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グアテマラの夜はドキドキ、朝はコケコッコー


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:堀内真弓(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
夜中に突然、部屋のドアをガチャガチャと開ける音で目覚めた。
「え!?」
寝ぼけた頭で、ここはどこ? 誰が開けようとしているの? 一瞬で思考が駆け巡る。
 
成田空港を出発したのは、ちょうど6日前。
初めてのグアテマラ旅行は、妹の友達のチエちゃんとの二人旅。語学留学をしている妹に会いに来たのだ。
 
今までは3人一部屋だったけど、今夜はプライベートの時間も作ろうということで、1人づつの部屋に泊まっているんだった。
 
グアテマラといえばコーヒーくらいしか思い浮かばなかったけれど、南米じゃなくて中米だって初めて知ったし、マヤ遺跡ツアーでは、実際にピラミッドに登ったりもした。
エジプトのピラミッドとはまた違くて、三角のてっぺんが平になっていてさらに塔が立っているようで面白い。
虫歯の痛みで顎に包帯を巻いたように見える「歯痛文字」は、テレビの特集で観たままだった。
 
アルマジロの肉を食べたり、甘くない黒豆やバナナを食べてカルチャーショックを受けたり。
 
観光客に寄ってくる子どもから、名前入りのボールペンを買わされたり。
この子が1番商売上手だった。買うと言ってないのに、簡単な英語とジェスチャーで私の名前と好きな色の糸を聞き出すと、慣れた手つきで黒とピンクの糸をボールペンにくるくると巻きつけていく。すると、ピンクの糸で名前が表れた。あまりの手際の良さに感動し、思わず買ってしまったっけ。
 
泊まったホテルは、大通りにある4階建てで、部屋は屋上にL字型に並んでいた。
屋上は、この国が歴史上スペイン領だったこともあり、パティオ風の広場のようなスペースになっていて、テーブルと椅子がいくつか置いてあった。そして、隅の方に共用のトイレが3つほどある。
部屋はベッドと小さなテーブルがあるだけ。奥に小窓があって、覗くと隣のおうちの庭が見える。放し飼いにされている鶏と、赤い花を付けた大きな木が印象的だった。
私たちは3部屋並んで予約しており、めいめいに好きな部屋を選び、夕食の後は自由に時間を過ごした。
 
結局、部屋のドアは開けられることなく、何度かガチャガチャと開けようとしたようだが、ダメなのが分かるとどこかに行ってしまった。ホッとしたのも束の間、もしやと考えた。
 
隣の妹たちは大丈夫だろうか?
 
グアテマラの治安も考えて、安すぎるホテルは選ばなかったのだが、まさかのことを考えて再びパニックになった。
 
鍵を閉め忘れて、部屋に入られたりしてはいないだろうか? 事件に巻き込まれていないだろうか。老婆心で、心配し出すと眠れなくなってしまった。
 
無事かどうか、確認してみよう。
それが考えに考えてたどり着いた答えだった。
危険かもしれない、いや、そしたら妹たちはもっと危険な目に遭っているかもしれない。
勇気を出して行ってみるしかない。
 
外に人がいないのを、ドアの隣の曇りガラスで出来た窓で確認した。
そっとドアを開ける。左右を見ると人はいない。
私の部屋の右隣が二部屋並んで妹たちだ。
 
一部屋づつ確認していく。
隣のドアにゆっくり近付き、鍵穴から中を見る。
実は古いドアなので、鍵穴から小さく中が見えるのだ。
 
大丈夫、チエちゃんがベットで寝ているのが見えた。
次はお隣の妹の部屋。ゆっくり近付き確認したが、こちらもちゃんとベッドで寝ている。
 
良かった! 無事だ!
自分の部屋に戻り、感謝の祈りを捧げて再び眠りについた。
 
翌朝、トイレに起きると、外ではすでに妹たちがテーブルの椅子に座っていたので、合流した。
 
なにやら昨夜の話をしているようだった。
私は、自分がパニックになった昨夜の事件を思い出して、少し興奮気味に「自分の部屋のドアを開けられそうになったが、変な人は来なかったか」尋ねた。
 
チエちゃんが申し訳なさそうに、
「それ私かも! 夜トイレに行った帰り、部屋を間違えて隣の部屋のドアを開けそうになったんです。でも開かなくて、間違ったことに気づいて部屋に戻ったんですけど、それからしばらくしたら、自分の部屋のガラスに人が映って中をのぞいているみたいで、怖かったんです」
 
妹も、「私の部屋にも来たよ、外からドアの音が聞こえて起きちゃったんだけど、その後だったから怖かったよ」
 
ん? 私が皆さんを怖がらせてしまった? 
そして、部屋を間違えて私のドアをガチャガチャしたのはチエちゃん?
 
お互いがお互いを怖がらせてしまったようだ。
昨夜の恐怖を吹き飛ばすかのように、一斉に私たちは大笑いした。
まったく、勘違いもいいところだ。コントみたいな滑稽さに、何度も思い出し笑いをしてしまった。もちろん、無事だからこそ笑えるのだが。
 
2年後に再び訪れようとは夢にも思わない清々しいグアテマラの朝、隣の家からコケコッコーと鶏が鳴いた。
 
 
 
 
***
 
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