メディアグランプリ

もしあなたがゾンビ映画をつくれば、きっと天狼院の凄さがわかる


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:菊地功祐(ライティング・ゼミ)

 

「よーい、アクション!」

 

自分が監督するゾンビ映画の撮影は、突貫工事のように猛スピードで撮影が進んでいく。

 

 

今日のタイムリミットは3時間!

ロケ地の施設が閉まるまでに、香盤表の撮影シーンを全て撮り切らなければならない。

 

ホラー映画は雰囲気を作りのため、基本的に夜暗い時でしか撮影ができなかった。そのため撮影隊は夕方までは動けない。

そして、ゾンビ役の人にメイクをしていくので、メイクだけでも1時間以上かかってしまう。

 

映画撮影は時間との戦いだ。

 

 

私は大学時代、自主映画作りに異常にのめり込んでいた。

今思うと、なぜだか不思議だ。

 

浴びるように映画を見て、アホみたいに映画を撮っていたのだ。

 

基本的に大学のサークルで映画を作っていたが、いろんなところに声をかけて人を集めていたりもした。

映画作りは戦争だと思う。

 

一度撮影がスタートしてしまうと、何が何でも撮り終えなくてはならない。

 

途中、お願いしたヒロイン役の人が失踪したり、撮影機材の調子が悪くなったり、雨で撮影ができずにスケジュールがずれたり、思い通りに行ったことがない。トラブルが連発しても、ラストシーンに向けてカメラを回さなければならないのだ。

 

自主映画を1つ作るのにも、多くの人の協力が必要だ。

 

スタッフだけでも、

監督、カメラ、照明、音声、編集といろんな人の協力が欠かせない。

多くの人が関わり、時間をかけて映像を作っている。

 

私は人前でコミュニケーションを取ることが昔から苦手だった。

わりと自分の殻の中に閉じこもってしまう面がある。

それでも、映画を作っている時はそんな自分を忘れられた。

 

子供の頃からスピルバーグの映画が好きで、夢中になって見ていた。

そして、いつか自分で映画を撮ってみたいと思うようになったのだ。

 

大学に入ってから自主映画サークルに飛び込み、浴びるように映画を見て、

映画を撮り続けた。

 

いろんな人と協力しながら、一つの映画を作っていくことが、とにかく楽しかったのだ。

自分が頭の中に描いたイメージを、役者の人たちによって再現されていくのがとにかく楽しかった。

 

大学3年間で6本の自主映画を作ってみた。70分くらいの長編もあった。

仕上がりはとても人に見せられるものじゃなかったと思うが、映画制作について多くのことを学んだ気がする。

 

 

そして、もうすぐ大学生活が終わってしまう3年の終わりに、どうしても撮りたかった映画があった。

 

それはゾンビ映画だった!

 

 

昔からホラー映画が好きで、どうしてもゾンビ映画を撮ってみたかったのだ。

 

自主制作でホラーは難しいと言われている。

 

血糊の準備が大変だ。傷メイクもしなければならない。

暗いところで撮影しないと雰囲気が壊れてしまう。

 

 

まず、血糊とゾンビメイク問題をどうするか?

 

本屋やネットで傷メイクについて調べてみた。

すると、ハロウィーン用の傷メイクで、100均グッズだけで作れる簡単ゾンビメイクを見つけた。

 

それなら、テッシュと血糊、二重のり、アイシャドウで簡単な傷メイクを作ることができる。血糊は赤い食紅とハチミツを混ぜればできるとわかった。

 

早速100円ショップでアイシャドウと二重のり、ハチミツを大量購入した。

レジの人にかなり怪しまれた。

 

ゾンビが着る服はどうする?

 

いろんな人に声をかけて古着を集め、40着ほど用意することにした。

 

 

ゾンビエキストラはどうする?

 

ツイッターや自分の知り合いに声をかけ、なんとか20人集められた。

 

 

 

いざ、撮影だ!

と意気込んで撮影をスタートすると、とんでもないことをはじめてしまったと後悔する。

 

ゾンビメイクに時間がかかり、血糊の後片付けにも時間がかかり、

撮影現場はどんちゃん騒ぎだった。

 

バラまいた血糊も、トイレからモップを持ってきて1時間以上かけて掃除した。

 

各所から「ハチミツ臭い!」とクレームが殺到。

毎回、土下座する勢いで謝り、撮影を続けた。

 

 

 

結局、38分のゾンビ映画を作るのに4ヶ月以上かかってしまった。

 

使用した血糊は約10リットル。

 

スタッフ、演者など総勢40人ちかくの人に協力してもらった。

(あの時は大変ご迷惑をおかけしました……)

 

自分のわがままでいろんな人に迷惑をかけて大変申し訳なく思いながら、

なんとか映画を撮り終えた。

なんど撮影中断になるかと思ったか……

 

壮絶な映画撮影で、くじけそうになっても映画を撮り終えられた理由……

それは会社経営をイメージしたからだと思う。

 

 

映画作りは会社経営に似ている。

監督一人が完璧なイメージを持っていても、スタッフ全員にイメージを共有できてなければ意味がない。

一人ですべてのスケジュール管理やカット割りの構成ができるわけがない。

指示を出してスタッフに動いてもらうのだ。

スタッフの組織がうまく機能していないと、映画撮影がうまく進行できない。

 

 

前回に70分の長編映画を撮って、映画作りにおける組織づくりの大切さを痛感し、カーネギーの「人を動かす」や組織づくりにおけるマネージメントの本を大量に読んで、自分の自主映画制作に組織づくりを取り入れていった。

 

私は、撮影中キャパオーバーしてスタッフ一人一人に指示をしっかりと出せなかったと思う。

その反省もあり、組織づくりを考えて、任せるところはすべてスタッフに任せることにした。

すると信頼するスタッフが、指示がなくても自分から動いてくれるようになった。

そのおかげで壮絶なゾンビ映画撮影を乗り越えることができたのだと思う。

 

 

就職活動中には、いろんな企業を訪れたが、上場しているベンチャー企業ほど、

組織づくりにとても力を入れていると思った。

上司の指示がなくても、一人一人の社員が動けるのだ。

 

ピクサーも一人一人の社員のモチベーションを高め、アニメーション制作における組織づくりを大切にしている。

 

10月からライティング・ゼミに通い始めて、

月に数回、池袋にある天狼院に行くようになった。

演劇もやっているし面白い本屋さんだなと思っていたが、

天狼院に行くたびに感じることがある。

 

それは……

スタッフ一人一人がめちゃくちゃ動けるということだ。

 

店主の三浦さんが演劇をやると言ったら、スタッフが一気に形にしていく。

新しい事業を展開するのも、ものすごいスピード感だ。

 

一人一人のスタッフがとにかく動けるのだ。

組織というものがちゃんと機能している。

 

天狼院、ただの本屋にあらず……

 

東京、福岡、冬には京都にも天狼院ができるが、遠く離れた場所でも、スタッフが動き回って天狼院を盛り上げていくのだろう。

店主の三浦さんは組織づくりのことを相当考えているんだと思う。

 

 

映画や本屋、会社、どんなものを作るにしても、一人では何もできない。

組織というものをしっかりと考えていくことが、ものづくりの肝なんだと思う。

 
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この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2016-11-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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