私が「町田推し」 な理由
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか？賞を取れるのか？プロも通うのか？〜
記事：ロビンソン安代（ライティング・ゼミ6月コース）
夜、息子と、住宅街で犬の散歩をしている時だった。
ササっと私たちの左側で何かが動いた。
とっさに音がした方を見ると、ネコ程の大きさの生き物がまん丸に光る目でこちらを見ていた。
その生き物は、「まずいっ！ 人間だ。 逃げろ！」 と言わんばかりの間ののち、
あっという間に暗闇に消えていった。
尻尾は大きくてしま模様でふさふさだった。
「ん？ た、ぬき……？ タヌキ？」
私たちは目を合わせて、お互い答え合わせをした。
「だよね、タヌキだよね、今の……」
都内なのに住宅地にタヌキも出る。それが私の推し町、東京都町田市だ。
「まちだはまちだ」 という、象徴的な垂れ幕が市民の心に響き、
2019年まで駅前に大きく6年間掲げられていた、不思議な魅力のある街だ。
町田市は東京都南西部にある。南在する神奈川県にめり込む形で三角に突き出ていて、
地図上の見た目は、まるでイタリア半島のようだ。
東西南を神奈川県に囲まれているため、町田は神奈川県の市だと勘違いしている人も多いが、町田市民は「私たちは東京都民である」 という自負が強い。
属性を話題にする時には注意が必要だ。
町田は私に言わせれば、都内で随一「地方出身者フレンドリー」 なベッドタウンだ。
世間的には、ファミリーに昨今人気の引っ越し先だ。
まず町田というと、私鉄小田急線とJR線の駅がある。
「小田急町田駅の乗降客数は、小田急新宿駅の次に多い、第2位なのよ！
JR町田駅の乗降客数と合わせたら、何と 東京都下（区外） 多摩地域で最多！
それに、何気にラーメン店の激戦区でもあるんだよ～。」
と、私はよく知人に自慢する。
田舎出身の私にとっては「新宿に次いで」 とか「ラーメン激戦区」 は自慢のネタになる。
たとえ、へ～という冷めたリアクションのみが返ってきたとしても、自分の街を誇りに
思えることは良いことだ。
また、都内で大切なのは大きな駅へのアクセスの良さだが、町田のこれはとても良い。
思い立ったら電車に乗る。そうすればわずか30分で都心部方面では新宿・渋谷、
神奈川方面ではおしゃれな横浜や江の島へと、出かけられる。
通勤も、東京駅付近の大手町までは階段上り下りなしの乗り換え（これはポイントが高い）
1回、50分で行けるし、疲れたら箱根の温泉街へ1時間（共に快速電車利用） だ。
そもそも、
電車に乗ってお出かけしなくとも、実は町田は駅前で全て事足りる。
町田駅や南町田駅、西地域の多摩境駅周辺はファッションビルに大型スーパー
家電量販店、大型ショッピングモールなんかが、よりどりみどりに存在してくれている。
しかも、車民に嬉しい大型駐車場も併設されている。都内では珍しいほどの広面積でだ。
なんと親切な。
さらに、
約15年前、私たちがここで子育てをしようと決めた大きな理由は
子育て支援が充実していたことだった。
・医療費補助
・移動図書館
・児童館……
現在も様々な子育て支援が行われている。昔から子育て世代に優しい街だ。
近年は市内主要駅周辺にタワーマンションが続々できている。
需要があるのだ。2021年の住民基本台帳報告によると、町田市は
0歳～14歳の転入増加率がなんと全国1位 ！ だそう。
ファミリーに人気という強い「町力」 が数字にも表れている。
それに、
最も栄えている町田駅から車かバスで数十分行けば、
「ここは本当に都内か？」
と思うほどの山林地帯や田畑が現れてくる。
この町は私のような、地方の田舎出身者がノスタルジーに浸れる空間もちゃんと兼ね備えた、
できる奴なのだ。
憧れて東京に出てはきたけれど、
「アスファルトばかりの都心では何か心が乾いてしまって……」
「やっぱり田舎の手つかずの緑が恋しくて……」
という人々は多い。彼らの細まった根っこに養分を与える土壌と余裕が、
町田にはある。何せ逆から読めば、「田の町」 。
田は日本人の心の拠り所。つまり、町田は人々にとって「心の拠り所の町」 なのだ。
（こじつけというなら言ってくれ。）
人口の多い、東京のベッドタウンとしての機能を完璧に網羅しつつ、
町自体も充実していて、包容力もある。素敵じゃないか？
ここに駄目押しもある。町田には東名高速道路の出入口がある。
新幹線が停まる新横浜駅までも、電車で30分かからない。ということは、
全国の太平洋側主要都市や観光地へのアクセスも抜群だと言える。また
町田駅からは、羽田・成田空港へ直通シャトルバスまで出ている。そう、
長期休みの旅行、出張時、帰省時にもその利便性をいかんなく発揮するのだ。
すごくないか？
だが実は、
町田の良さはこうしたハード面だけではない。私が町田の
一番の魅力と感じているのは、それほど優秀なのに、絶妙に「足りない」 ところだ。
東京郊外にベッドタウンは多い。中でも千葉はマリンスポーツが盛んだし、
横浜は海だけでなく、港町として発展してきた歴史や独特なおしゃれ感がある。
埼玉県の大宮や浦和は勉学に強いというイメージがあるし、
同じ東京西部の八王子市は、芸能人のヒロミさんに代表されるように
やんちゃ系のキャラが定着している。それぞれに個性が立っている。
町田にそれらはない。
大した見どころも、ない。
町田には小さな川しかなく、水辺としては弱い。大学が多いので若い人が多く
おしゃれな人も多い。でもたとえ私が実家の田舎で着ていた洋服を着用していても、
全然悪目立ちしない。そんな服の人にも十分な市民権がある。
勉強ができる人も多いが、特段教育熱が高すぎる事もないからプレッシャーはない。
地理的には三角に角ばっているのに、個性としては突き抜け感がなく曲線かつ曖昧だ。
どの分野でも「中くらい」 を維持。だからなじみやすく敷居は無いくらい低い。
ちなみに、隣市である神奈川県相模原市との市境も年々変わる。実にゆるい。
そして常におおらかに人々を包み込む。それが町田なのだ。
あちこちにあるなんとも言えない中途半端さ、ダサさとも呼べるかもしれないもの。
私はそれが愛おしくてたまらない。
何かに突出・確定していない不完全さ、穴ぼこがあるからこその
余裕と懐、全てを受け入れてくれそうな柔らかさがある。
かっこよすぎる人、完璧すぎる人よりも、欠点がある人こそ魅力的で、
強く人を引きつけるのと同じように、
町田はその類まれなる「足りなさ加減」 で、
少なくとも私という人間をがっちり魅了して離さない。
あなたが都会に少し憧れる地方出身者なら、
都会にいながらも何となくほっこり気を抜ける場所にいたいのなら、
子育てしやすい、あるいは便利な町を探しているのなら、
友達がいないなら……
ぜひとも町田へ来てみてほしい。
まずは手始めに町田駅を経由し、バスに20分間のんびり揺られて
「まちだリス園」 と、その向かいの「町田薬師池公園」 を訪れてみてほしい。
その規模感、空気感、人のゆるさと温かさに、
他の場所では得にくい、何とも言えない心地良さを得る事だろう。
町田はあなたを待つ町だ♪ いらっしゃ～い。
＊＊＊
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