迷路のゴールは何？
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記事：まつしたひろみ（ライティング・ゼミ）
「出口はどっち？ また行き止まりだよ」
聞いたところで返事は返ってこない。そりゃそうだ。父だって出口がわからずに、一緒に迷っているのだから。高いところから見下ろして進む方向を確認したはずなのに、目の前は行き止まり。
ゴールになかなかたどり着けず、リタイヤする出口ばかりが目に入る。暑いし足も痛いし、お腹も空いた。
やりたいって自分から言ったのにもう嫌になっていた……。
小学生の頃に行った巨大迷路。
あの時は結局ゴールしたんだっけ？ それともリタイヤしたんだっけ？
先日、従兄弟から婚活パーティーの案内がメッセンジャーで送られてきた。「主催者から頼まれて、時間あったら友達とどう？」って。
そのメッセージを見た瞬間、頭に浮かんだ言葉は「面倒臭い」
会場がちょっと遠くて家から一時間以上かかる場所だったり、男ウケをする服装や化粧を決めたり、初対面の人たちとの会話を考えたり……行きたくない理由を考えれば次から次へと出てくる。とにかく、参加に付随するもの何もかもが面倒臭い。
「ごめん、その日は会社の忘年会があって行けないや」
断った。実は忘年会は流れてしまって、予定が空いているのだが。
いつの頃からか、「婚活」という言葉ができた。そんな言葉ができた頃、結婚適齢期だった私は婚活に励んだ。
コンパがあるといえば参加し、幹事になることもよくあった。コンパでは楽しく飲んで終わってしまうことが多く、お付き合いには発展しなかった。周りの友達に彼氏ができると誘うこともできなくなるし、誘いも無くなってきた。
「本気で結婚したい」と言っていたら、知り合いに結婚相談所への登録を勧められて登録した。戸籍謄本まで提出したので結構本気な相談所だった。お見合い、パーティー、イベント、言われるがまま参加した。午前中に一人、午後から一人とお見合いのダブルヘッダーもした。
その中で３回目か４回目の約束で飲みに行こうってなり、待ち合わせをして「どこに行きましょうか？」と言ったら「インターネットで調べてきたんです」とおもむろにドライブの時に持っていくような地図の本を開いた人がいた。まだスマホではなかったが、すでに携帯でお店を調べる時代だったし、「調べたんなら地図を印刷してきてくれー！」と心の中で叫んでいた。この人と次はなかった。
それからしばらくして仕事が面白くなってきて、月会費を払うだけの日々になり、結婚相談所は退会した。
そもそも婚活してまでなぜ結婚するのだろう？
結婚したら、家事をしなくてはいけない。
現在実家暮らしで、洗濯機に服を放り込んでおけば綺麗にたたまれて置いてあるし、仕事を終えて帰ってくればご飯が用意されている。掃除は自分さえ我慢できれば多少サボっていても問題ない。要するに家事らしい家事はしていない。実家だと親がうるさいから人がいるが、うちの場合は夜遅く帰ってこようが、泊まりでどこかへ出かけようと、居場所さえ明らかにしておけば親に干渉されることもない。いい人はいないの？ と言われることもあったが、最近はぐっと言われる頻度が減った。
結婚したら、自由に使えるお金が少なくなる。
会社員としてそれなりにお給料をいただいているので、今のところ困っていない。相手がいれば顔を伺いお金を使わなくてはいけないかと思うとストレスが溜まりそうだ。老後のことを考えなくはないが、一人で生活するくらいはなんとかなるだろう（と思っている）。
独身でいる今のこの自由な生活を捨てて、結婚するなんて。
しかし、心の奥底の眠っている気持ちに問いかけると「結婚したいよー」と聞こえてくる。
私だって、誰かのことを好きになって、みんなに祝福されて式を挙げ、周りに惜しまれながら寿退社をする。甘い新婚生活を繰り広げ、友達とは旦那との愚痴のようなノロケ話をして、「不妊治療は早めにした方がいいよ！」とか「保育園はどうする？」なんて話もしてみたい。お姑さんとの関係に悩んだり、「子供はまだ？」なんてことも聞かれたい。扶養控除が変わるなんてニュースに釘付けになって、うちはどうだろう？ パートを控えたほうがいいかな？ なんてことも考えてみたい。
泣きたいくらい辛い夜に頼る相手が欲しい。
このまま死ぬまで一度も結婚しないままで終わるのもなんか悔しい。
だからといって、婚活します！ と堂々と宣言するほどの熱量が今はない。
結婚したい？ と聞かれれば、誰かいい人がいれば……くらいの気持ち。現在のベクトルが結婚に向かっていない。
婚活している時はゴールしたくて仕方なくて、でも行き止まりになって進路を変えたらまた行き止まりで諦めたくなる。進むにはエネルギーが必要で、エネルギーが切れてしまうと休憩が必要でちょっとリタイヤゾーンに行きたくなる。今の現在地は？ と俯瞰してみると全然進んでいなくて、また挑戦したくなる。
どうも私は婚活迷路に迷い込んでいるらしい。
迷路はゴールすればいいのだろうか？
婚活におけるゴールは結婚であるだろうが、人生においてはただのチェックポイントでその先もきっと様々な迷路が続き、迷い立ち止まりリタイヤしたくもなるだろう。そしてリタイヤしたところでまた次の迷路が立ちはだかっているのだろう。
いつか父と巨大迷路に挑戦したように、どうせ迷路に迷うなら一人より二人の方が面白い。どんなゴールかは経験しないとわからないから、婚活迷路ではリタイヤではなくてゴールを目指そう。諦めるのはまだ早い。
もう少し婚活迷路は彷徨ってみることにする。
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