セミナージプシー
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:布村さわ子(ライティングゼミ日曜コース)
こんなに沢山ある中から、どれを選べばいいのだろう? 5年前の春、初めてコーチングの
セミナーの受講を思いつき、ネットで探し始めた時の戸惑いだった。費用が出来るだけ
安い事、自宅から電車を使って30分以内で行ける所、評判がいい講師など、いろいろな条件を絞り、ようやく1つの講座を決めた。無謀にも、無料体験などにも参加せず、急かされるように夏期集中講座への申し込みをした事を覚えている。
その頃は、家庭で大きなトラブルがあり、自暴自棄になっていた。自分の心の立て直しが必要だと焦っていたし、パート勤めしかしていなかったので、資格をとって、自分で
もっと稼ぎたかった。だから、結構な額だったけど、支払いにためらいはなかった。これが、
その後のセミナージプシー生活の始まりになるなんて、その時は思ってもいなかった。
きっと、自己啓発系のセミナーを受けようと思う人は、最初の一歩を踏み出すのに、すごく戸惑うと思う。ネットでもリアルでも、溢れんばかりの情報の海。何を頼りに、どう選べばいいか、途方にくれる。でも、やろうと決心したなら、自分の直観や何かを基準に、選ぶしかない。競馬みたいに。
週末を中心に、どこかでいつも開催されている。開催されている場所に足を運び、見学するだけでもいいし、体験も出来る。実際にお金をかけてもいいし、かけなくてもいい。どの場所に行くか、どの時間帯に参加するか、どの位のお金をかけるか、どの情報を信じ、どう行動するかは、自分次第。一緒に行った人や、その時、同じ場所や時間を共有した人達の影響も大きい。ただ、一度、その世界に足を踏み入れたら、もう、知らなかった時の自分には戻れない。生きていくために、絶対に必要な事でもないのに。
結局、最初に受けたコーチングの講座は、基礎レベルで、その上の3つのレベルがあり、各々のレベルの講座は、それなりに高額だったが、自分がビジネスを始めれば、この投資分は回収できると思い、すべてのレベルを受講した。
では、今、それをビジネスにしているか? 答えは、ノー。心を扱う事が怖くて、他人の人生を変える可能性に自信を持てなくて、何も出来ないまま、今に至っている。それどころか、もっと、自分に向いた何かがあるはずと、自己啓発系も含め、他のいろいろな講座やセミナー、資格を探し、受講するセミナージプシーになってしまった。コーチングでの挫折の裏返しだったかもしれない。
日本では、まだ認知度が低く、これから広がって行きそうな面白そうな資格・講座、そう、お金を生み出しそうなもの。こういう所に目がくらむと、どんどんそういう情報が集まる。今は、SNSでも、ひっきりなしに情報が流れ、しかも、講座に参加する度に、参加者と名刺交換などをして、お友達の輪は広がり、その人達経由の講座情報が、目白押し。後は、お金と時間がどこまで続くかという感じになっていった。
競馬で言えば、馬券を買い漁って、ギャンブルにはまっていく感覚。最初は、競馬新聞を抱えている人を、別世界の人って眺めていたのに、新聞情報が気になり、レースの見方も、変わってくる。こうして、競馬にのめり込む人って多いのだろうと予想がつく。
競馬場は、今やファミリーの憩いの場でもあり、馬女スポットも人気の場所だ。ギャンブル性と誰でも楽しめる娯楽性がミックスされ、期間限定のイベントも多い。こういう数々の仕掛けで、一度でも競馬場に足を踏み入れた人に、また、来たいと思わせるのだろう。
資格を伴う講座やセミナーも同じ。特に女性には、口当たりのいいものが多く、自己満足を得られる仕掛けが多い。普段の生活では耳に出来ないほめ言葉、自分に関心を持ってくれる真摯な講師やスタッフの瞳、清潔で心地よい会場、何より、自分の輝く未来がこれから始まるかもという期待感の演出。プログラムの中にさしはさまれる参加型のワークは、競馬のレースと同じ。短い時間だけど、緊張感があり、何かの結果がついてくる。私が受講生をやめられなくなったのは、低い自己肯定感を受講する事で一時的にでも高めたかったのかもしれない。
昨年、いくら受講生を続けても、自分が変り、何か行動を起こさない限り、自分の人生は、今のままの繰り返しだと、痛い目に遭って、ようやく気が付いた。講師や受講生仲間からの、
甘いお誘いに、うっかりのってしまうと、お金も時間も浪費して、うまく利用されるのだと。
自己啓発のセミナーも、競馬も、女性に優しく、ひょっとしたら、お金もついてくるかもと、何も考えずに始めてしまうと、その後の人生が狂ってしまう事もある。自分がどんなスタンスで、その世界に入っていくか、ある程度、軸を持っておく事が必要だと思う。
春は、何かを始めたくなる時だが、何を始めるにしても、金銭欲や損得勘定が先に立つと、
私のように、自分が思ってもみなかった事が起こるかもしれない。どんな軸が必要かは、人によって違うと思うけれど、ちょっと立ち止まって考えてみる時間をとってもいいかもしれない。
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