猫はそうはいかない。
うちを含め、昨今は譲渡される際の条件として「完全室内飼い」が主流となっている。
だから、職場に猫を飼っている人がいることを知っていても、スマホの写真を通してしかその猫を見たことがなく、まして立ち入って聞いていいのかわからなかった。根掘り葉掘り聞きづらいので、猫友さんが増えることがない。
私も飼い始めた5年前はわからないことだらけで、何かあるとすぐに近所の動物病院に問い合わせては、主治医に「はいはい、今日はどうしました? また何かありました?」と軽く呆れられるほどだった。
そんな中、日本が非常事態宣言に入った時期に、ひょんなことから猫の情報交換ができるコミュニティを知った。
私自身あまり人見知りはしないほうだが、さすがにここに入ることに躊躇があった。
今までそんなコミュニティに属したことがないし、もし猫を飼っているベテランの方ばかりで、全然話してもらえなかったらどうしようとか、こんな初歩的な質問を聞いたらバカにされるんじゃないか、という不安が先に立ったからである。
しかし、だからといって毎週のように動物病院に電話やLINEで質問攻撃をするのは、毎日忙しい主治医にもなんだか申し訳ない。
そんなことをぐるぐる考えあぐねているうちに、ふと我に返った。私は自分の体裁のことしか考えていないじゃないか、と。
「うちの子が快適かつ健康に過ごせるために情報を集めたい! この機会に猫友さんを少しでも増やしたい!」という気持ちのほうが、いつの間にか勝っていった。
私には子どもはいないが、守りたいと思う生き物が身近にいると、不思議とやる気が湧いてきたのである。
実際そのコミュニティに入ってみると、私のように飼い主歴が浅い方もおり、私が聞いてみたい質問を代わりに聞いてくれた時には、首がもげるほど納得した。
ちなみに、現在日本での犬と猫の飼育数は、推計で犬が710万匹、猫が894万匹である。
(一般社団法人ペットフード協会調べより)
なんと、圧倒的に猫の飼育数が多いではないか。
犬が多いと思っていたのは、飼育する際に狂犬病注射のために自治体への登録が必要であり、かつ散歩で目にする回数が多いからであって、猫のほうが多いことには正直驚いた。
たしかに私の猫友さんは、多頭飼い(2匹以上飼っている)が多く、私のように1匹だけと言う家はわりと少ない。
さて、早速届いた「もしもの時のねこちゃん手帳」を書き始めて、早々にペンが止まってしまった。
思った以上に書く事項がたくさんあったからだ。
例えば、自分以外に遠方の親戚を記入する欄がある。理由は災害地内では電話が通じなくなる場合を想定して、遠方の親戚も念のため必要だという。そもそも広島の叔母の住所をちゃんと見たことなんてあったっけ? と住所録を引っ張り出して、書き記していく。
飼い猫については、特に事細かに記入する。特徴や性格、病歴の有無、ごはんの回数、フードのメーカー名、トイレは1日に何回程度するかなどは最低でも埋めておく必要がある。
「えーっ!? 私自身が1日に何回トイレに行っているかさえ覚えてないのに、猫のおしっこの回数とか数えてないよー」
と手帳とにらめっこしながら唸ってしまった。
この手帳を書き始めて、私一人では完璧に作成することができないとわかった。
同居している家族からの情報と協力が必要だ。家族会議を近々持つことになりそうである。
1匹でもこれだけ時間がかかるのだから、多頭飼いの方はもっと大変だろう。
しかし、この防災手帳のメリットは手軽に持ち運べる大きさと、最大5匹まで記入できる、
ということだ。それが野口英世さん1枚で手に入るというのはありがたい。
たかが防災手帳、されど防災手帳。
万が一の出来事がやって来ない保証はどこにもない。特に災害は予期せぬものであるからこそ、こうして平常時にまとめておくことがいいのではないだろうか。ただ好きなだけでは救えない小さい命が、すぐ身近にあるからである。
猫のコミュニティをきっかけに、キャットシッターさんと知り合い、防災手帳を持つことになるとは飼い始めた当時は考えもしなかった。勇気を出して一歩を踏み出して本当に良かった。
防災の日を前に、人間だけでなく家族の大切な一員であるペットについても、こういった備えが必要だとキュッと気が引き締まった休日だった。
***
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