アイドルメンター
*この記事は、「絶対麗度ライティング」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事:izmy(絶対麗度ライティング)
「素敵なウェディング写真、SNSで公開しちゃおうかな。」
いたずらな気持ちになったエイプリルフール。
花柄スカートのゆるふわ巻き髪で迎える新年度。
そんなふわふわした気持ちは、出勤して間もなく割れてしまった。
今まで起きたことがないくらいの量でトラブルが発生。この後一週間は次々とトラブルに巻き込まれたのだった。
これをきっかけに、心の奥底で抑えていたものが蠢き出した。
これって、会社や仕事から「やめろ」と言われている天のお告げなのではないか?
転職への気持ちに拍車をかけるときと同じ状況がやってきている。
周囲が先に昇進したことについて、文章だけでなく実態として突きつけられる。
押さえ込んでいたはずの気持ちが溢れかえって胸がいっぱいになる。
それでも、美しさを保つためのことを考えた。
自分の気持ちを押し殺して笑顔になれたら10ポイントを自分にあげるゲームを昨夜思いついた。
「よし、がんばるぞ!」
と思ったのも束の間。
仕事の負の連鎖は止まらず全くポイントを稼げなかった。早々にゲームオーバー。
むしろ悲壮感と不幸感を大放出、イライラは最高潮に達して、とにかくブサイクだった。
それでも、やるべき仕事はやりぬいた。
女としては最悪でも、社会人としてはグッジョブ。
こんなに引きずるのは、私にとっては見逃せない何か大事な心の訴えなのかもしれない。
だけど、自分の心になんと声をかけてあげれば良いか分からない。
桜満開の時期。
母と日本三大桜巡りをした。
桜も美しく、心も穏やかになる。
美味しいものを食べて元気になる。
帰り道。
母が世間話のように仕事の不満を口にした。
「自分は評価されない、とふて腐れて全然働きが改善しない人がいてね」
感情センサーに触れた。
自分と重ね合わせてしまって、私も少しイライラしながらウジウジと話した。
「だったらはっきり上司になぜ昇進しなかったか聞けばいいじゃん!!!あんたが一番納得してないじゃん!」
母の春雷が轟く。
楽しい旅の時間に水を差してしまったなと反省しつつ、優しい言葉をかけてくれてもいいじゃん、と甘えた気分にもなる。
しかし、この世知辛さが目覚ましとなった。
いや、理由は聞かずとも情けなくなるほど分かっているのだよ。
会社の要件に自分が合っていない。それに対して自分はどうするか、なのだ。
本棚に向かった。
クラスで三番目くらいにかわいい子たちが集まるグループというコンセプトのAKB48が好きで、元メンバーでいまやバラエティ女王の指原莉乃さん著書「逆転力〜ピンチを待て〜」を手に取る。
次のシングルレコード曲を歌うメンバーをファンからの得票で選抜する総選挙。
人気が順位で明確に表れる過酷なイベント。
ここで選抜入りを期待していた指原さんは、選抜を逃してしまった。
「人生で一番悔しかった」という。
「悔しさをバネにしてがんばる」ということもなく、気持ちは沈んでいた。
とにかく、ふて腐れていた。
今の私と同じだ。
そこで指原さんはどうしたか。
「自分がそんな人間だと分かっているからこそ、『悔しい』と感じたことは、すぐ忘れなきゃダメなんです。気持ちを切り替えて『悔しさ』をなかったことにしなきゃいけない。」
私も「忘れる」ことにした。
落ち着いた気持ちで考えてみると、職場における相対評価の要件の大半は学歴・年齢といった今の自分ではどうすることもできないことで、自分の良さを自分の刹那的な感情で潰してはいけないと感じるようになった。
十年前に「逆転力」を手にして読了した時は、「彼女のような発想にはなれないな~。すごいな。」と思った。
ところが、自分や周りの変化で揺れ動いたとき、気づくと本を開き、「自分とは違う発想を持っていて、復活劇を遂げた指原さんならどうしていた?」を探しにいっている。
努力が報われるかどうかも分からない、相対評価の極みを生き抜くアイドルの言葉。
メンターのように、迷ったときに新たな考え方を教えてくれて、勇気づけてくれる。
感情の変化はお天気とよく例えられる。まったくその通りだった。
日記を振り返ると、人には見せられないようなパンドラの箱の記録は一か月のうちのほんの四日。台風のようだった。
どしゃぶりや強風のときに、わざわざ外に出て自分の身体をさらさない。
カフェであったかいものでも飲みながら嵐が過ぎ去るのを待つように、心地よい空間で穏やかに過ごす。
秘めフォトの撮影、ヨガ、ピラティス、旅行、親しい人との会話、推し活、新しい学びなど、心地よく楽しい時間もこの4月にはたくさんあったのだ。あったかい時間たちに感謝。
再び雨雲がやってきたら、何か雨宿り場所をつくって、過ぎ去ったらまた一歩踏み出そう。
「忘れる」ことは、私を守り愛するための積極的な選択だ。
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この記事は、天狼院書店の「絶対麗度ライティング」にご参加の方が書いたものです。
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