これから世界史を学ぶ人には、読ませてはいけないかも――世界史の問題児たち《リーディング・ハイ》
記事:西部直樹(リーディング・ライティング講座)
記憶の底に澱んでいるものがある。
ある時ふっと、蘇る。
アバンダン――abandon:断念する、放棄する
赤尾のマメ単の最初に出てきた言葉だ。
赤尾のマメ単とは、旺文社が発行していた英語の単語集のことである。
大学受験の時に、必死に覚えようとした。
アルファベット順に出ていて、Cまで何とかいったような気がするが、覚えきれず、最初からやり直すことを繰り返し、40年経って、覚えているのは、abandonだけである。
あるいは、
ディー・ディア・デム・デン って、なんだっけ。
ドイツ語の冠詞の変化だったと思う。
主格・体格・属格・与格ではなかったか。
大学の時に、第2外国語でドイツ語を取っていたのだ。
残念ながら、覚えているのは、冠詞の変化だけである。
いい国つくろう鎌倉幕府、1192年、というのも時々蘇る。
が、最近の研究では、1192年ではないかもしれない、というではないか。
鎌倉幕府はいつ頃出来たか、はっきりしないらしい。
(こんなに変わった歴史教科書 山本博文ほか 新潮文庫より)
年号がふっと記憶の底から蘇るが、年号だけでは、わからない。
歴史は、年表を眺めるだけでは、モヤモヤと不明なところが残る。
例えば、
幕末から明治維新に掛けての激動期は、人とか事件とか何とかの関係が複雑でわからなかった。
特に、京都で暗闘を繰り広げた新撰組って、なんなのか。
歴史の教科書を見ても、1行あるかないかだし、よくわからん、と思っていた。
沖田総司ばかり、なぜか人気で、なにがいいのだろうと、思っていた。
しかし、ある時、司馬遼太郎の「燃えよ剣」(新潮文庫)を読んだで、霧が晴れるようにわかったのである。
そういうことなのか、と、ポンと膝を打ちたくなるほど。
新撰組は、いかにして出来たのか。
芹沢鴨は、なぜ殺されたのか。
新撰組の末路は、などなど。
歴史は、事件とか事象があるのだけではなく、人がいて、物語がある、ということを実感したのである。
馴染みのある日本史においてすら、そうなのだから、あまり馴染みのない世界史となると、どれもこれもうろ覚え気味である。
何となく覚えていることに
ゲルマン大移動とか、オスマン帝国とか、コロンブスとイザベル女王とか、
単語だけで、なぜ、何を、誰が、どこで、どうした、どのようになんてことは、
覚えていない、というか知らない。
本棚の片隅にある山川の世界史用語集(山川出版社)をぱらぱらとめくっても
今ひとつ、飲み込めないこともある。
例えば、クレオパトラだ。
クレオパトラって、美人で有名だけれど、何者だったのだろう。
彼女の鼻が少し低かったら、歴史は変わっていた、といわれるけど、それはどういうことなのだろう。
クレオパトラのことを知りたい!
映画を見るというのも手だな。
エリザベス・テーラー主演の3時間を超える大作もある。
だが、もう少し、気軽に、ざっくりと知りたい。
と、思っていたところに、この本が転がり込んできた。
天狼院書店のスタジオ天狼院お披露目パーティで、頂いた。
パーティの余興で本の交換会があり、その交換本としてこの本を頂いた。
読んで一読氷解、というか、破顔一笑、というよりは、抱腹絶倒であった。
世界史に名を残す「問題児(クズ)」たち、6人に焦点をあて、4コマ漫画風に展開する。
クレオパトラって、ざっくりとこんな人生だったのか、今度映画をじっくりと見てみたい。
ニュートンって、林檎が落ちるのをみて、万有引力の法則を発見したわけではなかったのか。そして、思いの外とんでもない人だったんだ。
いやはや、天才は……。
イザベル女王は、なんかいい人だったのかも知れない、とか。
わたしが読んでいると、小学生の娘も読み出した。
小学校ではまだ世界史は教わっていない。
でも、漫画だから、面白がって読んでいる。
世界史に触れた時、彼女は、この本のことを思い出すのだろうか。
17世紀の清教徒革命って、1641年からだけど、背景には、あんなことがあったからね。
とか。
ああ、でも、それだと、歴史上の人物は全部問題児(クズ)だと思ってしまうかも。
読ませない方がいいかな……。
改めて、歴史って面白いですね。
続刊を望む!
紹介した本
「歴史系倉庫 世界史の問題児(クズ)たち」 まんが亀 PHP研究所
「こんなに変わった歴史教科書」 山本博文ほか 新潮文庫
「燃えよ剣」 司馬遼太郎 新潮文庫
「世界史用語集」 山川出版社
映画
「クレオパトラ」監督 ジョーゼフ・L・マンキーウィッツ 主演 エリザベス・テーラ
………
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