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朗読ゼミ~only oneの声を求めて~

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:玉置裕香(ライティング・ライブ福岡会場)

 
 
それまで自分の声を真剣に聞いたことがなかった。
話している声と録音している声がかけ離れていることに、愕然とした。
「もっと、落ち着いた大人の声だと思っていたのに……」
録音した声は幼く、高いのに滑舌の悪い声だった。
こんな声、私じゃない。
現実を受け入れられずにいた。
 
朗読ゼミ、というのを知ったのは3か月前だった。
たまたま飲み会で知り合った女性から、朗読ゼミを2か月間学んだ話を聞く機会があった。宮崎出身の彼女は、学校の先生だった。明るい彼女の性格を表すように、とても聞き取りやすく耳に心地よい話し方をした。
彼女は朗読ゼミを受けて、自分では気づかない訛りがあり、直すのに苦労したと言っていた。そして課題となる物語をどのように読み込み、どう伝えていくかを毎回毎回試行錯誤していく。
指導してくれる先生がとても細かく聞いてくれ、前回とわずかな違いをも見逃さず、指摘してくれる。褒めるのも上手で、もっともっとうまくなりたいと思った、と語ってくれた。
彼女の熱い話を聞いていると、私もやってみたい、と思った。
自分の声で誰かを惹きつけることができたら素敵だな、そう単純に思った。
私は運がよかった。ちょうど空きがあり、すぐに申し込むことができた。
 
初回の講義では、滑舌をよくするために首周りのストレッチの仕方や、練習の仕方、息の使い方などを教えてもらった。まずは滑舌がよくなるための課題からだった。ひたすら、課題を練習し、そのフィードバックを貰う。次回にどんなふうに気をつけると良いかを教えてもらった。
はじめの頃は、練習すればするほどうまく声が出せるようになり、練習するのが楽しかった。朝から首周りをストレッチして、舌がうまく使えるようにベロトレをする。仕事のときも普段の会議で声が通るように、表情や舌の使い方を意識しながらプレゼンを行った。
「最近、すごく声の通りがいいね」
同僚から言われて、練習の効果を実感してうれしかった。
 
朗読も後半戦となり、物語を読む練習に入った。
いくつかある物語のうちの一つを選ばなければならなかった。
かわいらしい物語もあれば、あやしげな雰囲気を醸し出す話など、どれも楽しそうだった。
先生からは、自分に合った、そして目指したい読み方に合わせて課題を選ぶように言われた。
物語としては好きだけど、私の声には合わないものが多かった。
私はかわいらしい物語よりも、「金の輪」というもの悲しい話を選んだ。落ち着いた声が出せるようになりたい、という願望からだった。
 
物語を自分なりに解釈し、どんなスピードで読むか、どこで息継ぎをするか、どこに感情を置くかなどを検討していく。パズルがピタッとはまるように考えていくのは楽しかった。
でも物語の課題を初めて提出したときだった。先生からきつい一言が放たれた。
「声がかすれて苦しそう。無理した声を出さずに、あなたの地声で勝負をしなさい。あなたの声は特徴的なのだから、もっとあなただけにしかできない、only oneの朗読をしなさい」
 
それから、自分の声を模索していった。
課題を提出するたびに、「only oneの読み方」を指摘される。
練習すればするほど、この声じゃない、こんな読み方じゃないという思いが強くなった。
どうすればいいんだろう?
私の声って? どう表現したら、この物語に寄り添えて私だけの読み方になるのだろう?
先生には、ほかの人にはどんな風に聞こえているのだろう?
深い沼にはまったように、答えが見つからなかった。
 
1か月以上、ずっと悩んでいた。
次が最終提出となる直前のフィードバックでもずっと同じことを言われた。先生から、最後の課題提出は今のままでもいいし、まったく雰囲気を変えてもいい、と言われた。
自分の読み方がまだ掴めない私に、諦めとも優しさとも言えるその言葉はきつかった。
そんなときだった。
ある声優さんの動画を見つけた。声質は変わらないのに、声色で悲しみや喜び、怒りを表現し、アニメのキャラクターを瞬時に使い分けていった。
「擬声語でも声色で感情は伝えられるんだ!」目からウロコだった。
そして、この物語の語り手はその時代を映し出す空気みたいな存在、でも主人公ではなく、大人目線でもない。私だけの読み方をするならば、これは座敷童しかいない!
そう思いついた瞬間、私の中で何かがうまくはまり始めた。
 
今、この文章を書きながら、朗読ゼミ最終作品のYouTube発表を聴いている。
たった2ヶ月間だけど、朗読の奥深さや声のプロの凄さを感じることができて良かった。
同じ課題でも朗読する人によってまったく違う作品に聞こえるは面白い。
どの朗読もキラリと光っていて、とても素敵だった。
 
朗読ゼミを通して、一番の収穫は何かと問われたら、私は迷わず答えるだろう。
「自分の声を好きになれたこと」

 
 
 
 
***
 
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2022-08-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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