天から何物も与えられた男
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記事:山田THX将治(ライティング・ゼミ)
その美女を見掛けたのは、新年早々の国立競技場のスタンドだった。
ラグビーファンの間では、秩父宮ラグビー場を“宮”国立競技場を“丘”と略する。国立競技場の正式名称が「国立霞ヶ丘競技場」だからだ。
今でもそうだが、ラグビーが行われている宮や丘には、美人の観客が多い。
その時も、女優の賀来千香子さんが来ていた。
小生が見つけた美女は、賀来千香子さんではなくその隣の美人だった。
隣席の友人に
「おい!あそこに腰が抜ける程の美人がいるぞ!!」
と叫んだ。真に、叫びたくなるほどの美人だった。
「どこだ?」
友人は興味津々に聞いてきた。
「あそこに賀来千香子が居るだろ? その隣だよ」
と答えた。すると友人は
「ああ、あの別嬪さんは、平尾のカノジョらしいぜ。なんでも、賀来千香子がモデル時代の仲間だって」
と、あっさり答えた。
小生は急に興冷めし、その日の日本選手権は終始ぼんやり見ていた。
今年の10月20日、平尾誠二氏の訃報が届いた。
平尾誠二氏とは、日本ラグビー界に燦然と輝く至宝ともいうべき存在位だった。
平尾氏は高校時代、テレビドラマ「スクール・ウォーズ」のモデルとなった、全国優勝を果たした。
同志社大学時代は、大学選手権3連覇を達成した。
その間、当時の最年少で日本代表にも選ばれた。
社会人となってからも、日本選手権を7連覇した中心選手だった。
小生が、平尾氏のカノジョを見たのは、その中の一試合だった。
ことわざに
「天は二物を与えず」
とあるが、小生は全く信じていない。
現に、平尾選手の様に、長身で、俊足で、身体能力が高く、大学院まで出られる学力を持ち、一流企業で職を得、その戦績から人々から尊敬を集め、そしてなにより日本人離れした端正な顔立ちを持っている男が存在していたからだ。
いつの平尾選手のプレーを見ながら
「こんなに上手かったら、ラグビーをプレーして楽しいだろうなぁ」
とか
「こいつ、女の子にモテるんだろうなぁ」
などと、羨ましく思ったものだった。
ラグビーファンの間では、今回の訃報を受けてこんな噂がまことしやかに流れた。
“ラグビーの名選手に、早死が多い”
というものだ。
実際、21世紀になってから、宿澤広朗氏(元日本代表監督)、石塚武生氏(元日本代表選手・高校の監督)、上田昭夫氏(慶應義塾大学出身の名選手・ニュースキャスター)といった面々が、50代でその志を断念した。
もし、宿澤さんが存命なら、常務取締役まで登っていたので、日本代表出身で初のメガバンク頭取になっていただろう。
石塚さんが存命なら、東京出身にもかかわらず地方へ赴任していたぐらいだから、もっと日本のラグビーの底辺を広げる活動をしていただろう。
上田さんが存命なら、ニュースキャスターを務めた弁舌で、ラグビー界のスポークスマンとして、一般のファンを増やしていただろう。
平尾氏を含めて、この4名の早死は、単にラグビー界の損失であるばかりでなく、スポーツ界全体の損失だと思うし、何より閉塞感一杯の日本社会に新しい風穴を開けられただろうと思われ、残念でならない。
この誰もが、現在のラグビーブームの礎を築いたといっても過言とはならないだろう。
また、特に、平尾氏と宿澤氏は、ビジネス関係の著作も多く、社会全体の損失ではないかと思ったりする。
神様は、公平なのだろうか。それとも、残酷なのだろうか。
いくつもの才能を授けた平尾誠二氏に、唯一つ、他人並の人生という時間を与えなかったから。
小生より若い者の死は、普段からいいかげんな死生観しか持ち合わせていない小生にも、大きなショックを残した。
もう、いつ自分に死が来るかもしれないのだと、焦りを覚えさせた。
それ程、悲しく寂しく感じられる。
“短くも、全力で人生を駆け抜けた”などと、他人は言うだろ
でも、どんな人にも悔いは残る筈だ。
平尾誠二氏の悔いを考えるとき、途轍もなく大きなものであることが、誰にでも想像出来る筈だ。
多分、残された誰もが一人で背負える様な物ではない筈だ。
これほど大きな喪失感が残るとは、平尾氏自身も知り得なかった筈だ。
平尾誠二氏の訃報を知り小生は、ラガーの端くれとして、また、一人のラグビーファンとして、平尾氏が残した悔いの“万分の一”でも背負えたらと考える。
天から何物も与えられた男、故・平尾誠二氏。
貴殿の人生を、小生が例え一日でも体現できたら、大変な思い出となっただろう。
その人生に「Good Job !」と叫びたいと思う。
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