メディアグランプリ

荷物の誤配はTwitterで叫べ


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記事:小畑 泉彦(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
あるはずのないダンボール箱がそこにはあった。
 
妻との旅行を前日に控えた夜。帰宅すると自宅マンションのドア前に、某通販サイトのロゴマークが入ったダンボール箱が置かれていた。いわゆる置き配というやつだ。コロナ禍にあって、他人との接触を回避できるということで最近はこの配送方法を選択できるようになった。
 
私は心配性なので置き配は利用しないことにしている。妻も同様なので、自宅にこうしてダンボール箱が置かれていることに違和感を覚えた。箱に貼付されたラベルを見ると他人の住所と名前が記されていた。明らかな誤配である。どうやら隣のマンションに届くべきものだったようだ。部屋番号は同じなので配達人が間違ったのだろう。ちゃんと確認して欲しいものだ。
 
問合せ先の情報がラベルに書かれて無かったので通販サイトのサポートページを確認してみると、どこを探しても誤配に関する情報が見つからない。悩んだ果てに私が取った選択肢は、「このまま置いておく」だった。中身のわからない荷物を自室に保管するのは抵抗があるし、違法に取引されたヤバイ物が入っている可能性もある。
 
きっと注文主が業者に問い合わせるだろう。そこで業者が誤配に気づいて荷物を回収し、無事届けるというシナリオだ。完璧な筋書きではないか。翌朝、いまだ玄関前で鎮座しているダンボール箱に「きっとすぐに回収してくれるさ」と心の中で声をかけ、私と妻は2泊3日の旅に出た。
 
3日後。
 
旅先ではすっかり荷物のことなど忘れていた私たちだが、帰宅して現実に戻された。あってほしくないダンボール箱がそこにはあった。どうやらまだ回収されていないようだ。注文主も旅行中なのだろうか。
 
さすがに何日もこの状態にしておけないし、「あの家は荷物をずっとほったらかしにしてだらしない」とご近所の噂になっては住みにくくなる。私は意を決して隣のマンションに届けることにした。元々置き配なのだから、誰が届けたなんてこの際関係ないだろう。
 
エントランスに入ろうとすると、部屋番号を押して内部から開錠してもらうタイプの自動ドアだった。私はたじろいだ。ここでピンポンと鳴らしてモニター越しに映るのは冴えないおじさんである。宅配業者の服装ならともかく、見ず知らずの他人が謎の段ボールを持って訪ねるシチュエーションは恐怖だろう。少なくとも私なら居留守を決め込む。結局私は自宅に引き返して玄関前にそっと箱を置いた。事態は振り出しに戻ってしまった。
 
やはりこれは業者に対応してもらうべきだと考え直した私は、ネットで誤配時の対応を検索してみた。すると誤配に困っている人の情報が大量にヒットした。世の中は誤配であふれているようだ。
 
結局どうにかして通販サイトのカスタマーサポートに接触するしかなさそうだったが、前述したように誤配に関する情報がサイトに記載されておらず、電話番号も載っていない。なぜ自分のミスでもないのにこんなに時間を費やす必要があるんだ! とイライラを募らせた私は、Twitterでこの感情を吐露することにした。以下のようなツイートである。
 
「●●(通販サイト名)の荷物が届いたんだけど、明らかな誤配。カスタマーサポートのサイトを見ても全然わからない。注文主も困ってるだろうな」
 
すると、投稿したほんの数分後にレスがついた。
 
「●●です。誤配があったとのこと、大変ご迷惑をおかけしております。お手数ですが以下のURLよりお問い合わせいただけますでしょうか。手順は……」
 
まさかの「中の人」からの連絡により、一気に事態は動いた。提示された手順をざっと説明しよう。共有されたURLにアクセスすると、その通販サイトで私自身が過去に注文した商品を閲覧できる画面に移動する。そこで何でもいいので商品を選択して、そこからさらに配送についてカスタマーサービスへ連絡するという流れだ。自分がその通販サイトの会員であることが前提という、実にわかりにくいやり方だった。
 
手間はかかったがついにサポートにコンタクトすることができた。電話口のオペレーターは丁寧にお詫びの言葉を述べ、配達業者と事実確認を取ってくれた。よかった。これであの箱ともおさらばできる。そう安堵しかけたとき、「もし差し支えなければ荷物はそちらで破棄していただけますか?」と聞かれた。注文主が問い合わせてすでに業者から代わりの物を再配達しており、誤配された荷物は用済みだというのだ。
 
破棄すること自体はさほど手間ではない。もし私の欲しい商品が入っていたらそのままいただいてしまおうかな……なんてよからぬ思いを内に秘めながら「わかりました。ちなみに中身は何ですか?」と確認してみた。
 
「ペットフードです」
 
私の淡い期待は裏切られた(我が家にはペットはいない)。問合せに要した時間や荷物を処分する手間など、「骨折り損のくたびれ儲け」とはこのことか。ハッピーエンドとはいいがたいが、こうして事件は決着した。
 
あなたも荷物の誤配があったらあれこれ調べるよりもまずTwitterで発信してみよう。中の人は意外と近くで見てくれているかもしれない。そしてペットフードを切らした人がいたら差し上げるのでご一報を。ただし誤配を避けるため対面での引き渡しを希望したい。
 
 
 
 
***
 
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2022-09-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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