ふるさとグランプリ

バズる記事を書きたければ、千駄ヶ谷の神社に行けばいい《ふるさとグランプリ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:菊地功祐(ライティング・ゼミ)

「次は千駄ヶ谷〜千駄ヶ谷」

私は10月のとある日、千駄ヶ谷駅のホームに降り立った。

毎朝、通勤ラッシュでごった返している中央線沿いの駅。
千駄ヶ谷は大都会である新宿駅から2駅目だ。
都心にある他の駅のように、人々で溢れかえり、騒がしい場所だと思っていた。

しかし、実際は違っていた。

駅のホームに降り立った瞬間、他の駅と何かが違うと思った。

都会とは信じられないくらい、のんびりしているのだ。

私は昔から都心の電車が苦手だった。

人身事故が多すぎるのだ。
早朝、人身事故が発生して電車が止まったと思ったら、夕方にも事故が発生して
振替輸送を行うことがよくある。

通勤ラッシュ時には、人々が電車の中に溢れかえり、身動きすらとるスペースがない。

ギュウギュウ詰め状態だ。

電車に乗る人々の表情もどこかしら暗い。
毎朝繰り返される日常の中、思考停止しているように感じる。

人々でごった返している通勤電車に乗っていると、
なんだか自分って人間らしく生きてるんだろうか? と思ってしまう。

千駄ヶ谷も、他の中央線沿いの駅のように、どこかしら無機質で、冷たい雰囲気の漂う場所なんだろうなと思っていた。

しかし、全然違っていた。
近くに大都会、新宿があることすら忘れてしまうほど、のんびりとしていて、
心地よい雰囲気が漂う場所だったのだ。

近くには東京体育館があり、周辺は緑に囲まれていて、自然豊かな場所だった。

右手には、新宿の高層ビルが見えるが、このあたりだけは都会の騒がしさを忘れさせてくれる。
マンションの開発で、急速に失われていった昔ながらの日本の姿を、
千駄ヶ谷は残しているような気がした。

私は地図を片手に目的地に向かって歩き出した。
そう、世界的な作家が生まれた、あの地を……

村上春樹。

この小説家の名前を知らない人は、まずいないと思う。
読んだことはなくても、一度ぐらいは名前を聞いたことがあるはずだ。

10月のノーベル賞発表シーズンになると、毎年のように村上春樹ファン
(通称ハルキスト)がある場所に集まって、彼の受賞発表を見守るという
恒例行事が行われている。

その場所とは、千駄ヶ谷にある、とある場所なのだ。

彼は小説家になる前に、千駄ヶ谷でジャズ喫茶を経営していた。
忙しい合間を縫って、気晴らしによく、その場所を訪れていたという。

自身のエッセイの中にも
「僕の文学は千駄ヶ谷のあの場所から生まれた」
と書かれてあった。

中学生の頃から、気付いたらなぜか家に置いてあった「ノルウェイの森」。
文体がきつくて、読むのに時間がかかったが、なんて素晴らしい小説なのだろうと思った。

そこから村上春樹の小説が気になりだし、
気付いたら家の本棚は村上春樹だらけになっていた。

私は小説家、村上春樹を生み出した場所を見てみたいと思ったのだ。

千駄ヶ谷に興味を持った理由はもう一つあった。

新海誠だ。

彼もまた、アニメーション作家として世に出る前に、千駄ヶ谷に住んでいたという。しかも、村上春樹が暮らしていた家のすぐ近くに。

ちなみに映画「君の名は。」の瀧くんが暮らしていたのも千駄ヶ谷駅周辺だ。

サラリーマンをしながら、家で一人アニメーションを自主制作するというハードな生活をしていく中、ふと辛いことがあったら、あの場所を訪れていたんだと思う。

世界的な作家やアニメーション監督が暮らしていた千駄ヶ谷。

そこには、何かクリエイターを刺激する秘密があるのではないのか?
そんな気がしていたのだ。

あの場所に行けば何かクリエイティブな刺激をもらえるかもしれない。
そんな淡い期待を私は抱いていたと思う。

毎年、村上春樹ファンが訪れるという、あの場所を訪れてみた。

村上春樹と新海誠に縁がある場所。

それは千駄ヶ谷にある、とある神社だった。

のどかな雰囲気が漂う境内。
子供達が神社の隣にあるブランコで遊んでいる。

驚いたことに、その日は平日の3時過ぎだったのに、神社の境内には多くの人がいた。
家族連れや、サラリーマンの人。
奥の方には、神社の家主さんが緑豊かな境内を掃除している。

それほど大きくはないが、とても親しみの持てる神社だなと思った。
地域と密着していて、こじんまりとしたコミュニティの役割を果たしている。

境内の入り口には大きな木が一本立っていた。

その木の根元にいると、なぜかとても心が落ち着いた。

そこに座っている間、変に人の目を気にしなくていい。
気取らなくてもいい。

そんな気がして、とても心が落ち着くのだ。

ひょんなことがきっかけで通い始めた天狼院のライティング・ゼミ。
毎週、記事を投稿してアクセス数を競い合うメディアグランプリがある。

これまで、毎週欠かさず投稿してきたが、なかなか上位に行くのは難しい。
(というか、3位以内に入る記事はどれだけ凄いんだよ! と思う)
私はどんなに頑張っても8位以内に入るのがやっとだった。

自分が書いた記事と上位3位以内に入る記事の違いは何か?

何であれほど頑張って書いたのに、上位に入らないのか?
それで、だいぶ悩んだ時期もあった。

この神社の境内にある木の根元に座っていると、ふと思ったことがあった。

自分を大きく見せなくていいんだ。

メディアグランプリで上位に入る記事を毎週見ていくと、
どの記事も、あるがままの自分を大きく見せていない。

どこかしら千駄ヶ谷にある神社のように、読む人々との縁を大事にしていて、
文章に心地よい雰囲気が漂っているように思う。

心に余裕があって、とても親しみが持てるのだ。

文章を使って自分を大きく見せていない。
バズる記事を書ける人は、ただ読者のことを思って、サービスに徹しているのだ。

村上春樹も新海誠の作品も「こんな面白いものを作れるんだぞ!」 
という感じに、決して自分を大きく見せていない。

バズる記事を書こう! と思っても書けるわけではないと思う。

気取らなくていいのだ。

自分を大きく見せず、あるがままに書けば、きっと多くの人にとって、
縁とゆかりのある、親しみを持てる文章になるのではないか?

そんなことを感じた。

今度から、メディアグランプリの記事で迷うことがあったら、
ひとまず千駄ヶ谷にある神社に行こうと思う。

自分を大きく見せなくていい。

気取らなくてもいい。

そんなことを私に教えてくれる。

***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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