責を被るという愛。再婚して、私はもう一人じゃなくなった
＊この記事は、「絶対麗度ライティング」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事：皐月（絶対麗度ライティング）
「責を被るから」
その言葉に、思わず涙が出た。
人生には、どうしても一人で背負わなきゃいけないと錯覚してしまう場面がある。
子どもの進路、親の介護、自分の体調、仕事、そしてお金のこと――
誰かのせいじゃない。けれど、いつの間にか「私がやらなきゃ」「私しかいない」と、無言の圧力が肩にのしかかってくる。
そんな毎日に、私は慣れてしまっていた。
苦しいことも、泣きたい夜も、もう「そういうもんだ」と諦めていた。
けれど、再婚して、そんな“一人で背負う日々”に、そっと終止符が打たれた。
夫となった人は、派手なことは言わない。
口下手で、でも嘘をつかない。
約束は守るし、私の顔色をじっと見て、無言で湯を沸かす。
私が沈んでいると、何も言わずに手を握る。
ある日、そんな彼が、ぽつりと言ったのだ。
「もう一人で頑張らんでいい。責を被るために、俺はここにおるけん」
私はその時、ようやく「再婚」という言葉の本当の意味を知った気がした。
再婚とは、ただもう一度籍を入れることじゃない。
過去に傷ついた心を、誰かと一緒に“抱きしめ直す”こと。
人生の“負”や“責任”すら、分け合おうとする愛が、そこにあった。
ひとりでやらなきゃと思っていた時期。
私はアドレナリンで動いていた。
寝る時間も削って、誰かのため、何かのために、走り続けていた。
夜、眠れなかった。
静けさが怖くて、テレビをつけっぱなしにしていた。
酒に頼り、睡眠薬に頼り、それでも目覚めるたびに、世界がグラグラしていた。
「大丈夫です」と言い続けて、
笑って、回して、受け入れて。
気づいたら、自分の感情にフタをしていた。
でも、今は違う。
彼の存在が、私の中の「無理しなきゃ」を、少しずつ、ほどいてくれている。
「今日は眠れたよ」と言える日が、増えてきた。
「手伝おうか？」って言われて、遠慮せず「うん」と言えるようになった。
それだけで、どれだけ心が軽くなるか。
無理しない選択ができるって、
こんなに穏やかで、こんなに尊いことだったんだと、ようやく気づいた。
ふと思う。
「眠る」という行為ひとつとっても、
本当に安心できる場所がなければ、
人は熟睡なんてできないんだろうなと。
だから――
心からぐっすりと眠れる日が来るとしたら、
それは、あなたの隣だと思う。
笑いながら「おやすみ」と言って、
背中を向けても安心して目を閉じられる、そんな夜が来たら、
私はようやく、本当の意味で「生きている」って言える気がする。
再婚は、人生の“再出発”ではなく、
「私はもう一人じゃない」と再確認するための通過点だったのかもしれない。
愛すること。
寄り添うこと。
背負いすぎた荷物を、少しずつ預けていいんだと知ること。
それは、過去をなかったことにするんじゃない。
過去ごと包み直して、「それでも、今日も一緒に生きよう」と言ってくれる人がいるということ。
最後に、一言だけ。
今、ちょっと幸せかも。
＊＊＊
この記事は、天狼院書店の「絶対麗度ライティング」にご参加の方が書いたものです。
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