「からっぽ」にされた、ライティング
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【8月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:松下広美(ライティング・ゼミ日曜コース)
「今日は早く帰れるかな……」
いつもより早く帰れる日だ。
ほんとうなら残業せずに、定時で帰りたい。
遅いシフトの人に任せて「じゃ、帰るねー」と言って、会社を出たい。
でも現実は違うだろう。
いつものように残業して、少し遅い時間なのに渋滞にハマる。
早番だからいつもよりは、早く帰ることができる。
とりあえず、水分補給でもしてくるか。
職場は衛生管理上、飲食が禁止なのでお茶を飲むにも別室に行かなければならない。
手を洗い、別室へ移動する。
お茶を飲みながら、携帯をチェックする。
携帯を仕事中は持ち歩かないので、お茶を飲みに行くときとか、トイレに行くときなどにチラッと見る。
「やった!」
おもわずガッツポーズをしていた。
会社だったことを思い出し、後ろを振り返る。
よかった、誰もいなかった。
Facebookを開くと、ライティングのフィードバックがされていた。
ライティング・ゼミを昨年の12月から受けている。
読まれる文章の書き方を教えてくれる。
申し込んだきっかけは「勢い」だった。
なんとなく、毎日が面白くなくて。
そして、よく遊んでいた友達が昇進をして仕事が忙しくなり遊んでもらえなくなって時間ができた。
そう、ちょうどライティングに申し込んだ日も、暇を持て余していた。
休日なのにやることもなく、家の居間のソファーでゴロゴロしていた。
テレビを流し見しながら、携帯ゲームをしていた。
ゲームにも飽きてきて、Facebookを流し見していた。
平日の昼間に友達の投稿もあるわけがなく、ぼんやりと携帯の画面を見ていた。
「12月開講 人生を変えるライティング教室」
来月から、か。
申し込んでみるか。
ちょっとした趣味のつもりだった。
仕事はそれなりに忙しいけど、休日の暇つぶしになればいいかなと思った。
文章を書く勉強をしています、ってなんだか、かっこいいし。
コツを教えてもらって、書けるようになっちゃって、「才能がありますねえ」なんて言われちゃったらどうしよう! などとバカなことも考えていた。
ほんとうにバカだ。
12月から書き始めて、なんとか毎週、書き続けている。
書けば書くほど、できるようになる。
そう思っていた。
現実は、書けば書くほど、自分に文章の才能なんてこれっぽっちもないってことがわかった。
書けば書くほど、書けなくなっている。
6月から、何を血迷ったか、プロゼミの受講も始めた。
それからは、更に書けなくなっている。
文字を連ねているだけで、面白くない。
最初の頃は、自分を良く魅せるような文章を書いていた。
ただ、魅せていたのはメッキだった。
書けば書くほど、魅せるためのメッキが剥がれていた。
剥がれていくメッキが、記事になっていた。
鎧のようにまとっていたメッキが剥がれおちてしまうと、ほんとうの自分を見つめることになった。
「タテマエ」ではなく「ホンネ」を引き出す作業。
出てくるものは、綺麗なものではなかった。
ヘドロのような、できればフタをしておきたかったようなものが溢れ出る。
目を背けてきたものが、次から次へと出てくる。
書けなくなっていたのは、書きたくなかったモノが出てきたからだった。
私はこんなことが書きたいんじゃない。
もっとヘラヘラした、サラっとした記事が書きたいのに……。
それでも毎週の記事を書くために、強引にヘドロをかき出していった。
そうやって、なんとか記事として投稿できたところに、フィードバックがくる。
OKをもらい、嬉しくなる。
「とてもよかったです」
と、フィードバックをもらい、ガッツポーズをした。
よかった、認められた。
ほんとうの自分を拒否されたくなくて、鎧を着込んでいった。
鎧だと思っていたモノはメッキで、簡単に剥がれていった。
そして出てきた「ほんとうの部分」が、認められる。
才能なんてものは、あるわけないし、なくてもいい。
私はただ、ここに居ることを見てほしかった。
承認されたかっただけ、なのだ。
そして、認めたくはないが、更にわかったことがある。
「……書けない」
昨日、ライティング・ゼミの2期目の最終講義が終わった後、記事を書こうとパソコンに向かっていた。
2時間ほど画面を見つめていたのだが、一文字も書けなかった。
「ほんとうの自分」は、「からっぽ」だった。
ライティングで、どう人生を変えていくか。
「ほんとうの自分」が出てきて、自分探しを始めるようになった。
何を考え、何を思い、何を願うか。
でも、考えても考えても、からっぽなのだ。
仕事のプレゼンで使いたい、だとか、人とのコミュニケーションで使いたい、だとか、タテマエはいくらでも出てくる。
今さらタテマエで飾ったところで、結局メッキとなってしまう。
ライティングで何がしたいか、半年以上経った今でも答えが出ていない。
この先に何があるのか、全く見えていない。
ただ、先が見えている人生より、見えていないところを走る方が面白い。
そう考えている自分がいる。
これから出会う、新しいことを自分の中に入れるために、「からっぽ」であることに気付けてよかったと思っている。
からっぽになって、容量が増えたはずなので、バージョンアップできるはずだ。
「あの記事、面白かったです!」
からっぽな今の私には、その言葉が何より嬉しい。
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