チーム天狼院

【「好き」の代わりに贈るとしたらどんな本?】「あなたと幽霊が見たいです」と言って、この本をそっと手渡したい。《リーディング・ハイ》


 

記事:山本海鈴(チーム天狼院)

 

その昔、夏目漱石は言った。

「月が綺麗ですね」

I love you, の訳だ。

告白ひとつ取っても、世界各国、文化や思想も違えば、さまざまな伝え方があるものだ。

 

さて、ここは本屋である。

天狼院書店スタッフとして働く一員として、共通言語が「本」であることが多い。

「こういう時にさ、あの本、読みたくなるよね〜」
「超分かる〜!」

なんていう会話をすることが、けっこうある。
もはや、本そのものが「言語」なのだ。

 

そこで、考えてみた。

「好き」の代わりに「本」を渡すとしたら、どんな本?

もし、そう訊かれたとしたら、真っ先に出てくる本がある。
ひとつだけ、これしかない! と思う本が。

それは、暗闇に差し込んできた一筋の光のような本だった。

 

何をやっても上手くいかない。
明日が見えない。

鬱屈とした想いを抱えていたときだった。
ぶらぶら本屋を訪れ、棚を眺めていると、ふと、この本が目に入った。

装丁には、金色のイチョウ並木を、子供が駆けていくようすが描かれていた。

理由は分からない。
ただ、中身もよく分からないまま大事にその本を抱え、レジに向かった。

 

開いてみると、それは、5つの短編が入った小説集だった。

それぞれ、主人公もストーリーもバラバラ。
だが皆、人生の中でも、大きな出来事に直面している登場人物たちだった。

なんとなく想いを寄せていた人が、留学に行ってしまうことを急に告げられた者。
毒物混入事件に巻き込まれ、日常の歯車が少しずつ狂っていってしまった者。
遠距離の婚約者を訪れるとそこにはなんと恋人がおり、結婚破棄になった者……

おどろいた。
それぞれ大きな転機に直面したあとも、主人公たちは、叫ばず、暴れず、取り乱さず、普通に生きていっているように見えたのだ。普通に日常を生きようと、努めていた。
そこが、妙にリアルだった。

しかし、「普通」を努めようとしても、どこかでほころびは出てきてしまう。

コップから水が溢れ出すように、主人公たちは、苦しみを絞り出す。

でもそこで、世界一周旅行に行ったりなんかしない。自分探しの旅に出たりなんかしない。
あくまでも日常の延長線上で、何かに気づいていく。
そのきっかけを、誰かが与えてくれることもあれば、自分で気づいていくこともあった。

最後のページをめくり終えると、私は、がっくりとうなだれた。
そのまま空を見て、しばらくぼうっとしてしまった。

ため息が漏れた。

読み終えて、こんなに多幸感あふれる気持ちになる本が、これまであっただろうか?

表紙に描かれている、金色に光り輝くイチョウ並木が、脳裏から離れなかった。

 

それからというもの、事あるごとに、私はこの本を開く。

なかなか寝付けない日の夜。
枕元の明かりをつけ、ゆっくり服用すると、眠りにも効く。

ジェットコースターのように劇的な展開があるわけではない。
静かに、けど確実に、ある日突然、転機は訪れる。
それでも日常は続く。

そこから、どう生きるのか?
苦しみも抱えながら受け入れ、背筋を伸ばして生きていく主人公たちに、心を打たれる。
一つひとつのお話が、心のビタミンになる。

 

この本を読み終え、最後のページを閉じた瞬間だった。
なぜだか、はっきりと確信したことがある。

もし今、明日が見えない、真っ暗闇の深いトンネルの中にいたとしても。
いつかきっと、「ああ、あんな想いをしたのも、全部ぜんぶこの時のためだったんだな」と思える日が来るのだ、と。

 

中でも群を抜いて、そう思える話がある。
収録されている冒頭の一作がそれだ。

 

もし、「好き」の代わりに「本」を贈るとしたら?

「あなたと幽霊が見たいです」

そう言って、そっと手渡したい。

それくらい、大事な本だ。

この本が、心に優しく光を照らしてくれるに違いないのだ。

 

よしもとばなな『デッドエンドの思い出』

 
 

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