じっくり考えることについてじっくり考える本
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:村人F (ライティング実践教室)
言葉を発する前に、じっくり考えていたつもりだった。
LINEで返信するときも2分くらい考えてから投稿するし、SNSの文章も世に出していいか投稿する前に確認する。
こうした行為によって意識的にやっていると思っていた。
それなのに変なことを言ったり、相手からイマイチな反応をもらったりする。
こんな経験が続いていた。
そのせいか、いつの間にか考えることが少なくなった。
脳内に浮かんだことをそのまま口に出すような感じで話すし、Twitterのつぶやきも思いついたまま投稿してしまう。
段々と言葉に対して考える時間が少なくなっていった自覚があった。
この状況で出会った本が『思いつくものではない。考えるものである。言葉の技術』だった。
本書はコピーライターである著者が、キャッチコピーの研修で教えているメソッドをまとめた本だ。
ここには色々な方法論が書いてあるが、一言で表すと以下になる。
「もう一歩深く考えてみよう。そうすれば、人に届く言葉が出てくるから(たぶん)」
つまり、言葉について考えれば考えるほど、いいものが生まれやすいと述べている。
この文を読んだとき、本当かなと思った。
じっくり考えても浮かばなかった経験は多いし、反射的に言ったネタでウケることもある。
だから深く考えれば良いということはないのでは。
そう疑問に思いながら読み進めていた。
しかし、読了して気付いた。
僕は「じっくり考える」ことが何かを、じっくり考えたことがなかったのだ。
例えば、友達について褒める言葉を考えるとする。
見た目とか最近のLINE投稿とかを元にしたネタは5秒くらいで思いつく。
ただ更に素敵な言葉を求めて深く考えたところで、結局浮かばなかった。
しかしこれは、具体的な考え方がわかっていなかったから発生した状況だったのだ。
そして本書には、この道筋が示されている。
1点目は褒める対象について詳細に分析することだ。
そう言われても、良いところがわかっているから褒めたいんだと反論したくなるだろう。
だがこの本を読むと、この理解がどれほど浅いレベルだったかを実感することになる。
ラーメンを褒めるときも「味が濃い」とか「麺が太い」程度の理由探しで終わらないのだ。
「スープは豚骨と魚介系のダシを元にしている」
「小麦は北海道産の良いものを使用している」
「店主の湯切りが上手だからスープが薄まらない」
とにかく、良いところを様々な角度から見つけていくのである。
このように多角的に深く考えたうえで良さを最大限に理解しないと、いい言葉は生まれないだろう。
それが本書の語る理論である。
そしてこの過程で生まれたキャッチコピーは、確かに頭に残る強さを持っていた。
ラジオについて述べた「声だけで面白いやつが、いちばん面白い」
ある化学企業の広告「昨日まで世界になかったものを」
いずれも徹底的な分析によって生まれた文である。
このように道筋に従っていけば、深く考えた分だけ優れた言葉ができるのだ。
こうしてみると本書のメソッドはSNS全盛の今、とても大事なことに思える。
かつてないほど、何も考えずに言葉を発する機会が多いからだ。
Twitterは速報性の強いところだから、1秒でも速く投稿しようとするだろう。
LINEも好きな子ならまだしも、友人程度なら思いついたままの文字を送り付けてしまう。
この具合に、どんどん考えない時代になっているように思う。
そして炎上したり、何気なく言った言葉が相手を傷つけるといった事故が多発するのだ。
これも考えることが少なくなった弊害だろう。
だからこそ、本が言うように深く考えるべきなのだ。
確かに考えることは面倒だし、時間を掛けても良いものが生まれるとは限らない。
だけど、その過程は必ず大切な時間になる。
相手について、本気で考えるからだ。
深く考えれば、いいところがどんどん見つかっていく。
褒めたくて仕方がないほど好きになる。
この道のりには素敵な要素しかないのだ。
そして、ここまで理解したからこそ、本気で考えられる。
本当に伝わる言葉は、この土壌から生み出されていくのだ。
だから僕も、これからはより深く、じっくりと考えていきたい。
好きなことについて、もっと好きになりたいし、良さを伝えたいから。
そのための方法が本書には詰まっている。
誰よりも深く考えている著者を見習って、僕のオリジナルな褒め言葉をたくさん生み出していきたい。
***
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