チーム天狼院

20デニールの女


記事:前岡舞呂花(チーム天狼院)
 
 
「おしゃれはがまんだからね」
とは、中学の頃、お洒落な女の子が会話の中で教えてくれたこと。
彼女は、夏でも暑かろうにブーツを履き、冬でも寒かろうにアウターの下に半袖を着ているような人でした。眉毛を細くして生活指導の先生に怒られるのを耐えるまでも、彼女にとっては我慢の一環だったのかもしれません。
どこかのモデルの受け売りだったのでしょうか、その後も別の機会で聞いたことがあるような言葉ですが、当時の私は「お洒落をするために何かを我慢する」ということが無かった。というか、そもそもお洒落に対する関心が薄かったので、その価値観の違いに「ほほう」と唸ったものです。
 
22歳になった今でも、私は決してお洒落な人間ではありません。
自分にどんな服が似合うのかすら摸索している段階です。
ここ数年を思い返すと、やたらと髪を明るくしたり短くしたり、付き合う恋人に影響されて系統を変えてみたりといろいろ迷走してきたような気もしますが、そろそろ大学も卒業ということで、友人からのアドバイスやファッション誌のつまみ見などをして周囲の価値観を盗みながら、大人な女性スタイルを確立しようと奮闘しているところです。
奮闘しながら、最近私にも、これが「おしゃれはがまん」の本質ではないかと感じる事案が出てきました。
 
「おしゃれはがまん」の本質。
それは、「気温10度で20デニール(黒)」にあると、私は思います。
「デニール」にクエスチョンマークが浮かぶ男性は多いかもしれませんが、女性にとっては常用語。デニールとは、タイツの単位です。さらに言えばタイツの糸の太さのことらしいです。デニール数が大きければ大きいほど、厚みがあり暖かいタイツということになります。120デニールとかになると極暖ヒートテックぐらいの厚さになるんじゃないですかね。
もっともっと言ってしまえば、タイツとは一般的に30デニール以上のものを指すらしく、それ以下のものはストッキング、という区分になるらしいです。ほほう。だから、上に挙げた20デニールは、ストッキングということになります。
気温10度とは、記事を書いている本日12月25日の福岡市の気温です。25日にもなるとクリスマス感は薄くなり、その後ろに迫る年の瀬感のほうがよっぽど前に出ている感じがしますね。年末。九州といえどもなかなか寒い。そりゃあストッキングだって無いよりかはマシだけど、そもそも防寒のために身に付けるものじゃない。夏だろうが履きますもんね、フォーマルな的な場では。
 
それでも女性は気温10度の中20デニールを履きます。これ以上寒くなると体感的に本格的に厳しい予感がします。昨日も街で見かけました。ひざ上のスカートで「あの人20デニールだろうな」っていう薄さのタイツ履いてる人。とか言いつつ私も、友人と街を徘徊しながら履いてました、20デニール。色は黒一択です。ベージュだったら寒さを我慢する理由が5分の4ぐらい無くなってしまうので。
もっと暖かいタイツはたくさんあるのに、敢えてそれを選ぶ。
そうさせる引力が、20デニール(黒)にはあるのです。
その魅力は何といってもあの透け感。糸が細いので肌が透けるのです。正面から見たときに、足を覆う黒が、端に行くほど濃くグラデーションになります。いわゆるチラリズム、というものなのでしょうか。それが、女性らしさを醸し出している気がするのです。そういえば高校時代の友人も制服に黒いストッキングを合わせていました。それを見て少しどきどきしたことを思い出すと、なんだか今でも胸がちりちりします。今になって思うと、彼女は早々に分かっていたのでしょう。確信犯だったんですね。
ついでに足の引き締め効果もあったりするのですが、
20デニール(黒)の魅力は、なんといってもその女性らしさ。
身に付けていると、自分が女性だと認識させてくれるアイテムであるということに尽きると思うのです。
寒くても少し我慢して身に付けている、という自意識も含めてです。
 
私自身、今まで女性らしいアイテムからは遠ざかっていました。
ピンクは、似合わない。
ハンドバッグを持つと、そわそわする。
ヒール、よりもスニーカー。
スカート、よりもパンツスタイル。
女性らしいアイテムとして浮かぶものは、ことごとく私が身に付けるにはハードルが高いと感じていました。
それは、なんとなく、キャラクター的に似合わないような気がしていたからです。
見かねたのか「私が見立ててあげる」と世話を焼いてくれる友人が出てきました。
着せ替え人形のごとく服をあてがわれながら気付きました。
スカート姿の自分も見れるな、と。
もちろん友人のセンスもあったと思います。
私の好みでないフリフリのスカート等はさすがに持ってきませんでした。
でも、着せ替え人形にどんな服を着せてもいいように、
私に、というか誰にでも、どんな服を着せても形にはなって、
あとはそれに合った髪型とか、メイクとか、
自分の裁量でもっともっと似合わせることができるのです。
 
なんだ、女性らしいアイテム、身に付けられるのか、私。
 
それならば。
女性を楽しみたいと思いました。
女性らしい服を着てみたい。
その手引きとして、私がお手軽に購入できる20デニール(黒)はぴったりだったのです。
自分の女性らしさをお手軽に肯定してくれるこのアイテムが、私は気に入っています。
たまたま最近がこういう気分なのかもしれませんが。
 
こういう気分が高まって、最近は秘めフォト欲も高まっています。
天狼院書店の「秘めフォト」とは、
店長兼プロカメラマンの三浦さんのフォトイベントです。
女性限定なのですが。
きっと、自分を好きになれる写真を撮ってもらえるはず。
というか、今の私を撮ってもらいたい。
そこは、自分らしさと女性らしさを肯定させてくれる場所だから。
 
 
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