最高の美容液はスーパーにあり
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【8月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:REI(ライティング・ゼミ 日曜コース)
最高の美容液はいったいどこにあるのだろう?
乾燥、吹き出物、シミ、日焼け
最も恐ろしい4大トラブル
若い頃は素手で弾き飛ばせたこれらも年齢を重ねるごとに対処するためのツールが必要となってくる。
あの頃は良かったと若さを憂いても無駄なこと。流れる月日に怯えるよりも建設的に対処をしよう。
そう考えた私はお金をかけ化粧品のグレードアップを開始した。
ビタミンC、コラーゲン、ホワイトニング
リキッド、パウダー、コンシーラー
並ぶ横文字と並ぶボトル。
あっという間に私の部屋には大小様々なボトルが並び、時に冷蔵庫の一部までを占拠した。
浸透させるまで待って次を使う。
顔に塗り重ねられていく美容液
美容とはこうも手のかかるものか?
かかる時間とかさむ美容費に比例するように美しくなる肌とはいかないのが残念なところ。
しかし美容とは日々の積み重ね。そう信じて高い美容液を買い続けていた。
そんな日々が数ヶ月続いたある日、出勤前に鏡を見て思わず声が出た。「顔が疲れ切っている!」高い美容液を使いはじめる前よりもクマが目立ちカサカサと感想し肌のコンディションが悪いことに驚愕した。
年齢を重ねる毎に求められる責任、仕事の重圧、関係部門や後輩との調整などふりかかってくる仕事に追われる日々の疲れが見事に顔に刻まれていた。
「こうしてこのまま年老いていくのかな」諦めの感情も芽生えた。
そんな疲れた私にこの頃親密な関係の相手が出来た。
残業帰りの私を笑顔で温かく出迎えてくれる。
毎日、手を替え品を替えいろんな料理でもてなしてくれる。
明るい明かりを灯して夜の寂しさを癒してくれる。
そんな存在。コンビニエンストア。
その頃の私にとっては心の拠り所でもあった。
残業を終え帰宅する頃には最寄りのスーパーは既に閉店。家に帰って料理をする気力もない私はどっぷりとコンビニエンスストアと蜜月の関係を築いていった。
美容代にプラスしてかかるコンビニの食費代、ボトルだけでなくプラスチック容器のゴミの山。
ゴミの日にはせっせとゴミ出しに追われる生活。
今思えば顔だけでなく生活も荒れて朽ち果てていた。
そんな時、知り合いの女性達が作っていた常備菜を目にする。
作り置きしておけばアレンジすることかでき日々簡単に料理ができるとのこと。
主婦でもある彼女達が活き活きと楽しそうに常備菜について語る姿を見ながらも私は内心冷やかだった。
「そうは言っても作るのに手間がかかるし。みんなみたいに料理上手じゃないし」
最初はおよび腰だったがある時、ものは試しと思い立ち作ってみた。
常備菜の調理手順は簡単に説明すると以下の通り
1.お鍋の底に塩を薄く敷きつめる
2.キノコ、玉葱、人参を火の通りやすい大きさに切り、順に鍋に重ねて入れる。
3.重ねた野菜の上に塩を薄く振りかけ、「美味しくなぁれ!」 と声を掛けた後
蓋をして火をつけ、あとは待つだけ。
簡単な3ステップ。最後の「美味しくなぁれ!」が最も重要な工程なのだと言う。
しかし最初の挑戦は焦げ臭い匂いが部屋に充満する文字通りほろ苦いものとなった。
焦げた野菜を鍋のそこから削り取りながら、「やっぱり私に料理は無理だ」と心が折れそうになったが食べられる上の部分を口に入れるとこれまで味わったことのない野菜の旨味と甘味を感じた。
「これくらいの事で諦めてどうする」
最初の挑戦こそ失敗に終わったが2回目からは弱火でじっくり煮込むことを心がけたことにより美味しい野菜の常備菜が姿を現した。
そのまま食べてもよし。お味噌汁にしてもよし。炒め物にも、丼物にも万能な常備菜。
常備菜作りは日曜の夜の定例の儀式となった。
新しい週の始まりと共にこれを使って何を作ろうか? と思いを巡らす日々はコンビニ容器だらけのカサカサとした部屋と乾いた心に潤いを与えた。
常備菜のある生活を3ヶ月ほど続けた頃、私の部屋のゴミの中からコンビニ容器が一切消えた。
あれほど無くてはならないと思っていたコンビニの料理よりも自分で作った料理が美味しく思えてきた。
それと同時に久々に会う人から「肌のハリツヤが良くなった。どうしたの?」と聞かれることが増えた。
言われてみれば気になっていた毎年の冬場の乾燥とは無縁の肌になっていた。高い美容液で補わなくても自分の力で保湿できるようになったのだ。
自然と体重も落ちてきた。常備菜生活を始める前と比較し3ヶ月で3キロ、その後も自然と落ちていき、軽度肥満のカテゴライズから標準体型へ変化した。
まさに「食べた物で身体は作られる」を体感した。
これ以上に大きな変化は心にもたらされた。
コンビニ生活で「料理もできない乾ききった女」だと自分のことを自虐的に捉えていたが、「常備菜を作ることができるちゃんとした女性」だと自分のことを認められるようになり、苦手だった料理や家事も楽しくなった。
数万円をかけても得られなかった肌と心の潤いは意外な形で手に入れることができた。
私が心の底から欲して毎月数万円のお金を支払い探し求めた最高の美容液はなんとスーパーにあった。しかもわずか数百円で。
最高の美容液はスーパーにあり。なぜならそこは身体を作る食材の宝庫だから。
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